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46 今日の目的
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「みなさまにお伝えしたいことがあります。今日お集まりいただいた婚約パーティーは、私の弟のアラン王子。そしてファオネア辺境伯のご令嬢、フレデリカ嬢のものです」
人々の間でさざなみのように驚きが広がる。
「えっ……? この婚約パーティーはミスティナ様とレイナルト様の婚約ではなかったのですか!?」
「そういえば招待状には、ファオネア辺境伯とミスティナ王女殿下、レイナルト皇太子殿下が主催する、と書かれていたわね……」
「つまり主催したのはその三人で、このパーティーはアラン王子とフレデリカ嬢の婚約のお披露目だった、ということか?」
会場の動揺の中、ミスティナは再び礼をした。
「私たちはヴィートン公爵夫妻がよからぬことを企てて、ローレットの国民やフレデリカ嬢が人質になる危険を避けたいと考えていました。そのためアラン王子が無事なこと、そしてフレデリカ嬢がファオネア辺境伯の娘だと知られることを、今まで伏せていたのです。みなさまにお伝えるすることが遅くなり、申し訳ありません」
ミスティナの人を助けるための判断を、責める者はいなかった。
それどころか誰もが気持ちよく驚かされたように、好意的な笑いが湧く。
「いやぁ……ヴィートン公爵だけでなく、我々もミスティナ様のてのひらで転がされていたとは! 痛快です!」
「なによりファオネア辺境伯のご令嬢と隣国の王子殿下の婚約は、本当に喜ばしい!」
「しかしレイナルト様とミスティナ様も、婚約はされているんですよね?」
レイナルトはその答えとして、ミスティナの肩を抱いた。
「俺たちの婚約が失くなるわけではない。婚約式は後日執り行う」
皇帝は厳かに、そして晴れやかに宣言する。
「改めて、未来のローレット王国を導くアラン王子、そしてファオネア辺境伯の娘であるフレデリカ嬢の婚約を祝福する!」
皇帝の宣言とともに、会場は祝いの言葉に包まれた。
「これはグレネイス帝国とローレット王国の新たな関係の第一歩ですね!」
「アラン王子! フレデリカ嬢! ファオネア辺境伯! おめでとうございます!」
アランは飛び交う祝言をにこやかに受ける。
一方フレデリカとファオネア辺境伯は、そっくりの表情で瞳を潤ませた。
「おめでとう、アラン。フレデリカ」
ミスティナの言葉に、アランの笑みが深くなる。
「姉上、ありがとう! あなたはいつだって、僕の自慢の姉上だね!」
「本当にそうだわ! お姉様、私の夢を全部叶えてくれてありがとう!」
フレデリカはアランに支えられるように肩を抱かれ、涙を流している。
そんな彼女の幸せそうな笑顔に、ミスティナは胸がいっぱいになった。
「ふふ。私の願いも叶ったわ。私は引き裂かれていたふたりに、幸せな恋をしてほしかっかたんだもの!」
「ええ、もちろん幸せよ! なにより最高なのは、私の大好きなお姉様が本当のお姉様になることかしら!!」
フレデリカはミスティナに思い切り抱きつく。
ふらつくミスティナの背を、レイナルトが受けとめた。
明るい笑い声が重なり合い、澄んだ空に響き渡る。
こうしてアランとフレデリカの引き裂かれていた想いは、ミスティナの願い通り、再び結びつけられることとなった。
婚約パーティーは盛大に続き、ローレット王国とグレネイス帝国の関係修復を祝う場ともなった。
***
婚約パーティーを経て、アランはローレット王国に戻った。
それをきっかけに、各地に散らばっていた国内の有識者や貴族たちが集まってくる。
彼らは今までヴィートン公爵に押さえつけられていたが、これからはアランと力を合わせて王国の立て直しを進める力となっていった。
――一年後には、フレデリカを王妃として迎える準備も順調です。姉上、何度も繰り返しますが、あなたのおかげです。僕とフレデリカを助けてくれてありがとう。
(よちよち歩きだったあーちゃんが、立派なお兄さんになって……)
ミスティナは弟から直筆の手紙が送られてくると、不覚にも涙腺が緩んだ。
そしてヴィートン公爵たちの暴挙により一時期は国交が途絶えていたローレット王国とグレネイス帝国は、ミスティナとレイナルト、フレデリカとアランが国を越えて婚約が結んだことで親近感が生まれ、互いに祝福ムードとなっていた。
