ルーザー

烏帽子 博

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新たな世界に

魔獣ハント

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○○ランドの入口みたいな大きなゲートが見えてきて
ゲートの上には「魔獣ハント」の看板と、ハンターが魔獣と戦っている人形が動いている。
入場口でステータスカードをかざすと、黄色いランプが点灯した。

「はい、初めての方ですね。こちらにおねがいします。」

グリーンのランプがつく人が多いが、たまに私たちのように、黄色のランプが点灯する人もチラホラいる。

「初回ハンター様講習会場」
ドアにそう書かれている部屋に案内された。

七割程の人で席が埋まった頃、部屋のドアが閉まり講習が始まった。

「皆さんようこそ魔獣ハントへ。まず始めに、このハントでは、皆さんの生命の保証は有りません。
参加される方は、これからお配りする誓約書の内容を熟読された上で、サインをおねがいします。
かい摘んで、説明すると、死んでも、行方不明になっても運営側の責任は問わない
全て自己責任とする
といった内容です。
因みに今月は死亡者13名、行方不明者27名です。
この方たちをロストヒューマン通称ロストとお呼びしています。
ロストは、その後発見されても、ウィナーとしての権利は全て失ったものとされます。
ロストは、魔獣と同様にハンティング対象となりますので、そのおつもりで。
まず、皆さんはシティカーと同じ用なカーゴという乗り物でハンティングエリアに運ばれます。カーゴによりその到着場所はさまざまです。
カーゴには午前便と午後便があり午前便は13時午後便は17時に現地を出発してこちらに戻ります。
カーゴは往復とも同じカーゴにしか乗れない決まりですので、必ず帰りの発車時刻までに行く時と同じカーゴに戻って下さい。
誓約書の説明は以上です。

続けて退出時のご注意です。
誓約書にサインの上、退出して下さい。
出口は入って来たときの反対側です。
出口でステータスカードに誓約書サイン済を記録しますので、カードリーダーをタップして下さい。

これで、ここでの説明は全て終わりです。
魔獣ハントをお楽しみください。」


「ずいぶん沢山の人が死んだり、行方不明になるのね」

「そうだね。それだけ危険な魔獣が居るってことだよな。
レイ 俺から離れるなよ。」

「マークあなたこそ離れないでよ。
女の子を魔獣から助けて仲良くなろうとか考えてるんでしょ。」

「いやいや、レイ想像力あり過ぎだよ。」





「10時発の午前便カーゴ、間もなく満席となります。」

アナウンスにせかされるように、マークと乗車した。

カーゴは2台が連結されていた。
森の中を二十分位進むと、少し開けた所に到着した。

カーゴからゾロゾロみな降りて行く中に、この場には不似合いな子供連れが居た。

なぜだか気になって注目していると

「ママ、泣かないで」と声が聞こえる。

「そうだよ。おれはまだ生きてるし、ここでも母さんと仲良く生き残るつもりだよ。
そんなに心配するなよ。」

年配の男性が、腰の剣をたたいて見せる。

「そうよ、私だって、やるときは、やるんだからね。
父さんと二人だから大丈夫よ。」

「うん、わかってるわ。でも、涙がでちゃうのよ
元気でいてね。祈ってるわ。」





ー マーク、あの人たち、なんだか 今生の別れ みたいな感じよね ー

ー ああ、その通りじゃないかな。
見たところ年寄り夫婦は50歳位だろ。ルーザーだったらガス室送りの年齢だろ。
ウィナーも同じなんだろ。
だけど、ロストヒューマンになればこの森で生きて行ける。
つまり自分から行方不明者になるつもりだよ。ー

