ルーザー

烏帽子 博

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人間狩り

ターゲットとして3

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私はマークの元へと急いだ。
あのターゲットの男性が引っかかったトラップは、私が作っておいた物に違いない。
あの場所ならわかってる。

走って行くと、キラーフォックスが現れた。

「こんな時に、邪魔しないで!」

私が剣を振り回すと、キラーフォックスは逃げた。
しかし、行く先行く先に姿をあらわしてきた。

「もしかして、『マーク』されてるのあなた?
マークはまだ生きてるのね。
案內してくれてるのよね」

キラーフォックスは私が着いて来てるか確認するように時々振り返っては、先へ先へと進んで行った。
私も、全速力で走り続けた。



私はついにマークの姿を見つけた。木に背中を着けてよりかかり座って、脇腹を押さえていた。

マークに駆け寄ろうとした時に、足下に飛び出していた木の根っこにつまずいて、ベチャっと転んでヒジを擦りむいた。

「アハハハ レイ、笑わせないでくれよ。傷に響くよ」

マークは弱々しい声で話しかけてきた。

私はマークに抱きついた。
「お願いマーク!大丈夫よね!治るよねこんな傷!」

「イタタタ 相変わらずむちゃ言うなあレイは。
俺はもうだめだ。助からないよ。もう血もいっぱい出ちゃったし」

「嘘よ、嘘でしょ。マークは何時も私を騙すじゃない。
後で『又引っかかったレイは馬鹿だなぁ』って言うんでしょ」

「そうできたらなぁ。でも今回は本当だよ。
頼む レイが俺に止めを刺してくれよ。そうすればレイはウィナーになれるだろ
レイの為になりたいから、ここにレイを呼んだんだよ」

「嫌 絶対にいや、マークを殺したポイントなんか要らない」

私は涙でぐしゃぐしゃになった。マークの顔も歪んて見える。例えマークが助からなくても、マークの顔を見続けて心に刻むんだ。



「ジュウ~」

「あっ つう~  熱いよ」

マークが目を開けた。




マークの傷口から煙が出ている。

私の涙が腕を伝って擦りむいたひじから血と混ざって垂れて、マークの傷口に注がれていた。

もしかして、私の血?

「マーク 助かるよ。
絶対に助けるから。」

そう私のスキル『健康な体』がきっと効いたんだ。

自分以外の人に効果があるなんて思わなかった。
だけど、とにかくマークを助けるには、これしかないと思った。





「ちょっと。我慢してね」

私はリストカットをして、マークの傷口に血を垂らした。

マークは苦しそうに抵抗したけど、私はそれを許さなかった。

「レイ お前絶対Sだよな、俺が苦しがるの見て、笑っただろ」

「そんなことないわよ。マークの怪我が治っていくのを見てて嬉しかったのよ」

マークは弱ってはいるけど、とりあえずは死にそうではなくなった。

「レイ、ハンターの俺を助けていいのか?」

「なにを今さら。馬鹿ね
私後ろ向くから、その剣で斬れば。」

「………負けたよ。でもやっぱり、戦おうか。
戦ってレイに殺されるなら本望だし」

「はぁ? マジバカ アホ ドンカン。 これこぼさないでちゃんと飲み干しなさいよ」

私は、再びリストカットして、マークに私の血を飲ませた。

「ど どうゆうこと?
何で血を無理やり飲ませるんだよ。俺は吸血鬼じゃ無いよ」

「元気になったでしょ。」

私はそう言うと気が遠くなった。




「レイ 起きろ!」

「えー マーク まだねむいよ~」

「何いってんだ!人間狩りゲームの最中だぞ。レイ!しっかりしろ!」

「ハンターのゲールがそばまで来ている。
狙いは死にそうな俺の筈だ
レイはそこをついて奴を倒すんだ。
そうすれば、こんな人殺しゲームから抜け出して、ウィナーになれる!」


私はマークが寄りかかっている木の上に登った。


「やっと見つけたぜ、ありがてえ、まだ息があるじゃん
2ポイント様だ
今すぐ楽に  」


私の投げた石がゲールの眉間を貫通した。


「レイ お前 ヤバイな。
モニターでも見たけど、色々凄いな」


「マーク 私行くね、ハンターとターゲットだから
マークは、私とジョンの二人を倒せばゲームクリアでしょ
じゃあね 頑張って」


わたしがマークの元を離れるとモニターが点灯した


ゲールの眉間を石が貫通するところが映し出されている。

「これは、凄いスキルですねぇ。一撃ですね、レイさんのスキルですねぇ。
これでレイさんもジョンさんと並んで3ポイント。タイムアップまで逃げきれば、ボーナスと合わせて5ポイントとなりますから。ウィナー確定と言っていいでしょう。
解説のゴンさん、いかがですか?」

「そうですね。レイは、そこでマークを殺さないで、もう一人のハンター ゲールをおびき寄せるためのエサとして利用した点に感心しました。
そこでマークを殺して3ポイント目を獲得したとしても、ゲーム終了までハンターのゲールに追われることになります。
ゲールはポイント持ってませんから、必死に追うでしょう。
しかし、先に、ゲールを討ち取る事が出来れば、残す敵は瀕死のマークだけですからね。
賢い作戦だと思いますよ。」

まったく、何よあの解説者。
わたしがマークを利用したって!

机の角に小指をぶつけてしまえ~
痔になって、頭に突き抜ける痛みを感じろ~



こうして私は、最終日をむかえた。
木漏れ日の中で木の上で携行食を食べて過ごしていた。
太陽が真上から少し傾いた頃、モニターが点灯した。

洞窟の様な所が映し出されている。その入口で火が炊かれモウモウと煙があがっている。
洞窟の中から矢が数本飛んできた。狙いは定まってないようだ。
続けて人が転がりだしてきた。
服に火がついて、転がって消そうとしている。

「ゲホゲホゲホ クソッ何てことしやがる ゲホゲホ」

良かった、マークじゃない、出てきたのはジョンさんだ。
そこにキラーフォックスが噛み付いた。

「バインド!」

キラーフォックスに蔦が巻き付いた。

キラーフォックスは中々離れない。
そこに続けて、アシナガ蜂が襲う何十いや何百の蜂がジョンさんに針をつき出す。

「止めろ止めろ!助けてくれ!」

「わかった。」

マークがジョンの首をはねた。

「楽になったろ。
沢山苦しめて悪かったな。でも強いアンタに勝つには仕方なかったんだよ。
成仏してくれ。」


「皆さん、ご覧になりましたか。昨日は瀕死だったマークさんが、奇跡の復活をとげて、尚かつウィナー確定だったジョンさんを倒しました。
マークさんは、これで、3ポイントを獲得しました。
この先マークさんは、レイさんを倒せば、4ポイント。そして相手チーム全滅のボーナスポイントと合わせて5ポイントとなりウィナーになる事ができます。
レイさんは、マークさんと戦わなくても、終了迄生存してればボーナスの2ポイントが入りウィナーです。
さて、この先二人の戦いが有るんでしようか、どちらか一人が今回のゲームでウィナーとなることは確定です。」

「そうですね、私の予想では、このまま戦闘は無しでレイがウィナーとなると思いますよ。
レイは重症だったマークを殺すチャンスがあったにもかかわらず、そうしなかった。
それにマークがあの怪我から回復した事に、何らかの形でレイが係わっていると思います。
それと、このまま終わればマークは次回ターゲットとしてエントリーする訳ですが、既に3ポイント持っていますので、逃げ切るだけでウィナーとなれますよね。
先程のジョンを倒した場面を見ても、生き残るのに適したスキルをマークは持ってますよね」

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