国交も順調で、互いの国の繋がりは強まりつつある。
その一方、捕まった者たちの処分は次々と下されていった。
人々の間でさざなみのように驚きが広がる。
「えっ……? この婚約パーティーはミスティナ様とレイナルト様の婚約ではなかったのですか!?」
「そういえば招待状には、ファオネア辺境伯とミスティナ王女殿下、レイナルト皇太子殿下が主催する、と書かれていたわね……」
「つまり主催したのはその三人で、このパーティーはアラン王子とフレデリカ嬢の婚約のお披露目だった、ということか?」
会場の動揺の中、ミスティナは再び礼をした。
「私たちはヴィートン公爵夫妻がよからぬことを企てて、ローレットの国民やフレデリカ嬢が人質になる危険を避けたいと考えていました。そのためアラン王子が無事なこと、そしてフレデリカ嬢がファオネア辺境伯の娘だと知られることを、今まで伏せていたのです。みなさまにお伝えるすることが遅くなり、申し訳ありません」
ミスティナの人を助けるための判断を、責める者はいなかった。
それどころか誰もが気持ちよく驚かされたように、好意的な笑いが湧く。
「いやぁ……ヴィートン公爵だけでなく、我々もミスティナ様のてのひらで転がされていたとは! 痛快です!」
「なによりファオネア辺境伯のご令嬢と隣国の王子殿下の婚約は、本当に喜ばしい!」
「しかしレイナルト様とミスティナ様も、婚約はされているんですよね?」
レイナルトはその答えとして、ミスティナの肩を抱いた。
「俺たちの婚約が失くなるわけではない。婚約式は後日執り行う」
皇帝は厳かに、そして晴れやかに宣言する。
「改めて、未来のローレット王国を導くアラン王子、そしてファオネア辺境伯の娘であるフレデリカ嬢の婚約を祝福する!」
皇帝の宣言とともに、会場は祝いの言葉に包まれた。
「これはグレネイス帝国とローレット王国の新たな関係の第一歩ですね!」
「アラン王子! フレデリカ嬢! ファオネア辺境伯! おめでとうございます!」
アランは飛び交う祝言をにこやかに受ける。
一方フレデリカとファオネア辺境伯は、そっくりの表情で瞳を潤ませた。
「おめでとう、アラン。フレデリカ」
ミスティナの言葉に、アランの笑みが深くなる。
「姉上、ありがとう! あなたはいつだって、僕の自慢の姉上だね!」
「本当にそうだわ! お姉様、私の夢を全部叶えてくれてありがとう!」
フレデリカはアランに支えられるように肩を抱かれ、涙を流している。
そんな彼女の幸せそうな笑顔に、ミスティナは胸がいっぱいになった。
「ふふ。私の願いも叶ったわ。私は引き裂かれていたふたりに、幸せな恋をしてほしかっかたんだもの!」
「ええ、もちろん幸せよ! なにより最高なのは、私の大好きなお姉様が本当のお姉様になることかしら!!」
フレデリカはミスティナに思い切り抱きつく。
ふらつくミスティナの背を、レイナルトが受けとめた。
明るい笑い声が重なり合い、澄んだ空に響き渡る。
こうしてアランとフレデリカの引き裂かれていた想いは、ミスティナの願い通り、再び結びつけられることとなった。
婚約パーティーは盛大に続き、ローレット王国とグレネイス帝国の関係修復を祝う場ともなった。
***
婚約パーティーを経て、アランはローレット王国に戻った。
それをきっかけに、各地に散らばっていた国内の有識者や貴族たちが集まってくる。
彼らは今までヴィートン公爵に押さえつけられていたが、これからはアランと力を合わせて王国の立て直しを進める力となっていった。
――一年後には、フレデリカを王妃として迎える準備も順調です。姉上、何度も繰り返しますが、あなたのおかげです。僕とフレデリカを助けてくれてありがとう。
(よちよち歩きだったあーちゃんが、立派なお兄さんになって……)
ミスティナは弟から直筆の手紙が送られてくると、不覚にも涙腺が緩んだ。
そしてヴィートン公爵たちの暴挙により一時期は国交が途絶えていたローレット王国とグレネイス帝国は、ミスティナとレイナルト、フレデリカとアランが国を越えて婚約が結んだことで親近感が生まれ、互いに祝福ムードとなっていた。
国交も順調で、互いの国の繋がりは強まりつつある。
その一方、捕まった者たちの処分は次々と下されていった。
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