19 / 90
ノース鉱山防衛戦Ⅳ 反転攻勢
しおりを挟む
念のためダンジョンの扉を破って魔獣が出てこないように、数分待機して様子を見よう。
キングサイズの骸骨ロードが入り口にたどり着くまでは、街の皆でなんとか持ちこたえられるだろう。
ライカの速度であれば十分に間に合うはずだ。
その間に、ダンジョンの入り口周りを調査する。
以前、フェンリルの時にも見たツボが置いてある。
このツボの芳香が魔獣を惑わしてスタンビートを引き起こしたのだろう。
もちろん、サンドラがダンジョンの扉を閉め忘れたことが魔獣が外に出てきた原因ではあるが。
ツボを観察すると、このツボには底に教会の刻印はないみたいだ。
フェンリルの時は教会の刻印があったし、さしずめ、教会から依頼を受けたサンドラがスタンビートを故意的に引き起こしたというところか。冒険者ギルドの制帽ではなくて、教会の帽子を被っていたし間違いないだろう。
それは、魔獣を全て片付けてから問い詰めれば分かる話だ。
ツボを剣で壊す。
扉の様子を見ていると、どうやら魔獣は扉を破ってまでは出てこないらしい。
これで新しく魔獣が増えることはないはずだ。
良かった。
さっそく街に戻ろう。
ライカに飛び乗り、来た道を駆け抜ける。
鉱山の入り口までは全ての魔獣は焼き殺している。サクっと走り抜けるだけだ。
鉱山の入り口から街を見ると魔獣の数は数百は残っている。
まだかなり魔獣の数が多いな。
数で押し切られても面倒だ。
さっさと終わらせよう。
ライカから降りて魔法の詠唱を開始する。
禁術魔法を放つためには詠唱が必要だ。
数秒にわたって詠唱を続ける。
「全てを焼き払え! 『流星の輝き<メテオインパクト>』」
空から幾千もの火炎が魔獣に降り注ぐ。
その姿は流星の輝きの如し。
流星は道中の魔獣を焼き払った。
魔獣たちのうめき声がこだまする。
後は門前にいる魔獣だけだ。
一気に形勢逆転しただろう。
残っている魔獣で脅威になるのはキングサイズの骸骨ロードだけだ。
流石に魔力を使いすぎた。
その場でよろめく。魔力切れだ。さすがに禁術を言われる魔法を放つには負担が大きい。
オレが倒れないように、ライカが支えてくれる。
「ライカ。頼む。オレを街まで運んでくれ。それまで少し休む。」
ライカがワオンと言い、オレはライカに覆いかぶさる様に乗った。
ライカがどんどん街に向かって進んでくれる。
ライカに乗ると元気をもらえる気がする。魔力を分けてくれているからなのだろうか。
目を閉じて、休むのに集中する。
少しずつ体力が回復するのを感じた。
◇
数分もしないうちに北門の目の前までライカが運んでくれた。
手を開いて閉めてを繰り返して体力の残り具合を確認する。どうやら体力も魔力も戻ってきているみたいだ。
これでまた戦える。
目を開けて状況を確認すると、北門前では魔獣の数がほとんど残っていない。
皆が踏ん張ってくれていた。
残りの魔獣は冒険者と鉱山の男たちでなんとか倒しきれるだろう。
問題は、キングサイズの骸骨ロードだ。
キングサイズと呼ばれる魔獣は、通常の魔獣より数倍強いと言われている。通常の魔獣を倒せても、キングサイズには勝てないということも多くあるらしい。そういったことから、キングサイズの魔獣は災害級と言われている。
ニーナさんがキングサイズの骸骨ロードと対峙している。
ニーナさんを見ると傷だらけで、膝を地面につけて肩で息をしている。
双剣もボロボロで、一本は折れているのか。
まさに満身創痍だ。
他の冒険者達もニーナさんの助けに入ろうとしてはいるが、実力的にも厳しいだろう。戦闘に参加しないのは賢明な判断だ。
まだ骸骨ロードはオレには気がついていない。
強襲するチャンスだ。
「ライカは骸骨ロードの左足を先に攻撃してくれ。オレはそのスキに右腕を一本叩き折る。」
ライカに小声で話しかける。強襲するチャンスを会話で気づかれたくはない。
ライカが小さく頷いた。
ライカから飛び降りて、駆ける。
骸骨ロードがニーナさんにとどめを刺そうと四本の腕で四本の剣を振り上げる。
―――その刹那
ライカが骸骨ロードの左足に噛み付く。
噛みついた衝撃で骸骨ロードがよろめく。
よしっ。
これでニーナさんへの有効な攻撃はできないはずだ。
オレはよろめいて、無防備に上がっている骸骨ロードの右腕を剣で切断した。
そのまま、ニーナさんの前へ踊り出る。
「ニーナさん下がって下さい。この骸骨ロードは僕が引き受けます。」
「カノンさん! 」
驚いたニーナさんの声が後ろから聞こえる。死を覚悟して目をつぶっていたのだろう。
骸骨ロードは残りの三本の腕で剣を扱い、オレに攻撃してくる。
盾と剣でなんとか受ける。
重い。
ダンジョンで倒した骸骨ロードとは大違いだ。
このままだと押し切られる。
一撃一撃受けるだけで後に押される。
早急に腕の数を減らさないとまずい。手数が多すぎる。
「ライカもう一度! 」
ライカに指示を出して、骸骨ロードのスキを作るしかない。
ライカが骸骨ロードの後ろから飛び、首の後に噛みつく。
骸骨ロードは嫌がる素振りを見せる。
ライカを振り払おうと左腕の剣二本を後ろ側に振る。
今だっ!