ー 何か狩りに行く気が失せるわ ー

ー そうだな ー

また、他に目をやれば尼さんの集団が森に向かって祈りを捧げている。

ー やるせないわ ー

ー レイ、ロストの人は魔獣と一緒で狩りの対象とか説明にあったよな。そんなのやっぱりひどいよな。俺たちでロストの為に何かできないかな ー

ー 危険な魔獣を私たちが狩るとか?ー

ー そう、帰り際に武器を置いてくるのもいいかも ー

「レイ そろそろ森に入ろう」

「そうね、行きましょう」


森に入りしばらくするとゴブリンの集団を見つけた。

「レイ 俺が『マーク』する」

「どうぞ!」



「ウギャウギャ」言ってるゴブリンの中にマークが突っ込んで行く。
ひときわ大きなゴブリンにたどり着くと

ー レイ、終わったよ。キングを『マーク』できた。
ここに居るやつ全部手下だよ ー

ー わかったわ、でもあまり私の近くには越させないでよ。
私のこと見る目が、なんかねっとりしてて、気持ち悪いわ ー

ゴブリンたちを引き連れて森の中を進んで行くと3匹のオークと出会った。

ゴブリンたちは果敢にオークに挑んで行くが、オークの半分にも満たないゴブリンは、あっと言う間に全滅させられた。
ゴブリンキングにしても、三匹のオークにはとても敵わなかった。

マークがオークたちを『マーク』した。

「ねぇ マーク わたし暇!」

「すまぬ」耳元で聞き慣れない声を聞いたとたん、わたしは、気を失った。













「うっ」

喝を入れられて、わたしは目を覚ました。
わたしは知らない場所に連れて来られていて、周りには数人の年配者が居た。
中には今まで見たことがないほど歳をとってる人もいた。

「無理矢理連れ去る様なことをして済まない。
危害を与えるつもりは無いので、大人しくしていて欲しい」

「誰なの、何なのあなたたちは?」

「私はヒムラという、剣のスキル持ちだ。
私たちは、ロストヒューマンだよ。
君のスキルを知って、是非とも仲間になって欲しくてこうしてここにお連れしたんだ。」

「お連れしたにしては、乱暴ね」

「その点については、謝ります。
我々は、ハンターからも狙われる身なので、こうするしかなかったんだ」

「マークはどこ?」

「マーク?一緒に居た魔獣使いか?」

「そうよ。私と一緒にいた人」

「彼は連れてきてない」

「ちょっと待って!心配してると思うから!」

ー マーク 私レイよ!ー

ー レイ!探したんだ!どこにいるんだ!もう直ぐ帰りの時刻だ!急いでカーゴに戻らないと!ー

ー マーク 私ロストヒューマンと今居るのよ ー

「私を今すぐカーゴまで送ってくれない、もうすぐ出発の時刻なのよ」

「申し訳ないが、ここからでは、もう間に合わない」

「そんなの酷い!どうしてくれるのよ!」

「ですから、仲間になってもらえないかと」

ー レイ!どうした!どうなってる ー

ー 仲間になれってさ
あと、ここからだと、出発時刻には間に合わないそうよ ー

ー わかった。俺も残る!ー

ー マーク、今は一人で戻って、いつでもこうして話はできるし、いつでもなりたければ、ロストにはなれるわ。
でもロストからウィナーのフリーマンにはなれないのよ。
お願い、私のためにも、戻って ー

「今 君は何をしていたんだ?心ここにあらず って感じだが」

「ふぅー そうよ、わたしは念じるだけで連れのマークと話ができるの。
あなたたちは、そんな二人の仲を引き裂いたのよ
この責任をどうとるつもり?」

「君は、そんなスキルも持っているのか?」

「わたしのスキルじゃないわ、マークのスキルよ」

「あの魔獣を操るスキルか」

「そうよ。わたしは操られないけどね。念じて会話はできるようになったわ」

ー レイ、君の言う通りカーゴに戻ったよ。
折角また一緒にいられると思ったのに。
俺が魔獣ハントなんかに誘ったせいだ。
俺はなんてことをしてるんだ ー

ー マーク、自分を責めないで、わたしなら大丈夫よ。
また絶対会えるから心配しないで
後で又必ず連絡するから、待ってて。
こっちは、これから混みいった話をするから、念話一旦切るわよ ー

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