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8 旅立ちは今すぐに
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溶けかけた雪道を振り返ると、マリスヒル伯爵家の追手が来る気配はありませんでした。
私が頼んでいた以上に、動物たちはうまく足止めしてくれているようです。
これで私は養家……いえ、もう家族ではないマリスヒル伯爵家と絶縁できました。
今ごろライハント王子から私を高値で買うと言われて驚愕しているはずです。
私は関わらないように、さっさと旅立つことにします。
とりあえずマリスヒル伯爵領から出て、なにも持たなくても受け入れてもらえる、住み込みの仕事を見つけたいです。
紹介状がないので高望みはできませんが、動物がたくさん暮らしている地域で暮らせたら楽しそうです!
一刻ほど歩くと、湖の点在する白亜の森にたどり着きました。
春は近づいていても、木々の日陰になった地面はまだ雪に覆われています。
針葉樹林の上空を見上げると、百羽を超える白い大鳥が翼を広げて旋回していました。
圧巻するような上空の鳥たちを見上げていると、その内の一羽が優美に滑空して私の前に舞い降りました。
『誰かと思ったらリシェラじゃない!』
白亜鳥の長は、美しい純白の翼をしなやかにたたみました。
『会えて嬉しいわ! そろそろ暖かくなってきたから、私たちは明日にでも北のブリザーイェットへ戻ろうと相談していたの。また来年来るから元気でね』
「白亜鳥さん。そのことですが、今すぐ出立することはできますか?」
巻き戻る前の記憶では、私が成人した誕生日の夜――つまり今夜、この森にいる白亜鳥はすべて密猟者に乱獲されます。
翌日、私は動物たちの不条理な死のニュースを聞き、無力な自分に打ちひしがれていました。
そこにライハントが王子が来て、「君と婚約したい。君の力で動物たちを救うために力を貸してくれ」という言葉に騙されてしまいます。
実際はライハント王子が私に動物を助けたいと思わせるため、白亜鳥の乱獲を首謀したというのに……。
でも今から旅立てば、ここにいるすべての白亜鳥が襲われることはありません。
「今夜、白亜鳥さんの羽毛を狙う人間が来るはずなんです」
『そうだったの!? リシェラ、教えてくれてありがとう。さっそく旅立つことにするわ』
「それともうひとつ、白亜鳥さんにお願いがあるんです。私も一緒に連れて行ってもらえませんか?」
彼らの向かう地は隣国のティラジア王国の最北領、私の故郷であるブリザーイエットです。
あの地は動物への偏見が少なかった気がしますし、トナカイや雪ウサギなど懐かしい動物たちと会えるはずです。
そこで住み込みの仕事を探したいと思います。
『リシェラが一緒に来てくれるなら最高に嬉しいわ! みんなに事情を話して出立しましょう。 さぁ、私の背中に乗って!』
「ありがとうございます!」
私は大鳥の背に乗って顔を上げると、目を疑います。
頭上に広がる木々の梢に、人影がよぎったように見えたのですが……えっ!?
私が頼んでいた以上に、動物たちはうまく足止めしてくれているようです。
これで私は養家……いえ、もう家族ではないマリスヒル伯爵家と絶縁できました。
今ごろライハント王子から私を高値で買うと言われて驚愕しているはずです。
私は関わらないように、さっさと旅立つことにします。
とりあえずマリスヒル伯爵領から出て、なにも持たなくても受け入れてもらえる、住み込みの仕事を見つけたいです。
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一刻ほど歩くと、湖の点在する白亜の森にたどり着きました。
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圧巻するような上空の鳥たちを見上げていると、その内の一羽が優美に滑空して私の前に舞い降りました。
『誰かと思ったらリシェラじゃない!』
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『会えて嬉しいわ! そろそろ暖かくなってきたから、私たちは明日にでも北のブリザーイェットへ戻ろうと相談していたの。また来年来るから元気でね』
「白亜鳥さん。そのことですが、今すぐ出立することはできますか?」
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翌日、私は動物たちの不条理な死のニュースを聞き、無力な自分に打ちひしがれていました。
そこにライハントが王子が来て、「君と婚約したい。君の力で動物たちを救うために力を貸してくれ」という言葉に騙されてしまいます。
実際はライハント王子が私に動物を助けたいと思わせるため、白亜鳥の乱獲を首謀したというのに……。
でも今から旅立てば、ここにいるすべての白亜鳥が襲われることはありません。
「今夜、白亜鳥さんの羽毛を狙う人間が来るはずなんです」
『そうだったの!? リシェラ、教えてくれてありがとう。さっそく旅立つことにするわ』
「それともうひとつ、白亜鳥さんにお願いがあるんです。私も一緒に連れて行ってもらえませんか?」
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そこで住み込みの仕事を探したいと思います。
『リシェラが一緒に来てくれるなら最高に嬉しいわ! みんなに事情を話して出立しましょう。 さぁ、私の背中に乗って!』
「ありがとうございます!」
私は大鳥の背に乗って顔を上げると、目を疑います。
頭上に広がる木々の梢に、人影がよぎったように見えたのですが……えっ!?
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