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56・自分の立場をわかっているのか

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「姐さん! 俺は気前が良くて美味しいものをくれる姐さんについて行く覚悟を決めた!」

「俺もだ!」

 ……姐さんって、私のことかしら?

「私はリシアよ。リシアでいいわ」

「わかったぜリシア姐さん!」

「リシア姐さん、俺たちはトムとサムだ!」

 わかっているのかよくわからないけれど、トムとサムという名らしい男たちは喜んでくれているようなので、とりあえず良かったわ。

 ただフロイデンだけが、困惑した様子で私を見つめている。

「どうして君は、僕たちにそこまで……」

「理由がいるの?」

 何気なく出たその言葉は、私がレオルと会ったばかりの頃、親切を受け続けて戸惑っていた時に返されたものと似ている気がして、つい笑ってしまった。

「彼が好きだから。大切にしたいの」

 レオルと積み重ねてきたたくさんの出来事が、今の私を作っている。

「レオルは関わりたくなさそうだけれど、あなたは昔のお友達なのでしょう? だけど今は、そっとしておいて欲しいのよ。あなたたちが来てからレオルは悩んでいるみたいだから、本当は私、あなた達の存在を消す必要がありそうだと思っていたのだけれど」

「何度も聞くが、君は自分の立場をわかっているのか?」

「人質でしょう? 人質として過ごしているうちに、あなた達のことも色々分かって考えが変わったのよ。レオルの昔のことはよく知らないけれど、あなたがレオルと仲良くしたいのなら、出来る限り協力してもいいわ」

「君は、アドレの子どもの頃のことを知らないのか」

「ええ、そうね」

「……アドレは、カシュラ王国の前国王の息子で」

「そういう話は遠慮するわ。レオルが隠しているんだもの」

「真面目か」

「そうかしら? 私はただ、レオルに嫌な思いをさせるより、喜んでもらえることをしたいだけよ」

 自信を持って伝えると、フロイデンは少し気の抜けた顔をした。

「アドレは……幸せに暮らしているようだな」

「そう思うなら、あなた達も協力してちょうだい。それとちょっと待って。渡しきれていないものが……」

 収納箱の中で、まだ竹かごにいくつ分か残っているはずの大量の携帯ビスケットを探していると、見るだけで呪われそうなケーキを出してしまい、私は悲鳴を上げかける。

 ディノの顔を作ろうとしたはずなのに……なぜ心臓に悪い見た目になったのかしら。

 誰にも見られたくないのでそっとしまおうとすると、フロイデンが静かに言った。

「君のその髪飾り、誰の物か知っているか?」

「ええ、レオルのお姉様の……」

 と言うことは、アドレという名前はレオルの昔の名前だから……。

 つまり、アドレのお姉様は、レオルのお姉様よね?

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