上 下
5 / 27
ep1

素潜りそして街へ

しおりを挟む
初日。背の立つ深さの所で、水の中に潜り目を開ける練習。

顔を水につけた途端に、立ちあがってしまうアサリに

「口だけじゃ無くて、ここで男気見せなさいよ。
水の中で目を開けて、1分位は耐えれないと、その先は無いから。
プロの素潜り漁師は5分以上潜っているそうよ。」

アクアはハッパをかけるが、アサリの水に対する恐怖心がなかなか抜けないまま日が傾く頃になっていた。

「今日はもう止めましょう。気持ちも一旦リセットしないとね。
明日も同じ練習をするから。
陸の上でも、せめて息を止める練習位しときなさいよ。」

アサリにそう告げてこの日の練習は終わった。

アクアは、日のあるうちに一人でポイントに潜って、アワビとウニを採ってから小屋に戻った。

「これが高級食材なのか」

「もしかして二人共アワビもウニも食べたこと無いの?」

「ああ 食ったこと無いさ。そんな物食わなくたって生きて行けるしな」

「目の前の海で採れるこんな美味しい食材を食べたこと無い漁師かぁ
なんか情けないわね。」

アクアは、二人の目の前でウニの殻にナイフを突き刺して、その身をほじくり出して食べた。

「あ~美味しい。鮮度抜群、トロトロで甘みがあってクリーミィで磯の香りもあるわね。
こんなの東京でもなかなか食べられないわよ。
あ~美味しい。もっと食べよー」

十個ほどあったウニが、あっと言う間に残り2個になった。

「良かったら食べてみない」

「仕方ないなぁ。そう言われたら食べ無い訳にいかないだろう」

どこまでもあまのじゃくなアサリに対して

「遠慮なく。頂戴します」

とジンベエは素直にウニを手にとった。



「う 旨い!何だこれは」
「本当だ、こりゃ酒があったら最高だ。」

「それじゃあ次は、アワビの地獄焼きよ、殻ごと焼いて………
ああ~ バターも醤油も無いのよね~
塩をふって出来上がりよ。
今切り分けるからね。絶対これも美味しいから食べてね」


三人で舌鼓を打っていると。

「オラも素潜りの練習をする」
とジンベエさんも名乗りを上げた。

「そうね、ライバルが居たほうがいいかも。」

二日目
ジンベエさんが加わったことで、アサリが覚醒した。
お互いにどれだけ長く潜って居られるかを競っている。

ここまで来たら順調だ、石をジェット水流で加工したものを何個か作り、それを海に落しておき、拾ってくる練習だ。

翌日には、少し水深のある場所で、ボートのアンカー用の石を持って海底まで潜って、アンカーロープを伝って浮上する練習。
あと海中で水を手でかいて進む方法を教えた。
呼吸が苦しくなって焦って早く動こうとすればするほど、酸素の消費が激しくなるので、苦しい時こそゆっくり動かないといけない。
こういったことを知ってるかどうかが命に関わる事故を防ぐのだと、口が酸っぱくなるほど注意した。

そして5日目、実践を行った。
二人共伊勢海老やアワビは採れなかったが、ウニを何個か拾ってこれた。

それでも、舞い上がって喜んでいるので、海にいる危険生物の話をした。
欲をかいて実力以上のことをしないなど、危険と思われることを毎回想定してから潜ることを二人と約束した。

その日の夕食は、アクアがとった伊勢海老やアワビにタイやヒラメもあって、宴会となった。
ジンベエたちとの約束で、素潜りの練習が終わったらムルムルの街へとアクアは旅立つことになっていた。





翌日は、いよいよこの浜辺を離れてムルムルの街へと出発する。

ジンベエとアサリ親子も街に干物を売りに行くからと、結局三人旅となった。

ジンベエ親子は自家製の干物をアクアは、その能力で海水から分離して取り出した塩を背負って、街へと向かった。

月に一度程度、ジンベエ親子が歩くだけのけもの道は、草が生い茂りとても道と言えたものでは無かった。

「えっ、ここが道。どうやって進むの」

ジンベエはこともなげに剣で切り開いて進んでいく。

「ジンベエ ちょっと待って。一度戻って来て。
そのやり方だと、ジャマなツルとかを切るだけで、分け入ってく感じよね。
私が切り開くから方向とか目標とかを、後ろから教えてくれる」

