25 / 90
団長エドガーの災難Ⅸ帝都へ逃げ帰る
しおりを挟むニーナの案内で地下三十九階まで来れた。今は最後の四十階ボスのために休憩している。
ここまでカノンとすれ違わなかった。あの雑魚カノンが単独で四十階まで来れるなんて信じがたいがまあいいだろう。
この40階にいる。金貨500枚が目の前だっ!
待っていろ。カノン。
ニーナが澄ました顔で発言する。
「次で最下層です。どうします、もう少し休みますか。」
「いや、行こう。皆、準備はいいか。」
皆が頷く。
待ってろよ。カノン。
四十階のボスは骸骨ロードだ。
手が四本ある。間違いない。このダンジョンで一番強い。
四十階に入ると、ニーナが後に下がっていった。
「何を勝手に下がってるんだ、ニーナ。契約と違うぞ! 」
「私は四十階まで連れていくと言っただけです。もう契約は終わっていますよ。頑張って倒して下さい。帝国騎士なら余裕でしょう。奥の小部屋にカノンさんがいるかもしれませんよ。」
くそっどこまでもムカつく女だ。
俺様の天才的な作戦で倒すしかない。
「シイナも前に出ろ! 腕が四本ある。三人で前衛踏ん張るぞっ! 」
俺様とクロスナー、シイナが前衛に出る。
腕は四本あるから、前衛の誰かが二発攻撃を食らう。
防ぐので手一杯だ。
攻撃に転じられない。
ダメージだけ受けて一撃も攻撃が出来ていない。
イライラと焦りが襲ってくる。
「フラメルボサッとするな! 速くバフかけろ。」
「何度も言わせないで下さい。もうかけてます! 」
チッ使えない。フラメルがこんなに雑魚だとは思わなかった。何が賢者になる男だ。
バフも十分にかけられない。足手まといじゃないか。
「エドガーさん、このままでは負けますよ~頑張ってください。」
心底ムカつく女だ。絶対に土下座させる。
シイナのダメージが大きい、意気が揚がっている。
当然だ。双剣で盗賊なのだ。前衛で持ちこたえるのは厳しい。
「シイナ踏ん張れ! 」
「やってるわよ。速く打開してっ! 」
打開しようにも攻撃に転じられないのだ。
このままではまずい。
俺様が切り開くしかないっ!
盾で剣撃を押し返して、斬りかかる。
しまった。二撃目が俺に飛んできていた。
―――避けられない。
剣撃が壊れかけたの部分にあたり、完全に割れた。
衝撃で吹っ飛ぶ。
剣も落としてしまった。
「エドガー大丈夫? 」
シイナだけは心配してくれるが、このままだと死んでしまう。
「エドガー、撤退しよう。骸骨ロードは荷が重い。それに、カノンが奥の小部屋にいるとしたら、骸骨ロードは復活していないはずだ。つまりカノンはここにはいない。」
たしかにそうだ。
ボスは倒してから復活するまで数時間かかる。
なぜ気がつかなかったのだ。
「よしっ撤退しよう。クロスナーオレの剣を拾ってくれ。」
「無理だ。防御だけで手一杯なんだ。剣は置いていこう。」
俺様の指示を聞かずに、シイナ、クロスナー、フラメルが走って扉に向かう。
くそっ言うことを聞かない奴らめ。
しょうがない。剣は諦めるか。
俺たちは戦略的撤退した。
ギルドに戻ると、ニーナが言う。
「今日はお疲れ様でした。ポーション代と最下層への案内料で金貨50枚になります。」
「ふざけんな。俺は払わねえぞ。」
「いいんですか。払わなくて。」
「俺様は帝国の騎士だぞ。嘘はつかない、俺様はそんな約束したか。なあお前たち。」
ぼろぼろになったシイナ、クロスナー、フラメルが頷く。
「分かりました。それではお帰り下さい。またのご依頼をお待ちしております。」
「こんな街言われなくてもすぐに出ていってやるよ。」
馬車を借りてサンタルークに戻る。カノンにも会えないし散々な目にあった。
サンタルークの街では教会が宿と接待をしてくれた。
そうだ。俺たちは接待される立場なんだ。なんぜ俺たちがカノンなんかを探さなければいけないんだ。
翌日、帝国から連絡が来た。
「王様激怒。今すぐ帰られたし。」
流石にまずいか。カノンは二の次だ。帝都に戻ろう。
馬車で一日かけて帝都に帰る。
すぐに謁見の間に呼ばれた。
「王様、帝国騎士団長エドガー、今戻りました。」
「面をあげよ。」
面を上げると、王様も父、ルノガ―将軍も怒っているようだ。
「お前たち、何をしたのかわかっているのか。」
帰りの馬車で四人で話を合わせていた。
「いえ。何のことでしょうか。カノンを追っておりました。」
「予が知らぬとでも思うか。この愚か者。」
「何のことでしょうか。」
「ギルドから帝国宛に金貨50枚の請求。知らぬとは言わせぬぞ。」
くそっニーナのやつ。
「それに、お前たちは浮かれて任務を遂行せずに遊んでいたらしいではないか。どういうことは説明してもらおう。」
「それは…その。」
「ほう。言い訳なら聞かぬぞ。金貨50枚おぬしらが払うんだろうな。」
遊んで金貨は殆ど残っていない。くそっどうしてこうなった。
「いえ…後日支払わせて下さい。」
「それに帝国騎士の誇りの剣はどうした。」
「それは…」
クソッだから。クロスナーに回収しろと言ったんだ。
「そうか。エドガー、とんだ期待外れだ。のうルノガーよ。」
「返す言葉もありません。」
「カノンがいればこんな事になっていなかったものを。勝手に追放した責任は重いぞエドガー。」
なんでカノンの評価が高いんだ。俺様が団長だぞ。
「お言葉ですが、王様。騎士団の団長は俺です。カノンがいなくてもやっていけます。」
「もうよい。黙っていろ。お前たちに一週間の謹慎を命じる。しっかりと反省するが良い。次、任務をミスしたら貴族は剥奪だ。言っている意味はわかるな。」
王様に逆らうことは出来ない。了承して、謁見の間を出た。
「なんだってんだ。団長。」
クロスナーが代表して、俺に言う。
「父上に掛け合ってみる。こんなの納得できない。金貨50枚なんてもう持っていない。」
俺様だって不安だ。こんなことになるとは思ってもいなかった。
暗雲が立ち込めてきた。今日は実家に帰らないほうがいい。シイナの家で慰めてもらおう。
0
お気に入りに追加
983
あなたにおすすめの小説
残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)
SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。
しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。
相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。
そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。
無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!
異世界でのんきに冒険始めました!
おむす微
ファンタジー
色々とこじらせた、平凡な三十路を過ぎたオッサンの主人公が(専門知識とか無いです)異世界のお転婆?女神様に拉致されてしまい……勘違いしたあげく何とか頼み込んで異世界に…?。
基本お気楽で、欲望全快?でお届けする。異世界でお気楽ライフ始めるコメディー風のお話しを書いてみます(あくまで、"風"なので期待しないで気軽に読んでネ!)一応15R にしときます。誤字多々ありますが初めてで、学も無いためご勘弁下さい。
ただその場の勢いで妄想を書き込めるだけ詰め込みますので完全にご都合主義でつじつまがとか気にしたら敗けです。チートはあるけど、主人公は一般人になりすましている(つもり)なので、人前で殆んど無双とかしません!思慮が足りないと言うか色々と垂れ流して、バレバレですが気にしません。徐々にハーレムを増やしつつお気楽な冒険を楽しんで行くゆる~い話です。それでも宜しければ暇潰しにどうぞ。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識で災いを先読みしていたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~
鈴木竜一
ファンタジー
「前世の知識で楽しく暮らそう! ……えっ? 俺が予言者? 千里眼?」
未来を見通す千里眼を持つエルカ・マクフェイルはその能力を生かして国の発展のため、長きにわたり尽力してきた。その成果は人々に認められ、エルカは「奇跡の予言者」として絶大な支持を得ることになる。だが、ある日突然、エルカは聖女カタリナから神託により追放すると告げられてしまう。それは王家をこえるほどの支持を得始めたエルカの存在を危険視する王国側の陰謀であった。
国から追いだされたエルカだったが、その心は浮かれていた。実は彼の持つ予言の力の正体は前世の記憶であった。この世界の元ネタになっているゲームの開発メンバーだった頃の記憶がよみがえったことで、これから起こる出来事=イベントが分かり、それによって生じる被害を最小限に抑える方法を伝えていたのである。
追放先である魔境には強大なモンスターも生息しているが、同時にとんでもないお宝アイテムが眠っている場所でもあった。それを知るエルカはアイテムを回収しつつ、知性のあるモンスターたちと友好関係を築いてのんびりとした生活を送ろうと思っていたのだが、なんと彼の追放を受け入れられない王国の有力者たちが続々と魔境へとやってきて――果たして、エルカは自身が望むようなのんびりスローライフを送れるのか!?
裏アカ男子
やまいし
ファンタジー
ここは男女の貞操観念が逆転、そして人類すべてが美形になった世界。
転生した主人公にとってこの世界の女性は誰でも美少女、そして女性は元の世界の男性のように性欲が強いと気付く。
そこで彼は都合の良い(体の)関係を求めて裏アカを使用することにした。
―—これはそんな彼祐樹が好き勝手に生きる物語。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる