ルーザー

烏帽子 博

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人間狩り

ターゲットとして1

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スタートの合図と共にダッシュして森に入った。

こちら側の森ゾーンの高い所迄行って、この島の全体像を確認するためだ。

走ってみると、何時もより速く走れると感じた。
ランチのごちそうのおかげとスキル『健康な体』で一回り成長したみたいだ。

運良く沢に出たので、武器となる手頃な石を探しながら、沢を登っていった。
十数個の小石を背嚢に収めることができた。

森の高い所まで来ると、木に登った。
ここなら島の全体像が見渡せる。
この島は水が豊富なようで、自分が登ってきた川の他にも何本かの川がながれていた。
ハンターたちのスタート地点の北側の方は、草原が広がっているが、かなりの部分は湿地帯の用だ。

普通ターゲットになったら、息を潜めて森で隠れるだろう。

私はハンターに狩られるのではなく、狩ってやる!

問題は、誰がどんなスキルを持っているか分からないこと
個人での行動か何人かで連携しているか
狩猟犬の存在と友人のマークの存在だろう。

とにかく、相手に見つかるより先にこちらが見つければ、勝機はある。

そう考えながら木から降りてゆく途中 ヒュッ と矢が顔をかすめた。

こんなに早くハンターがここまで来るとは想像して無かった。
かろうじて、地面には着地できたが、そこで体が動かなくなった。




「バインド」ジョンがそう言うと、ハンターの首に蔦が巻き付いた。

ハンターは、目をむいて苦しそうにしていたが、やがて動かなくなった。

ジョンは、ハンターの所持品を手にすると
「馬鹿な娘だな、あんな目立つ所に居たら、狙われるに決まってるじゃないか。
まぁおかげで、俺は助かったがな。」
そう言って、その場を離れて行った。




私は、その一部始終を見てはいたが、言葉も話せる状態ではなかった。
このまま呼吸も止まるのかもと恐怖を感じた頃、体の硬直が解けた。矢がかすった所の傷も治っている。

「毒矢だったんだわ。」私は、ジョンの言うとおり軽卒な行動だったと反省した。
スキル『健康な体』に助けられたわね。

毒が効かない体では無いんだ。
解毒ができる体なんだ。

ジョンには感謝しないといけないわね。
私に止めを刺そうとやって来たハンターを倒してくれたんだから。

私も、長居は無用と思って、その場を離れた。私をかすめた矢が近くの木に刺さったままだったので、有難くいただいた。


島内の所々に設置してあるモニターが点灯して、倒れた私の所に来るハンターがジョンに倒される映像を繰り返し流している。

「ターゲットのジョンが、なんとハンターを倒しました。
ジョンはこれで3ポイントホールダーとなります。
ジョンはこのままゲーム終了迄生き残れば、2ポイント上乗せで5ポイントとなり晴れてウィナーとなれます。
残り4人のハンターはこれを阻止出来るのか?
それともターゲット仲間がポイントの横取りにくるのか。
ジョンからは目が離せませんね。
ちなみに、毒矢にやられたレイは回復して移動を始めたようです。
ジョンに助けられましたね。
解説のゴンさん、どうでしょう」

「そうですね。レイも何らかのスキルを持っていると考えられます。
矢がかすめただけとは言え、毒矢からの回復が早すぎる印象です。
ジョン同様、面白い存在となるかも知れませんね」


全く、あの解説者余計なことを言ってくれるわね。
スキルが危険と判断されたら、さっきだって、ジョンに殺されてたかも知れない。
同じターゲット同士で、私がポイントを持ってないから、殺してもメリットが無いとさっきは判断したんだろう。

今の解説者の話のせいで次に会ったときには、ジョンが私を殺しにくる確率が確実に上がった気がする。

遠くで犬の声がする。

こっちに来なけりゃいいなと思いながら、しばらく移動して木に登った。
ロープ代わりに使えそうな蔦を、ナイフがわりの石で適当な長さに切ったりして、何箇所か罠を仕掛けた。

犬の声が聞こえなくなってしばらくすると、またモニターが点灯した。

犬が木に向かって吠えている。
すると木に見えた所から人が出てきて、犬と戦っている。
犬は、その人の腕に噛み付いて離れない。
その人は噛みつかれたまま犬を振り回して、近くの大木に打ちつけた。
犬は小さく「ぎゃん」と泣くと
大人しくなった。

ハンターが犬を追ってやって来て、足下に転がってる犬とそこにいたターゲットを発見し、剣でターゲットの男に斬りつける。
ターゲットの男は簡単に斬り殺された。
ハンターは、死んだ犬を抱きしめて泣いて居るようだ。

「只今の戦闘で死亡したターゲットは、ポールさんでした。
猟犬を失いましたが、ハンターのジルさんには1ポイントが入ります。
これでハンター ターゲット共に残りは4人ずつに成りました。
解説のゴンさんいかがですか」

「殺されたポールさんは、私のスキル『隠れ蓑』と同じようなスキルを持って居たんでしょうね。
人の目は欺けても、犬のもつ嗅覚などには無力だったようですね。
ジルさんは、猟犬を失ったのは戦力的にも痛いでしょうが、ポールさんを葬った剣技は圧巻でした。剣系のスキルをお持ちなんでしょう。
引き続き頑張って欲しいです。」


やがて、日が暮れて森の中は夜行動物が動き出した。
スキル『健康な体』のお陰で
外気温が低いのは感じるけど、寒くは無い。薄明かりでもちゃんと周りが見える。

獲物を求めてキラーキャットが歩いている。
私は、躊躇なく石を投げた。
石は加速しながら飛んでゆき、キラーキャットの眉間に命中した。

キラーキャットは、声を出すことも無く絶命したようだ。
キラーキャットの居たところには、魔石と牙と私が投げた石が落ちていた。
これらを回収したときに、何となくだが、魔石を体に取り込みたいたと思った。

「食べてみよう」
口に、咥えて噛んでみると、パリンと割れて消えてしまった。

少しすると、力が湧いてきた。
それと、周りが昼間のようによく見える。

私は、夜の森の中を魔物を狩りながらうろついた。
2人の女性ハンターが焚火を囲んで野営しているのを見つけた。

焚火なんて、自分たちの居場所を教えるようなものよ。

どちらかが、探知型スキルを持ってるとか、私のように夜目が効く3人目がどこかで隠れて見張ってるかも知れない。

見つからないように、周囲を入念にチェックすると、3人目のハンターでは無く、ターゲットの女性が居た。
彼女は木の枝から焚火をしているハンターを見ている。


「プシッ」


彼女にだけ分かるように、小さな音をそばに行きたてた。

彼女がわたしに気づいた。
わたしはハンドサインで、『一緒に攻撃しよう』と持ち掛けたら『相手が、寝るまで待つ』と返ってきた。

するとハンターの2人が焚火を消してこちらに向かって来た。

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