オレは、一気に距離を詰めて、無防備になった右腕一本を剣で斬る。
「オラッッッ! 」
骸骨ロードの右腕が空高く舞う。
これで骸骨ロードの腕は、左腕二本だけだ。
反撃を喰らわない様に、骸骨ロードから距離を取る。
骸骨ロードのけだもののような咆哮が響き渡る。
一瞬にして汗が吹き出る。
これが、キングサイズの強さか。
周りの男達はもう魔獣をほとんど片付けたようだが、咆哮を聞いて腰を抜かした人もいるみたいだ。巻き込んでしまってはまずい。
オレは目を骸骨ロードから逸らさずに叫ぶ。
「オレが骸骨ロードを倒します。絶対に近づかないで! 巻き込まれます! 」
だが、骸骨ロードを追い詰めたのも事実。
このままライカとコンビネーションで叩き潰してやる。
キングサイズの骸骨ロードが入り口にたどり着くまでは、街の皆でなんとか持ちこたえられるだろう。
ライカの速度であれば十分に間に合うはずだ。
その間に、ダンジョンの入り口周りを調査する。
以前、フェンリルの時にも見たツボが置いてある。
このツボの芳香が魔獣を惑わしてスタンビートを引き起こしたのだろう。
もちろん、サンドラがダンジョンの扉を閉め忘れたことが魔獣が外に出てきた原因ではあるが。
ツボを観察すると、このツボには底に教会の刻印はないみたいだ。
フェンリルの時は教会の刻印があったし、さしずめ、教会から依頼を受けたサンドラがスタンビートを故意的に引き起こしたというところか。冒険者ギルドの制帽ではなくて、教会の帽子を被っていたし間違いないだろう。
それは、魔獣を全て片付けてから問い詰めれば分かる話だ。
ツボを剣で壊す。
扉の様子を見ていると、どうやら魔獣は扉を破ってまでは出てこないらしい。
これで新しく魔獣が増えることはないはずだ。
良かった。
さっそく街に戻ろう。
ライカに飛び乗り、来た道を駆け抜ける。
鉱山の入り口までは全ての魔獣は焼き殺している。サクっと走り抜けるだけだ。
鉱山の入り口から街を見ると魔獣の数は数百は残っている。
まだかなり魔獣の数が多いな。
数で押し切られても面倒だ。
さっさと終わらせよう。
ライカから降りて魔法の詠唱を開始する。
禁術魔法を放つためには詠唱が必要だ。
数秒にわたって詠唱を続ける。
「全てを焼き払え! 『流星の輝き<メテオインパクト>』」
空から幾千もの火炎が魔獣に降り注ぐ。
その姿は流星の輝きの如し。
流星は道中の魔獣を焼き払った。
魔獣たちのうめき声がこだまする。
後は門前にいる魔獣だけだ。
一気に形勢逆転しただろう。
残っている魔獣で脅威になるのはキングサイズの骸骨ロードだけだ。
流石に魔力を使いすぎた。
その場でよろめく。魔力切れだ。さすがに禁術を言われる魔法を放つには負担が大きい。
オレが倒れないように、ライカが支えてくれる。
「ライカ。頼む。オレを街まで運んでくれ。それまで少し休む。」
ライカがワオンと言い、オレはライカに覆いかぶさる様に乗った。
ライカがどんどん街に向かって進んでくれる。
ライカに乗ると元気をもらえる気がする。魔力を分けてくれているからなのだろうか。
目を閉じて、休むのに集中する。
少しずつ体力が回復するのを感じた。
◇
数分もしないうちに北門の目の前までライカが運んでくれた。
手を開いて閉めてを繰り返して体力の残り具合を確認する。どうやら体力も魔力も戻ってきているみたいだ。
これでまた戦える。
目を開けて状況を確認すると、北門前では魔獣の数がほとんど残っていない。
皆が踏ん張ってくれていた。
残りの魔獣は冒険者と鉱山の男たちでなんとか倒しきれるだろう。
問題は、キングサイズの骸骨ロードだ。
キングサイズと呼ばれる魔獣は、通常の魔獣より数倍強いと言われている。通常の魔獣を倒せても、キングサイズには勝てないということも多くあるらしい。そういったことから、キングサイズの魔獣は災害級と言われている。
ニーナさんがキングサイズの骸骨ロードと対峙している。
ニーナさんを見ると傷だらけで、膝を地面につけて肩で息をしている。
双剣もボロボロで、一本は折れているのか。
まさに満身創痍だ。
