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狐の村の不思議⑤

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 すぐに部屋に戻り、ライカが眠そうな顔をしていたのですぐにベッドに入った。

 ライカが抱きついてきて、抱っこしながら寝たのだが妙に生々しい夢を見た。


 絶世の美女といえるような狐と人間のハーフ数人に群がられて、極上の一時を味わった。

 妙に生々しくて手触りなど残っているが、夢だろう。頭領が言っていた事が頭に残っていて変な夢を見たのだろう。

 
 目を覚ますと、まだ日は昇りきっていないが、服ははだけていた。

 服を着たまま寝ていたはずなのだが。

 …気にしないようにしよう。

 ライカを起こさないようにベッドから立ちあがり、椅子に腰掛ける。

 草薙の剣と元々使っていた剣を布で拭いて整備をする。

 草薙の剣が話しかけてきた。

 『よう。色男。モテモテだったじゃねえか。』

 「うるさい。やはり夢ではなかったのか。」

 『どうだろうな。俺様は何も知らねえ。』

 「そんなこと言っていると、ここにおいていくぞ。」

 『待て、相棒。そんな寂しいこと事、言うなよ。俺様がいなかったら相棒は死んでたんだぜ。』

 たしかにそれは、そうだ。白狐にオレの剣だけだとトドメはさせていない。

 「たしかにそうだな。」

 『相棒の元々使っていた剣ももう寿命だ。刃溢れしているし、俺様が必要だろ。』

 元々使っていた剣に目を向ける。

 確かに刃こぼれがひどいな。固い魔獣を切れば寿命で折れるだろう。

 「そうだな。お前はそんなことまで分かるのか。」

 『お前じゃねえ。オレのことはクサナギって呼んでくれよ。』

 「ああ。クサナギだったか。すまない。クサナギはオレが使って良いのか。」

 『もちろんだ。相棒。俺様は強い持ち主は歓迎だぜ。だが、俺様を使いこなすにはちょっとした条件が必要だがな。』

 「なんだ。言ってみろ。」

 『俺様は定期的に血が欲しくなるんだ。そこらへんの弱い魔獣じゃダメだぜ。それを吸わせてくれ。』

 「それなら大丈夫だ。オレは冒険者だからな。」

 『そうかい。楽しみにしてるぜ。おっと、嬢ちゃんが起きるみたいだ。また話そうぜ。』

 そう言うと、クサナギは話しかけても反応しなくなった。

 ライカがこちらを見ている。

 「ご主人様、独り言ですか。誰かいるかと思いました。」

 「ああ。まあそんなところだ。ライカは体調はどうだ。」

 「体調はバッチリだよ~。」

 「そうか。昨日は狼に戻ってくれて助かったが、驚いたよ。」

 「なんかね、心の奥から声が聞こえたの。それに従ったら狼になれたんだよ。」

 なるほど。これがフェンリルが言っていた特別という意味なのかもしれないな。

 「そうか。でも自由に変化できるなら戦闘では有利だな。旅の途中で話し相手にもなれたら、オレも嬉しいし。」

 ライカが笑う。

 「そうだね。ご主人様、一人だとすぐ額にシワ寄っちゃうから。」

 オレは一人だとシワが寄っているのか。気をつけないとな。

 「どうする。約束した朝食の時間まもう少し時間があるし、散歩でもするか。」

 「するっ! 」

 ライカがはね起きる。一緒に宿を出て北の祠に向かう。

 どうも白狐は処理されているようだ。跡形もない。

 祠の前まで進み、お辞儀して手を合わせる。

 「ご主人様、何をしているの。」

 ライカが不思議そうな顔でこちらを見る。

 「ああ、これは手を合わせて亡くなった人に挨拶をしているんだよ。」

 「そうなんだ。私もする。」

 ライカも真似して手を合わせる。

 村を救ったと言えば聞こえは良いが、狐の先祖を斬ったし、白狐も倒したのだ。

 一応、謝っておいてもバチは当たらないだろう。

 静寂が訪れる。

 「こんなところにいたのか。」

 後から狐の頭領が話しかける。

 彼らからは気配を感じない。不意に声をかけられでびっくりした。

 「ああ。せめて手くらい合わせておこうと思ってな。」

 「ほう。礼儀の良い旅人だな。」

 「まあそんなこともないさ。」

 「謙遜しなくて良い。ほら、飯の時間だ戻るぞ。」

 そう言うと、狐の頭領が戻っていった。

 「よしっライカ戻るか。」

 「うん。ご飯楽しみだよ~。」

 

 宿の一階で朝食をごちそうになる。ライカは口いっぱいに頬張っている。

 「それで、カノンはいつ出ていくんだ。」

 「そうだな。晴れたことだし、今日中には旅立とうと思っていた。何か手伝うことは他にないか。」

 「いや、もう白狐の処理は終わったし大丈夫だ。せっかく泊まるなら今日も極上の体験を味わってもらおうと思ったんだがな。」

 そう言うと、頭領がニヤッと笑った。

 どうやら夢ではなかったみたいだ。狐というのは不思議な生き物だ。

 「ああ。気持ちだけ受け取っておくよ。ここから魔法都市マジクトまで歩いてどれくらいかかる。」

 「そうだな。歩いて二時間と言ったところか。」

 「なるほど。昼には出よう。いつまでも世話になるのは申し訳ないからな。」

 「わかった。ではそれまでの間、温泉にでも使って疲れを癒せば良い。」

 温泉があるのか。テンションが上がる。

 「温泉があるのか。」

 「ああ。北の祠の奥にある。案内がいなくても分かるはずだ。」

 「ありがたい利用させてもらおう。」


 朝食を食べ終えて、ライカと共に温泉へ行く。

 一応、男湯。女湯で別れているようだ。

 体を洗って温泉につかる。露天風呂になっているようだ。

 ふぅ。温泉では体をダラっとできるのが良いな。

 体に染み渡る。疲れで吹き飛ぶ気がする。

 「あれ、ご主人様がいる。」

 ライカが裸で風呂に入ってきた。

 「ライカは女湯に入ったはずだろ。」

 「うん。女湯から入ったよ。」

 ここの露天風呂は混浴なのか。

 ライカの体を見ないように反対側を見る。

 「ご主人様、ここの狐さんたち良い人だね。」

 「ああそうだな。何を考えているかイマイチわからないこともあるが、悪い奴らではないだろう。」

 話をしていると、オレの背中にライカか背中を付ける。

 「ご主人様の背中大きいね。」

 「ああ。まあ鍛えていたからな。それに男だから、ライカとは違うのかもしれないな。」

 だいぶのぼせてきた。先に上がろう。

 「ライカ。先に上る。ゆっくり入っていてくれ。」

 「わかった~ずっと入っていても良い? 」

 「ああ。のぼせないようにな。」

 先に上がると、そこには夢で見た狐の美少女たちが待っていた。

 「カノン様。頭領から体を癒やすようにと申し付けられております。」

 「いや、大丈夫だ。」

 「そう言わずに…私たちが怒られてしまいます…」



 温泉に来たはずが逆に疲れた。

 ライカは一時間以上温泉に浸かっていたみたいだ。

 頭領たちにお礼を言って、村を去る。

 「またいつでも来て下さい。カノン様はこの村の英雄です。我々はいつでも歓迎しております。」

 と言っていたが、オレは苦笑いしてしまった。英雄だなんて恐れ多い。

 気を取り直して、魔法都市マジクトに向かおう。日暮れまでにはたどり着くはずだ。
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