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5・1 展覧会での再会
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年一度の展覧会は、出店でにぎわうお祭りのように盛況だった。
王宮の大ホールでは国内で生み出された薬や装飾具、魔法石などが出品されている。
どれも王国が認める検査をくぐり抜けた、間違いない品質のものばかりだ。
意外と多いのは食品で、魔力の上がるドリンクやケーキ、魔病予防のパンやフルーツなどが並ぶ。
それらは見た目も美しく、食品の区画にはよい香りが満ちている。
家族や友人とやってきた者たちが、和気あいあいとカフェスペースで楽しんでいる姿も多かった。
「これはすごい……」
魔道具の区画で、フェルト帽をかぶった恰幅のよい男が立ち止まっていた。
彼は展示されている、大人が両手で抱えるほどもある結晶を熱心に見つめている。
エルーシャの改良した魔力測定石が、台座の上で神秘的に浮いていた。
「なんと神々しい。この魔力測定石が、ディートハルト殿下の天恵を証明したのですね!」
展覧会開催の国王の挨拶では、王子の類まれなる天恵『変幻自在』の才能が明かされたばかりだった。
そのすばらしい天恵を誰もが喜び、王宮内は祝祭ムードとなっている。
それを証明したこの魔力測定石にも、注目が集まっていた。
「この魔力測定石で調べたところ、ディートハルト殿下は変化をしたとき、魔病も荒魔も履歴が残りません。つまり王子の変化は悪しき力の影響ではなく、彼の天恵です」
「すばらしい! この魔石があれば、今まで見落とされがちだった天恵者の発見も増えるでしょう……あっ」
男は魔石からエルーシャに視線を移すと、驚いたように息をのんだ。
「なんと、エルーシャ様ではありませんか。本当にお久しぶりで……」
男は一瞬だけ表情を曇らせた。
彼はロイエがよく利用している商人だ。
しかしその職業に似合わず、お金儲けより人情に厚いところがある。
そのためか商人は、ロイエが自分の店にエルーシャではない女性を連れてくるたび、気の毒に思っているらしい。
商人は気づかわしげな様子だったが、エルーシャは平然と挨拶した。
「ホルストさん、お久しぶりです。近々お会いしたかったので嬉しいです」
「私とですか?」
「はい。でもその話は後ほど。ホルストさんは商人ですし、展覧会で新しく取り扱う品を探されているのですか?」
「それもありますが、今日はエルーシャ様の侍女であるティアナ様に勧められて来ました。彼女からエルーシャ様の出品が、私の妻に必ず役立つと教えられまして。しかしエルーシャ様、ディートハルト殿下の天恵を証明してしまうような、すばらしい品を出されていたのですね!」
(ティアナは私が頼んだ通り、ホルストさんを連れてきてくれたようね。もうひとりも、そろそろ来てくれるでしょう)
年一度の展覧会は、出店でにぎわうお祭りのように盛況だった。
王宮の大ホールでは国内で生み出された薬や装飾具、魔法石などが出品されている。
どれも王国が認める検査をくぐり抜けた、間違いない品質のものばかりだ。
意外と多いのは食品で、魔力の上がるドリンクやケーキ、魔病予防のパンやフルーツなどが並ぶ。
それらは見た目も美しく、食品の区画にはよい香りが満ちている。
家族や友人とやってきた者たちが、和気あいあいとカフェスペースで楽しんでいる姿も多かった。
「これはすごい……」
魔道具の区画で、フェルト帽をかぶった恰幅のよい男が立ち止まっていた。
彼は展示されている、大人が両手で抱えるほどもある結晶を熱心に見つめている。
エルーシャの改良した魔力測定石が、台座の上で神秘的に浮いていた。
「なんと神々しい。この魔力測定石が、ディートハルト殿下の天恵を証明したのですね!」
展覧会開催の国王の挨拶では、王子の類まれなる天恵『変幻自在』の才能が明かされたばかりだった。
そのすばらしい天恵を誰もが喜び、王宮内は祝祭ムードとなっている。
それを証明したこの魔力測定石にも、注目が集まっていた。
「この魔力測定石で調べたところ、ディートハルト殿下は変化をしたとき、魔病も荒魔も履歴が残りません。つまり王子の変化は悪しき力の影響ではなく、彼の天恵です」
「すばらしい! この魔石があれば、今まで見落とされがちだった天恵者の発見も増えるでしょう……あっ」
男は魔石からエルーシャに視線を移すと、驚いたように息をのんだ。
「なんと、エルーシャ様ではありませんか。本当にお久しぶりで……」
男は一瞬だけ表情を曇らせた。
彼はロイエがよく利用している商人だ。
しかしその職業に似合わず、お金儲けより人情に厚いところがある。
そのためか商人は、ロイエが自分の店にエルーシャではない女性を連れてくるたび、気の毒に思っているらしい。
商人は気づかわしげな様子だったが、エルーシャは平然と挨拶した。
「ホルストさん、お久しぶりです。近々お会いしたかったので嬉しいです」
「私とですか?」
「はい。でもその話は後ほど。ホルストさんは商人ですし、展覧会で新しく取り扱う品を探されているのですか?」
「それもありますが、今日はエルーシャ様の侍女であるティアナ様に勧められて来ました。彼女からエルーシャ様の出品が、私の妻に必ず役立つと教えられまして。しかしエルーシャ様、ディートハルト殿下の天恵を証明してしまうような、すばらしい品を出されていたのですね!」
(ティアナは私が頼んだ通り、ホルストさんを連れてきてくれたようね。もうひとりも、そろそろ来てくれるでしょう)
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