ルーザー

烏帽子 博

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人間狩りふたたび

ポイントの行方

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「初日から大変な展開になりましたね。
なんとハンター側に死者3名、重症者1名になりました。
やはりマークさんミランダさんのスキルによるコラボでの攻撃がポイントですね。
ゴンさんいかがでしょう」

「ハイそうですね。最初にミランダさんに倒されたハンターも毒霧といった強力なスキルがあったんですがね。
一瞬の油断を上手くつきましたね。
二人目のハンターは、マークさんのキラービーによる攻撃で、虫の息でしたので、ミランダさんには簡単だったでしょうが、注目したいのは、そのままタニヤさんを仕留めに行かなかったことですね。」

「そうですね、タニヤさんはその時既に蜂に刺されまくっていて弱ってましたよね」

「そうなんです。ハンターのポーリーさんグラハムさんが駆け付けてくるのが分かったか、タニヤさんの余力を警戒したかのどちらかでしょう」

「マーク・ミランダ組が、慎重かつ巧妙な作戦をしたと言うことですね」

「そうなんです。結果的にはタニヤさんの余力を甘く見たグラハムさんが返り討ちで死亡した訳ですね。」

「そのほか、この先の展開はどうなると思いますか?」

「ポーリーさんがキーパーソンですね」

「ポーリーさんですか?」

「ハンターであるポーリーさんは、現在ポイントが有りません、このままゲームが終われば処刑される立場です。
そして、ポーリーさん以外の人はゲーム終了迄生き残るだけでもポイントがありますよね。」

「つまりポーリーだけが、何が何でも誰かを殺さないといけない立場ですね」

「そうなんです。それとポーリーさんのスキルも考えると。
タニヤさんを殺すのがベストチョイスなはずですが、それをしていない。
そこが少し疑問なんです」

「ポーリーさんは、タニヤさんがあの状態から復活すると考えているんでしょうか」

「多分そうですね。タニヤさんに何か飲ませてましたよね。」

「ところで、解説のゴンさん。ポーリーさんのスキルは、どんなスキルだと思いますか」

「あーそうですね。そのことをお話するのを忘れてました。
ポーリーさんがキラービーに襲われた時に、キラービーが地面に堕ちて、そこを短槍で仕留めてましたよね。
毒霧のようにそのスキルだけでは相手を殺すことは出来ないみたいですが、近くに来た単体に対して、何らかの力で自由を束縛出来るスキルのようです。
麻痺とか金縛りとか念力がそれに当たりますが、彼女の場合念力かな」

「何故そう思われるんですか」

「麻痺なら、麻痺を掛ける為の攻撃が大抵必要ですが、動かなくなってから攻撃してるから、違うと思います。
また金縛りは、相手の精神に干渉する技ですから、ある程度知能レベルが高い相手でないと効果が期待できません。」

「それで念力なんですね。
でも、それだったら、落とすのではなく、地面に叩きつけるとかできるんじゃないですか?」

「それは、パワー不足が一番考えられます。もしかすると、フルパワーを知られないよう隠すために、最低限の力のみで仕留めたのかも知れません」






「あの解説のゴンめ!わたしのスキルのことをベラベラとしゃべって。
まったくこっちの迷惑少しは考えなさいよ。
あんな奴両耳同時に虫が飛び込んで苦しめばいいんだわ」


ポーリーはそう呟いたあと、ひときわ大きな声で叫ぶように話した。

「マークさん ミランダさん
聞こえているでしょ、わたしの声。あなたたちに休戦を申し込みたい。こちらからは、あなたたちには敢えて攻撃はしない。
但し、そちらから攻撃があったときには、全力で反撃する」





「ミランダ聞いたか。ありがたい話じゃないか。
向こうから攻めて来ないなら、俺はこのまま終了まで過ごしたい」

「ターゲットの二人からは狙われる可能性が有るけどね。
正直な話、強いハンターから狙われないのは嬉しいけど、今回だけでウィナーになれるチャンスを失うのもちょっと惜しい気もするわ。
でも、そうね。
当初のわたしの目標通り、今回のゲームでの生き残りを考えて、休戦を受け入れた方がいいと思うわ」

「わかった。休戦受け入れの返事をするよ。」

マークの使役したミツバチが、ポーリーとタニヤの前に行き
「OK」と形作って見せた。

マークとミランダは、島の北側の草原地帯に移動した。
野営用に少し高い所を探しているとトレジャーBOXを発見した。

「どうする?開ける?罠だったら怖いわよ。」

ミランダが俺の腕にしがみついてくる。

「開けないで後悔するか、開けて後悔するか。俺は開けたい。」

「君子危うきに近寄らず って言うじゃない。やめようよ」

「虎穴に入らずんば虎子を獲ず とも言うよ」

「石橋を叩いて渡る」

「わかったよ。それじゃあ、ここから少し離れて、キラービーにフタを開けてもらおうか」

「そんなこと出来るの?」


結果的には、キラービーがフタを開けることはできず。
マークがトレジャーBOXの蓋を開けたることに。

「ボン」白い煙があがった

「マーク 大丈夫?
おじいさんになってない?」

トレジャーBOXの中には金色の腕輪とメモが一枚入っていた。

俺はメモを取り出して読んだ。

〈「収納の腕輪」生物以外の静止しているあらゆる物を収納出来る。
収納したものは、時間経過しない。
収納したいときは「収納」と念じる
収納したものを取り出すには「収納リスト」と念じると一覧が頭に浮かぶ。取り出したい物を指定する。
内部空間の広さは、ほぼ無限に近い。
使用者は腕輪をはめ、認証を行う。初期パスワードは
「100人のっても大丈夫」
以上〉

「マーク 大丈夫?」ミランダが後ろから、覗き込んだ。

「わー綺麗な腕輪 わたしに頂戴」と言って、ミランダは腕輪を俺の手から奪って眺めている。

「返せよ」

「はぁ~い」

「マーク」してあるミランダは俺の命令には絶対服従だ

ミランダから返された腕輪を左手にはめてみると

〈これより 使用者認証を行います。〉
と頭の中に声がした
〈いいぜ〉
〈お名前、性別、年齢を登録してください〉
〈名前はマーク、男、16歳〉
〈初期パスワードをおねがいします〉
〈100人のっても大丈夫〉
〈パスワードを変更しますか〉
〈変更しない〉
〈使用方法の説明は必要ですか〉
〈不要だ〉
〈認証は以上です。マークさん、便利な収納ライフをどうぞ〉

それっきり頭の中に声は響かなかった。

左手を見ると腕輪は消えて無くなっている。

試しに〈収納〉とメモを見ながら念じるとメモが手から消えた。

「あら?腕輪も一緒に入っていた紙も消えちゃったね。
何か心配して損したわ。
何だったんだろう。つまんないわね。」

「ああ、そうだね」

俺は当分の間はミランダにも腕輪のスキルは秘密にしておこうと思った。

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