上 下
10 / 90

団長エドガーの災難Ⅳ暗雲が漂う

しおりを挟む
 俺達は街道に出てから、昨日まで滞在していた村に一時間かけて戻ってきた。

 約束通り、今日は俺の奢りだ。団長である俺様の器の大きさを見せつけてやらないとな。

 大盤振る舞いだ。酒池肉林のごとく朝まで楽しんだ。

 都合よくシイナが先に寝る。と言い先にホテルへ帰っていったから、俺様は朝まで女を数人侍らせて楽しんだ。

 翌日、目が覚めると頭が痛い。完全に二日酔いだ。

 時計を見ると昼をもう過ぎている。

 どうやら寝すぎてしまったようだな。

 気がつかぬうちにシイナはどこかでかけているみたいだ。寝たときには横にいたのだが。

 まあいい。

 まずは部屋に全員を呼ぶか。作戦会議だ。



 三人を部屋に集めて作戦会議を開く。議論すべきポイントはあの森に行くか。行かないかだ。

 フラメルが手を上げて発言する。

 「あそこにカインの足跡があったから行くべきです。夜じゃなければフォレストウルフごときに遅れを取ることはないでしょう。見張りの必要も日が出ていれば必要ないですから。」

 フラメルの野郎、インテリぶりやがって、態度は鼻につく。それに、最後の発言は余計だ。

 ただ、フラメルの言うとおりだ。俺達が遅れを取るわけがない。

 俺達は最強の帝国騎士団なんだ。負けるはずがない。

 ここは団長らしくかっこよく俺様が最後を締めるか。

 「フラメルの言うとおりだ。俺達は天下の騎士団だからな。敗北の二文字はない。それにあの森の中に間違いなくカノンはいる。足跡を見て確信した。襲ってきたらサクッとフォレストウルフをやっつけてカノンを捕縛しよう。」

 他の三人は俺の意見に頷く。

 クックック。どうだカノン。これがリーダー様だ。戻ってきたら奴隷のようにボロ雑巾にしてやるぜ。お前をいじめられると思うと楽しみでよだれが出そうになる。

 「団長、俺は行くことには賛成だ。だがどうしても気になる。あいつらフォレストウルフにしては強かったぜ。大丈夫かよ。」

 クロスナーが発言した。

 たしかに気がかりではある。帝国内にフォレストウルフ以外のウルフは分布していないはずだ。父上から教えてもらったから知っている。あんなにフォレストウルフの動きが速いわけはないが…気にしなくてもいいだろう。

 フォレストウルフなんて所詮は魔獣ランクはEクラスだ。

 俺達に負ける道理はない。

 「大丈夫だ。俺達は暗くて視界が悪かったから遅れを取っただけだ。陣形をしっかりとすれば大丈夫だ。なんだ、クロスナーお前もしかしてもうビビったのか。」

 ビビってねえよとクロスナーが叫ぶ。

 クロスナーは扱いやすくていいぜ。

 「よしっ。全員一致だな。ちんたらしていたら日が暮れちまう。帝国に報告だけしてさっそく向かおう。」



 何日も同じ村から帝都への報告を送っていれば、遊んでいると捉えられかねない。

 父上には盗賊が村を襲い撃退していたため時間が経った。村人を見捨てられなかったと報告には書いておく。

 これで俺様の評価も上がるだろう。完璧だ。

 ギルドに報告書を渡しに行くと、受付の女が俺に連絡が届いていると言った。

 急いで紙を開けて、内容を確認する。

 『エドガー急げ。王様は遅いと激怒している。遊ぶ暇があったらすぐにカノンを連れてこい。出来ぬなら貴族の資格を剥奪すると言っている。』

 内容を見た俺は青ざめた。

 非常にまずい。貴族の資格を剥奪するなんて、そんなの脅迫じゃないか。俺達だって少しは息抜きをしたが、一生懸命カノンを探してるんだ。

 ここまで言われる筋合いはない。

 怒りがふつふつと湧いてきた。

 怒りに身を任せて、紙をクシャクシャに握りつぶす。

 ふざけんじゃねえぞあのじじい。

 貴族の資格が剥奪されることをクロスナー達に言ったら、カノンを探すどころじゃなくなるな。俺様のせいにされても困る。

 これは俺様がもみ消そう。幸い見た人間は俺様しかいないのだから。バレることはないさ。





 ギルドを出ると、そこには俺様がもどってくるのを三人は待っていた。

 クロスナーが遅かったじゃねえか団長と言う。

 「ああ。すまない。受付の女が遅くて、手間取ってな。」

 絶対に先程の件はこいつらには言えない。

 「団長。そろそろ定期連絡が帝都から届いてもいいころだろ、まだカノンの情報は来ねえか。」

 こういう時はクロスナーは鋭い。これが野生の勘ってやつか。育ちが悪い証拠だ。

 「いや。来ていなかった。定期連絡が来ていないと言うことは、間違いないだろう。あの森の中に潜んでいる。決まりだな。さっそく向かうぞ。」

 三人は頷く。

 俺様がリーダーシップを発揮して、なんとしてでもカノンを捕まえてやる。金貨500枚にチヤホヤされる生活がすぐそこだ。

 ああこれからが楽しみで笑いが止まらい。

 「よしっ。日が暮れる前に行くぞ。」

 俺様が高らかに宣言する。夜じゃなければウルフごときに遅れを取るなんてありえない。

 襲ってきたらウルフを倒す。そして俺様の手でカノンを捕まえてやるぜ!

 四人は再びカノンを降ろした場所に向かった。この時、既に歯車はずれているとは一行は微塵にも思っていなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

俺もクズだが悪いのはお前らだ!

レオナール D
ファンタジー
辺境伯家の跡継ぎであるディンギル・マクスウェル。 隣国との戦争ではいくつも手柄を上げ、内政にも明るく、寄子の貴族からの人望もある。 そんな順風満帆な人生を送る彼に、一つの転機が訪れた。 「ディンギル・マクスウェル! 貴様とセレナとの婚約を破棄させてもらう!」 円満だと思っていた婚約者が、実は王太子と浮気をしていた。 おまけにその馬鹿王子はマクスウェル家のことをさんざん侮辱してきて・・・ よし、いいだろう。受けて立ってやる。 自分が誰にケンカを売ったか教えてやる! 「俺もクズだが、悪いのはお前らだ!!」  婚約破棄から始まった大騒動。それは、やがて王国の根幹を揺るがす大事件へと発展していき、隣国までも巻き込んでいく!  クズがクズを打ち倒す、婚約破棄から始まる英雄譚!

追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン
ファンタジー
魔王倒すべく結成された勇者パーティーを、ワガママという理由から追放された幼女。冒険者ギルドのパーティーが国から公式に認定されるSランクになった途端に追い出された青年。 二人が出会う時、パーティーを見返す為に魔王を倒しに──出かけない。 「魔王? それより、お菓子はまだか!」 「今用意してますからお皿を並べておいてください」 二人は異世界スローライフを目指す! 毎日0時、投稿予定。 「ついロリ」をよろしくお願いします。 完結しました。第二部、4/15スタート予定

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界でのんきに冒険始めました!

おむす微
ファンタジー
色々とこじらせた、平凡な三十路を過ぎたオッサンの主人公が(専門知識とか無いです)異世界のお転婆?女神様に拉致されてしまい……勘違いしたあげく何とか頼み込んで異世界に…?。  基本お気楽で、欲望全快?でお届けする。異世界でお気楽ライフ始めるコメディー風のお話しを書いてみます(あくまで、"風"なので期待しないで気軽に読んでネ!)一応15R にしときます。誤字多々ありますが初めてで、学も無いためご勘弁下さい。  ただその場の勢いで妄想を書き込めるだけ詰め込みますので完全にご都合主義でつじつまがとか気にしたら敗けです。チートはあるけど、主人公は一般人になりすましている(つもり)なので、人前で殆んど無双とかしません!思慮が足りないと言うか色々と垂れ流して、バレバレですが気にしません。徐々にハーレムを増やしつつお気楽な冒険を楽しんで行くゆる~い話です。それでも宜しければ暇潰しにどうぞ。

処理中です...