帝国騎士団を追放されたのでもふもふ犬と冒険とスローライフを満喫する。~反逆の猟犬~

神谷ミコト

文字の大きさ
上 下
8 / 90

団長エドガーの災難Ⅱ春の夜の夢

しおりを挟む
 翌日、小さな街にカノンとライカは到着した。ライタから教えてもらった一番近い街だろう。

 カノンは商会に行く。

 目的はルノガ―将軍に手紙を送るためだ。

 内容はシンプルで誰が見ても不審に思わない内容にしないと密告の意味がない。戦時中も暗号文で状況を逐一報告していたから、暗号を作るのはお手の物だ。

 密告をしなくても良いのだが、帝国が教会に乗っ取られるのが良いことだとは思わない。戦争が始まったのもチャーチル教会が帝国に圧力をかけたからだ。教会がトップになった暁には、もれなく戦争が始まるだろう。元騎士だからと巻き込まれるのはゴメンだ。

 「オレは疲れました。帝都を去らせていただきます。門出を女神も祝福している気がしています。お世話頂いたこと感謝しています。カノン」

 教会の人間が検閲したとしても内容としては違和感がないはずだ。

 暗号の前半は何も意味はない。大事なのは後半だ。

 女神は教会を指していて、祝福は嫌なことを指すとルノガ―将軍と以前に取り決めをしていた。

 ルノガ―将軍であれば、教会で何か不穏な動きがあると感づいてくれるはずだ。





 騎士団長エドガーは数日後、謁見の間に呼び出された。

 ついに勲章と報酬が貰えるとソワソワしていた。

 あれから父上の機嫌はすこぶる悪く、実家には一度も戻らずシイナの家に転がり込んでいた。シイナは胸は慎ましいが、なかなかにいい女だ。これからもかわいがってやろう。

 謁見の間の前で、No.7シイナ、No.8クロスナー、No.9フラメルが先に集まっていた。

 「ついにこの日が来たな。カノンの件、教会から既に金はもらった。後ほど、分配しよう。」

 皆ニヤニヤしている。勲章と報酬が楽しみだ。

 


 謁見の間前の兵士に話しかける。

 騎士団長のエドガーだ。王様に呼ばれてきた。

 兵士が扉を開ける。

 王が言った。

 「よく来たな。頭を上げろ。」

 できれば下を向いていたい。なぜならニヤケ顔が止まらないからだ。

 「この度は戦争での活躍。ご苦労じゃった。予は嬉しく思う。さっそくだが、勲章授与と報酬を授ける」

 ついに来たぜ。早くしろよおっさん。さすがに王様におっさんはまずいか。言葉に出してなくてよかった。

 「N0.1エドガー団長には功二級金騎士勲章。No,6カノン。No.7シイナ、No,8クロスナー、No,8フラメル功三級金騎士勲章を授ける。また、エドガーには金貨500枚を。他の騎士には金貨400枚を報酬として与えよう。」

 やった。ついにオレも貴族の仲間入りだ。これで将軍への道も開ける。貴族の息子だから団長なんてもう言わせない。後は父上が将軍を引退すれば、騎士団の将軍だ。金だってたんまりもらえる。これで女を侍らせるぞ。

 皆も喜んでいるだろう。顔を見なくても分かる。

 カノンにも授与されるのは納得できないが、もうアイツはいない。その分も団長のオレがもらえたりして。

 王様が自らの手で一人ずつ胸に勲章をつけてくれる。

 「「「「ありがたき幸せ。」」」」

 勲章はもらった、お金は後日か。今日もらって豪遊したい。

 王様が全員勲章を付け玉座に座る。

 「お金は今すぐにでも渡したいのだが、その前に一つお願いがあっての。カノンから将軍ルノガ―宛に手紙があったのじゃ。お前たちはカノンが降りた場所を知っておろう。カノンを探し出し、城まで連れてきてほしい。」

 「お言葉ですが、それは冒険者ギルドの仕事ではないでしょうか。」

 なぜカノンをオレたちが探さなければならないんだ。意味がわからない。

 「ふむ。貴族として始めての任務じゃ。実績を作りやすいと思ったが、やりたくないみたいだな。どれ騎士団の第一小隊にお願いするとするか。」

 たしかに、カノンを連れてくればまた報酬も貰えるし、貴族として国に貢献した実績にもなる。

 これはチャンスだ。少し褒めればカノンも騎士団に戻ってくるだろう。

 戻ってきたら、奴隷のようにこき使ってやる。

 「いえ。是非とも第二小隊の我々がカノンを連れてまいります。」

 「わかった。カノンを連れてき次第、報酬を渡そう。約束する。」

 お礼を言い、謁見の間を出た。

 「団長。金が貰えないなんて聞いていねえぜ。報酬を見越して高級ホテルに泊まってるんだ。困るぜ。それにカノンを連れてくるなんて面倒な仕事受けるなんて納得できねえ。」

 クロスナーは怒っている。

 「まあそう怒るなクロスナー。教会の金で足りるだろう。それにカノンを連れてくるだけでまた報酬が貰えるんだ。悪い話じゃない。それにカノンから手紙が届いたと言っていたが、勲章と報酬が貰えた。オレたちが追放したことが罰せられない証拠だ。」

 確かにとクロスナーは頷く。

 クックックオレの策略どおりだ。迎えに行くのは面倒だが、それだけでオレたちはもっと出世できる。オレが騎士団長のエドガー様だ。将来の将軍様だ。黙って従え! 

 父上が謁見の間から出てきた。

 「エドガーか。それにお前たちもこの度は帝国のためによく尽くした。これからも一層励め。」

 「ありがとうございます。父上様。」

 「うむ。それに実家にも顔を出せ。母が心配していたぞ。」

 なんだ今日は素直に褒めてくれるじゃないか。

 「ええ。勿論です。今日は顔を出します。」

 「いや、それはカノンを連れて戻ってからで結構だ。今からさっそく向かってくれ。急を要する。」

 話の風向きが悪い。なぜカノンのためにオレたちが急がなくちゃならないのだ。

 ボサッとするなと言われて、城を追い出された。

 扱いには納得できねえが、カノンを連れてくる簡単な仕事だ。1日で終わるだろう。

 いじめて、命乞いさせてから連れてこよう。

 文句を口にしながらも第二小隊の四人は馬車に乗り込む。

 このとき、エドガーたちは気がついていなかった。カノンを見つけることの大変さとこの後に待ち受ける悲劇を。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる

まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。 そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...