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58・アルノリスタの変革
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ティサリアは嘘をついたりごまかすのが苦手なため、自分の話はそこそこにクレイルドの方へと話を向ける。
するとクレイルドは世界的にも大国だと認められているアルノリスタ王国の現状や国の経済、周辺国との関係、軍事、教育や医療など様々な課題と、それに対してしていることをかいつまんで話してくれた。
ティサリアはケリスに言われた、「クレイルドが国をひっくり返す」という意味をはき違えていたことに、ようやく気付く。
(つ、つまり……クレイは物理的にアルノリスタの大地をひっくり返しているのではなく……)
「クレイは、アルノリスタ王国をより良くしようとしているのですね?」
「そうなればいいと思ってるよ。特に今後は騎竜の配備が鍵になってくるのは間違いないから。そのために国内の竜のイメージを変えて、できるだけ早く騎竜隊を編制したいんだ」
「騎竜隊……! すごくいいと思います!! 竜は本当に多才なので、色々な場面で活躍してくれそうです!」
「うん。だから何より早く竜のイメージを変えたくてね。王都周辺では騎竜を編制して欲しいと要望も増えていたし、今のところ順調に進んでいるよ」
「順調ということは……竜のイメージは良くなっているのですよね? アルノリスタには反竜派の方がいると聞いていたので、竜のイメージを変えることは難しいと思っていました」
「そうだとしても、やるよ」
クレイルドが意味深な笑みを浮かべたので、ティサリアの表情もますます明るくなった。
「楽しみです! クレイの努力が、もう実を結び始めているんですね!」
「うん。俺も色々動いてるけれど、周囲の人が竜について知ると興味を持って、協力的になってくれているのも大きいな。だけど竜のイメージを変えるのに一番影響があったのは、最近国内で二股の尾を持つ竜が目撃されるようになったことだと思う」
ティサリアはぎくりとする。
「そ、そうなんですか……」
「その竜はあちこちの町に害獣が現れると、追い払ってくれているらしいんだ。国内ではずいぶん有名になっていて、アルノリスタの守護竜、なんて呼ばれ始めているよ」
「そ、そうなんですね……」
「背には鎧兜を身にまとって姿がわからない、正体不明の竜騎士を乗せているらしい」
「そ、それはそれは……」
挙動不審なティサリアにクレイルドは微笑むと、手元のフォークを置いた。
「ティサリア、ごちそうさま。今までで一番おいしいパウンドケーキだったよ」
ティサリアは終始そわそわしていたが、自分とヴァルドラの話題が終わると胸をなで下ろした。
「お口に合ったようで、よかったです。もしよろしければ、また作りますので!」
「本当? 楽しみだな」
クレイルドが立ち上がり、ティサリアは別れの気配を感じる。
(クレイと一緒にいる時間は、あっという間だな……)
押し寄せてくるさびしさをなだめながら、ティサリアも立ち上がった。
「今日は来てくれてありがとうございます。あなたが国を大切に想う気持ちはわかりましたが、無理をして倒れたりしたら心配なので、きちんとお休みもとってください」
「ありがとう。だけどこの国に来てもらうのなら、住みやすい方がいいだろ? つい夢中になってね」
「あっ。先ほど移住者についてのお話もされていましたよね」
「それもあるけれど、まずは君のことだよ」
「……私、ですか?」
「そうだよ。先ほどアルノリスタ王国の現状に対する変革について、ティサリアの父君に……エイルベイズ伯爵にも説明をして納得してもらえたよ。伯爵は、あとはティサリアの気持ちに任せるからと言ってくださった」
(私の気持ち……?)
父の告げた意味に気づいて、ティサリアは呆然と立ち尽くす。
クレイルドは優雅な所作で彼女のそばに寄り、跪いてティサリアの手を取った。
するとクレイルドは世界的にも大国だと認められているアルノリスタ王国の現状や国の経済、周辺国との関係、軍事、教育や医療など様々な課題と、それに対してしていることをかいつまんで話してくれた。
ティサリアはケリスに言われた、「クレイルドが国をひっくり返す」という意味をはき違えていたことに、ようやく気付く。
(つ、つまり……クレイは物理的にアルノリスタの大地をひっくり返しているのではなく……)
「クレイは、アルノリスタ王国をより良くしようとしているのですね?」
「そうなればいいと思ってるよ。特に今後は騎竜の配備が鍵になってくるのは間違いないから。そのために国内の竜のイメージを変えて、できるだけ早く騎竜隊を編制したいんだ」
「騎竜隊……! すごくいいと思います!! 竜は本当に多才なので、色々な場面で活躍してくれそうです!」
「うん。だから何より早く竜のイメージを変えたくてね。王都周辺では騎竜を編制して欲しいと要望も増えていたし、今のところ順調に進んでいるよ」
「順調ということは……竜のイメージは良くなっているのですよね? アルノリスタには反竜派の方がいると聞いていたので、竜のイメージを変えることは難しいと思っていました」
「そうだとしても、やるよ」
クレイルドが意味深な笑みを浮かべたので、ティサリアの表情もますます明るくなった。
「楽しみです! クレイの努力が、もう実を結び始めているんですね!」
「うん。俺も色々動いてるけれど、周囲の人が竜について知ると興味を持って、協力的になってくれているのも大きいな。だけど竜のイメージを変えるのに一番影響があったのは、最近国内で二股の尾を持つ竜が目撃されるようになったことだと思う」
ティサリアはぎくりとする。
「そ、そうなんですか……」
「その竜はあちこちの町に害獣が現れると、追い払ってくれているらしいんだ。国内ではずいぶん有名になっていて、アルノリスタの守護竜、なんて呼ばれ始めているよ」
「そ、そうなんですね……」
「背には鎧兜を身にまとって姿がわからない、正体不明の竜騎士を乗せているらしい」
「そ、それはそれは……」
挙動不審なティサリアにクレイルドは微笑むと、手元のフォークを置いた。
「ティサリア、ごちそうさま。今までで一番おいしいパウンドケーキだったよ」
ティサリアは終始そわそわしていたが、自分とヴァルドラの話題が終わると胸をなで下ろした。
「お口に合ったようで、よかったです。もしよろしければ、また作りますので!」
「本当? 楽しみだな」
クレイルドが立ち上がり、ティサリアは別れの気配を感じる。
(クレイと一緒にいる時間は、あっという間だな……)
押し寄せてくるさびしさをなだめながら、ティサリアも立ち上がった。
「今日は来てくれてありがとうございます。あなたが国を大切に想う気持ちはわかりましたが、無理をして倒れたりしたら心配なので、きちんとお休みもとってください」
「ありがとう。だけどこの国に来てもらうのなら、住みやすい方がいいだろ? つい夢中になってね」
「あっ。先ほど移住者についてのお話もされていましたよね」
「それもあるけれど、まずは君のことだよ」
「……私、ですか?」
「そうだよ。先ほどアルノリスタ王国の現状に対する変革について、ティサリアの父君に……エイルベイズ伯爵にも説明をして納得してもらえたよ。伯爵は、あとはティサリアの気持ちに任せるからと言ってくださった」
(私の気持ち……?)
父の告げた意味に気づいて、ティサリアは呆然と立ち尽くす。
クレイルドは優雅な所作で彼女のそばに寄り、跪いてティサリアの手を取った。
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