ルーザー

烏帽子 博

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ウィナーの世界

エイト

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レイバーが三日後に来る!
それってどういうこと?

男性の、アレの大きさまで指定した人が。

いや、それって人なのか?
容姿全て思い通りの人なんて…

たぶん選んだタイプに近い人かな
全然似てなかったら、やだなぁ


そうだ、名前考えないといけないんだった。

レイは複雑な思いを描きながら何処に出掛けるでもなく、レイバーが納品される日を迎えた。







ピンポ~ン


ドアを開けたら、そこにはオーダー画面で見たままのイケメンがニコリと白い歯を見せて微笑んでいた。

「おはよう レイ。
ぼくを選んでくれてありがとう。
ぼくは君の為なら何でもするよ。
さぁ、ぼくの名前を呼んで!」

実は、この3日間散々悩んだけど、ちっともいい名前が浮かばなくて困っていた。



「え え~っと………」



「エイト! カッコイイね、嬉しいよ、いい名前だね」



えっ ウソッ
まぁでも気にいったなら、それでいいか!



「でしょ。それで、エイトは何がしたいのかな?」

「ぼくはレイが望むことなら何でもしたい。
とりあえず、家に入れてもらえるかな?」

「あっ ああ、どうぞ」

エイトをリビングに招き入れて、ソファーに座らせる。

「紅茶かコーヒーどっちがい   い?」

「レイと同じがいい、ぼくがやろうか?」

「いいわ、私がやるから、エイトは、そこに座ってて。紅茶にするね」

「わかった。レイが淹れてくれる紅茶、楽しみだ。」

「誰がやっても一緒よ、そんな味なんか変わらないでしょ」

「そんなことないよ。ぼくには、レイが淹れてくれるなら特別だよ」

私は、顔どころか全身熱をおびた感じになった。
ヤバイ
イケメンの甘い言葉が、こんなにインパクトあるとは思わなかった。

「エイトの家はどこなの?」

「なに言ってるの?今日からここがレイとぼくの家だろ」

だめよ~ダメダメ

多分そんな答えだと薄々想像したけど、出会ったその日にイケメンお持込みなんて!

「違うの、あなたをオーダーしたのは、私のアドバイザーのシルビアが勝手に選んで………」

「ぼくは、レイにとって何も役にたたないまま、返品処理されるの?」

エイトは、うつ向いて下唇を噛んでいる。

「エイト 処理ってどういうこと?」

「バラバラになって、また新しい誰かのパーツになるんだよ」

「バラバラ?パーツ?あなたは人なの?」

「えっ? レイ知らないの?
ぼくらレイバーは人型ロボット ヒューマノイドだよ。
君たちフリーマンやリサーチャーの為に役立つよう作られてるよ。
ウィナーに成ってからのレイの事は全部知ってるよ。」

「全部知ってる?」

私は薄ら寒さを覚えた。
それって、これまで常に監視されてたってことよね。

「全部ってどんなこともなの?例えば?」

「今朝は6時に目が覚めたけど、ベッドから出たのは6時半頃、その間に2回オナラをしてるよね。
トイレで358ccのオシッコをして。
尿酸値、血糖値、血圧は正常。
体重は、前日同様52kg
朝食は和定食を完食。
トイレで543gの排便、形状色から内蔵の状態も良好。
安心だね。
それから、メイク中に『ちょっと濃いかな~』とつぶやく
一旦水色のスカートを履いてから、ベージュのスカートに履き替える。
こんな所でどう?」

「えっ 工エエェェ(´д`)ェェエエ工!
何でそんなことまで!」

「それは、フリーマンの快適で健康な生活のフォローをするためだよ」

「エイト。
あなたが見てたの?」

「ぼくが見てたわけじゃないよ、データベースの情報を話したんだ。」

「何?データベースって?」

「ウィナー全ての情報を集めてる所って言えばわかるかな。」

「集めてどうするの?」

「分析して、役立てるのさ。
健康管理はもちろん、好きなことの傾向が分かれば、それに合わせて色々フォロー出来るだろ」

「例えば?どんなフォローしてるの?」

「先日シルビアさんとのランチで二人共ハンバーグを食べただろ。」

「うん、それで……」

「レイ用は、肉の旨味を十分味わえるようように作り、シルビアさん用は、水溶性食物繊維大目に作ったものが出たんだ。」

「えっ 何で?」

「二人の体調からそうなった。
レイは、健康。シルビアさんは、腸に若干トラブルが有ったから。」

「えっ シルビア病気なの?」

「病気じゃないよ。体質がそうなだけで、心配要らない。これ以上は個人情報になるから、ナイショ」

「それじゃあ、シルビアが今どこで何してるとか、朝何食べたとか、どんな服着てるとかも全部分かるの?」

「うん、わかるよ。でも、個人情報だから、レイに教ることは出来ないよ。」

「他の人のことも、全部分かってるの」

「ウィナー全員が対象」

「見られたくないって人はいないの?」

「ぼくには分からない」

「私は見られたくない」

「どうして?情報を提供して、そのデータが蓄積され分析されることによって、より豊かで、健康で快適な生活が出来るのにかい?」

「うっ。とにかく理屈じゃないの。
エイト、あなたわたしの今着けてる下着の色を知ってるでしょ。まだ見せてないのに。」

「はい、もちろん」

「知らない方が見えたとき嬉しくない?」

「サプライズ効果だね。レイはぼくを驚かせたいの?」

「そうじゃなくて、自分から明かさない内は知られたくないって気持ちを言いたいのよ。」

「レイ 君は今の言葉で危険人物に指定されたよ。
アドバイザーのシルビアも、評価がこれで1つ下ったよ」

「なに それ 危険人物って
私はウィナーになりたくて、こんなにがんばって、やっとなったのに
危険人物って、ひどくない?」

「だったら、普通のフリーマンになればいいんだよ。」

「普通って?」

「それじゃあ、レイ 今から、ぼくと出かけよう。」

「出かけるって、どこに?」

「それは行ってみてのお楽しみ。レイはサプライズが好きだろ。」

エイトは、サッと立ち上がって私の椅子の後ろに周り

「レイ 立って」

私が立つのに合わせて椅子を引いてくれた。
そして私の手をとって歩き始めた。
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