「アクア様 でもそりゃ重労働だよ。オラがやるで」

「大丈夫。魔法でやるから」

アクアは草刈り機のような回転刃を水で作り、足元から綺麗に草を刈って、ジェット水流で吹き飛ばした。

「すげぇ こりゃあ歩きやすいです。でも、街迄なんて魔力切れになりませんか。」

「そうね。心配してくれてありがとう。でもこの程度なら魔力切れは起こさないはずよ」

こうしてアクアを先頭に、ジンベエをナビゲーター進みだした一行は、いいペースで進んだ。

草が邪魔しなければ、こんなに早いペースで行けることに、ジンベエ親子も驚いていた。
いつも野営する場所を昼前に通り過ぎ、街道に出た。
そして、まだ明るい時間に街が見えた。

「魔物とか全然出て来なかったけど、これが普通なのかしら」

「アクア様 ここいらの森には魔物は居ねえ。奴らはダンジョンの中にいるんだ。
たまに溢れて外に出てくることもあるがな」

「へぇーそうなんだ。あと二人にお願い。元天女ってことはしばらく秘密にしたいの。だから『様』付けて呼んだりもしないで『アクア』って呼んでね」

「凄い魔法バンバン使ってりゃ直ぐバレるんじゃねぇの」

「アサリ、私は最初は穏便にいきたいの。」

「まあ、アクアはどうしても目立っちまうだろうなぁ。」

そうこうと話す内に街に着いた、
ジンベエ親子も余りに早く着いたことに驚き、そして喜んだ。

街の城門は明るい内は、いつも開いていて、特に検問とかもなくすんなりと通過出来た。

街に入るとジンベエは、知り合いの露天商を何件か回って干物を売ろうとしたが、金額が折り合わなかった。

ジンベエが街でいつも利用している宿屋『かあちゃんの店』に入った。

「あら、ジンベエさんとアサリくんじゃない。いらっしゃい。
そちらのお嬢さんも一緒なのかしら?」

「マーサ 今日は思った値段で干物が売れなくて文無しなんだよ。ここで買ってくれたら宿賃を払えるんだが。
今回のは絶対旨いって自信があるんだ。少し製法を変えたんだ。」

「いいわよ、買い取ってあげる。とにかく物を見せてよ。値段はそれからね。」

結局ジンベエ達の干物は、35000G。
アクアの塩は、45000Gで引き取って貰えることになった。

ジンベエ達は、二人部屋の一泊分5000G、アクアは一人部屋の3泊分9000Gを支払った。

三人は、一旦『かあちゃんの店』から出て、武器と防具の店に行った。
ジンベエが言うには「いくらなんでも、オラん家にあったボロ着じゃ馬鹿にされる」そうで、装備を揃えることになった。
店の人からは初心冒険者用の革の3点セットと銅の剣をしきりに薦められたが、アクアは旅人の服だけを買うことにした。
アサリは、初心者セットを欲しがっていたが、ジンベエに「自分で稼げる用になってから好きなものを買え」と言われて、旅人の服と銅の剣を買った。
ジンベエも旅人の服を買って、三人揃って着替えてから冒険者ギルドへとその足で向かうことにした。


♧♢♡♤♧♢♡♤


次回より、新章冒険者編となります。
次々とアクアの技も増えて行きます。
お楽しみに。

面白いと思われたらお気に入りお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

ポリゴンスキルは超絶チートでした~発現したスキルをクズと言われて、路地裏に捨てられた俺は、ポリゴンスキルでざまぁする事にした~

喰寝丸太
ファンタジー
ポリゴンスキルに目覚めた貴族庶子6歳のディザは使い方が分からずに、役に立たないと捨てられた。 路地裏で暮らしていて、靴底を食っている時に前世の記憶が蘇る。 俺はパチンコの大当たりアニメーションをプログラムしていたはずだ。 くそう、浮浪児スタートとはナイトメアハードも良い所だ。 だがしかし、俺にはスキルがあった。 ポリゴンスキルか勝手知ったる能力だな。 まずは石の板だ。 こんなの簡単に作れる。 よし、売ってしまえ。 俺のスキルはレベルアップして、アニメーション、ショップ、作成依頼と次々に開放されて行く。 俺はこれを駆使して成り上がってやるぞ。 路地裏から成りあがった俺は冒険者になり、商人になり、貴族になる。 そして王に。 超絶チートになるのは13話辺りからです。

処理中です...