他の冒険者達もニーナさんの助けに入ろうとしてはいるが、実力的にも厳しいだろう。戦闘に参加しないのは賢明な判断だ。
まだ骸骨ロードはオレには気がついていない。
強襲するチャンスだ。
「ライカは骸骨ロードの左足を先に攻撃してくれ。オレはそのスキに右腕を一本叩き折る。」
ライカに小声で話しかける。強襲するチャンスを会話で気づかれたくはない。
ライカが小さく頷いた。
ライカから飛び降りて、駆ける。
骸骨ロードがニーナさんにとどめを刺そうと四本の腕で四本の剣を振り上げる。
―――その刹那
ライカが骸骨ロードの左足に噛み付く。
噛みついた衝撃で骸骨ロードがよろめく。
よしっ。
これでニーナさんへの有効な攻撃はできないはずだ。
オレはよろめいて、無防備に上がっている骸骨ロードの右腕を剣で切断した。
そのまま、ニーナさんの前へ踊り出る。
「ニーナさん下がって下さい。この骸骨ロードは僕が引き受けます。」
「カノンさん! 」
驚いたニーナさんの声が後ろから聞こえる。死を覚悟して目をつぶっていたのだろう。
骸骨ロードは残りの三本の腕で剣を扱い、オレに攻撃してくる。
盾と剣でなんとか受ける。
重い。
ダンジョンで倒した骸骨ロードとは大違いだ。
このままだと押し切られる。
一撃一撃受けるだけで後に押される。
早急に腕の数を減らさないとまずい。手数が多すぎる。
「ライカもう一度! 」
ライカに指示を出して、骸骨ロードのスキを作るしかない。
ライカが骸骨ロードの後ろから飛び、首の後に噛みつく。
骸骨ロードは嫌がる素振りを見せる。
ライカを振り払おうと左腕の剣二本を後ろ側に振る。
今だっ!
オレは、一気に距離を詰めて、無防備になった右腕一本を剣で斬る。
「オラッッッ! 」
骸骨ロードの右腕が空高く舞う。
これで骸骨ロードの腕は、左腕二本だけだ。
反撃を喰らわない様に、骸骨ロードから距離を取る。
骸骨ロードのけだもののような咆哮が響き渡る。
一瞬にして汗が吹き出る。
これが、キングサイズの強さか。
周りの男達はもう魔獣をほとんど片付けたようだが、咆哮を聞いて腰を抜かした人もいるみたいだ。巻き込んでしまってはまずい。
オレは目を骸骨ロードから逸らさずに叫ぶ。
「オレが骸骨ロードを倒します。絶対に近づかないで! 巻き込まれます! 」
だが、骸骨ロードを追い詰めたのも事実。
このままライカとコンビネーションで叩き潰してやる。
0
お気に入りに追加
983
あなたにおすすめの小説

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる
まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。
そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

10秒先が見えるだけの普通で不遇な付与術士だった僕は、死の宣告が出来るギルド職員になりました
まったりー
ファンタジー
普通の付与魔法士だった主人公は勇者PTで強くなり、ある日スキルが進化して未来が見える様になりました。
スキルを使い勇者PTを強くしていきましたが、未来を見た時自分が追放されることを知り、その未来を避ける為に未来予知のスキルを使いましたが、どんなに繰り返してもその未来は変わる事はありませんでした。
そして、勇者PTにいる情熱が無くなり、他の道を歩むことに決めた主人公は冒険者ギルドの職員になり、死なない様助言をするようになりました。

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました
遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。
追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。
やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる