13 / 90
カノン冒険者ギルドに登録する
しおりを挟むカノンとライカは商人の街サンタルークに着いた。
着いてから数日は、宿でゴロゴロして犬型に戻ったライカと遊んで過ごしていたが、それも飽きてきた。
暇だ。
フェンリルからもらった金貨500枚はある。働く必要はない。
もう戦場には行きたくはないが、美味しいご飯を食べて、女と遊んでも、生死をかけたゾクゾクした感じは味わえない。退屈していた。
今日は何をしようか。目的なく街をライカと歩く。
情報収集も兼ねて商人に話しかけるが、警戒される。
どうも、帝国の治安が悪くなっていて、旅人を装った盗賊が増えていているらしい。
だから旅人だと言うと怪しまれたのか。
話を聞くと、街の北にノース鉱山という名所があるみたいだ。ミスリルや金などが発掘できる鉱山で、良い素材が安く買えるらしい。
どうしよう。暇だしノース鉱山にでも向かおうか。
でも、途中で盗賊と勘違いされて厄介事には巻き込まれたくないな。
ふと見上げると、冒険者ギルドがあった。
そうだ。冒険者だ! 冒険者になろう。
冒険者は冒険者ギルドに身分を保証される。これで旅をしても怪しまれることもないだろう。
冒険者ギルドに入ると、中は人でごった返していた。
受付に進み。冒険者の登録を申し込む。
受付の女性が、オレの顔を見てあっと言った。壁に貼られていた捜索願の紙とオレの顔を見比べている。
しまったな。帝国から捜索願を出されていたか。
他人の空似。人違いですよ。と言って、ギルドを出た。
危なかった。迂闊な行動だった。
ギルドを出て、走って移動する。
帝国騎士団くらいだったら、撃退することはできるが、面倒事に巻き込まれたくはない。
そうだ。ノース鉱山のギルドで登録しよう。
田舎なら顔を隠せばバレないだろうから。
◇
ノース鉱山に向かう。それからすぐにサンタルークの街を出た。距離的に、翌朝には着くみたいだ。
念のため、顔がバレない様に目だけを隠す仮面を買った。
顔の傷が気になるとか言えば、大丈夫だろう。
道中、魔獣も見かけたがライカが先に走って狩ってくれる。
人間と比べられないくらい耳が良いのだろう。
索敵能力が高い。
半分は進んだだろうか。後数時間で着くと看板に書かれている。
夜中に行くのも訳ありだと思われる。
今日はここでライカと野宿しよう。
ライカがいれば、警戒せず寝れる。火を焚かなくても抱くと温かいしモフモフが気持ちいい。安眠できる。
誰にも気づかれず、襲われないで熟睡できるのは旅する上ですごいメリットだ。
ライカを抱きしめ、仮面を外し、眠りにつく。
明日には冒険者だ。
◇
街に入る前に仮面を付ける。
ノース鉱山のギルドには人はまばらだ。田舎のギルドなんてこんなものなのだろうか。いや、街中に鉱夫はたくさんいた。この街では冒険者の数が少ないのだけだろう。
バレないと良いが。
「すみません。冒険者登録したいのですが。」
「はい。少々お待ちくださいね。」
受付の女性の胸元を見ると、名前がニーナと書かれて副マスターと書かれている。
バレないでくれ。
「こちらの紙を書いてくださいね。名前と職業を書いて、水晶で能力値を測れば終わりです。」
名前をライカと書く。バカ正直にカノンと書く必要はない。
職業を書くところで、筆が止まる。
オレの職業はなんなのだろう。
帝国騎士か。書けるわけがない。騎士と書いてもいいが、騎士は上位職だ。
目立ってしまう。
「ライカさんはテーマ―じゃないんですか。ウルフに首輪付けて連れていますし。」とニーナが言った。
「ええ。そうでした。テーマ―ってあまり有能職でないので、なんて書こうって悩んでました。」
「嘘を書いちゃだめですよ。ライカさん。」
ニーナさんが優しく笑う。
そうですね。と言い、職業欄にテイマーと書く。
最後は水晶だ。自分の力をかなり抑えて水晶に手をかざす。
これで誤魔化せてくれ。
水晶を見るとランクは全てEクラスと表示されていた。
「ライカさん。能力はEクラスです。魔獣は強いので無理はしないでくださいね。冒険者だけが仕事のすべてじゃないので。」
ニーナさんは優しい。
「ありがとうございます。無理せず、頑張ります。」
そう言うと、後ろから声をかけれた。
「おい、ニーナそんな能力の低いやつ、断っちまえよ。」
振り返るとギルドマスターの名札を付けた男がいた。サンドラと書かれている。
「そんなひどい事言わないで下さい。サンドラさん。ノース鉱山のギルドは入会を断る決まりないじゃないですか。」
ニーナさんが庇ってくれている。良い人だ。
「そんなんだから、ノース鉱山のギルドは舐められるんだよ。俺も早くサンタルークに戻りたいぜ。」
そう言うと、男は舌打ちして去っていった。
「ごめんなさいね。ライカさん。ギルマスが失礼なこと言って。」
「いえ。オレの能力が低いから悪いので、頑張ります。ギルドとダンジョンの説明してくれませんか。」
「はい。勿論です。」そう言うとニーナさんは説明してくれた。
鉱山の中にダンジョンがあり、階層は地下40階まで。敵は一番強いボスでもCランク程度であるが、今のライカさんだと厳しいから、十階より下には行かないほうが良いと言われた。
夜になると、敵の動きが活発になりダンジョンを出てくるから、18時には門が閉められて、ダンジョンの出入りができなくなるらしい。
「ご丁寧に説明していただきありがとうございます。」
決まりだ。明日からダンジョンに籠もろう。
お礼を言って、ギルドを出る。
ギルマスのサンドラは嫌なやつだ。皆ギルドの職員は制服を着ているのがルールなのに、ギルド職員の帽子でなく教会の神父が被る黒い帽子をかぶっているのは気になる。
こんな田舎まで教会も悪さはしないだろう。考えすぎか。
今日は宿に泊まって、明日からダンジョン攻略だ。どんな魔獣が出てくるのだろう。
カノンは久しぶりにワクワクしてなかなか寝付くことはできなかった。
0
お気に入りに追加
983
あなたにおすすめの小説
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?
箱庭から始まる俺の地獄(ヘル) ~今日から地獄生物の飼育員ってマジっすか!?~
白那 又太
ファンタジー
とあるアパートの一室に住む安楽 喜一郎は仕事に忙殺されるあまり、癒しを求めてペットを購入した。ところがそのペットの様子がどうもおかしい。
日々成長していくペットに少し違和感を感じながらも(比較的)平和な毎日を過ごしていた喜一郎。
ところがある日その平和は地獄からの使者、魔王デボラ様によって粉々に打ち砕かれるのであった。
目指すは地獄の楽園ってなんじゃそりゃ!
大したスキルも無い! チートも無い! あるのは理不尽と不条理だけ!
箱庭から始まる俺の地獄(ヘル)どうぞお楽しみください。
【本作は小説家になろう様、カクヨム様でも同時更新中です】
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
神様との賭けに勝ったので異世界で無双したいと思います。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。
突然足元に魔法陣が現れる。
そして、気付けば神様が異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
もっとスキルが欲しいと欲をかいた悠斗は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―――
※チートな主人公が異世界無双する話です。小説家になろう、ノベルバの方にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる