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7・思わぬ再会

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 奴隷を買うと、おじいさんとケヴィンさんからとても感謝された。

 私は治療や食事に使えそうな品物をたくさんもらって、眠そうにしているコリンナとお別れをする。

 それからひとつだけ知っている転移陣の魔符号パスワードを利用して、とある山の麓にある小屋へ移動した。

 私は直感している。

 この衰弱しきった青年は、前世の私がカイと名付けたあの野良猫と同じ魂を持っている。

 私の前世の名を呼んだ彼はきっと、カイの生まれ変わりだ。

「待って。今はひとりで動ける身体じゃないよ」

 治療の準備をしようと少し目を離した隙に、寝台に横たわらせたばかりの青年が起き上がろうとしている。

 そんなひどい状態で、一体どこへ行くつもりだろう。

 私は慌てて駆け寄り、彼を押し留めた。

 死にかけているとは思えない威圧感と眼差しが、研ぎ澄まされた刃物のように私へ向く。

「俺に触るな」

「安心して。ここは私の知り合いの小屋で、自由に使っていいと言われているの。これからあなたの治療をするから、今は体を休めていて。行きたいところがあるなら、なおさら」

「そんなもの、ない」

「でもこんな状態で、どこへ行くつもりだったの?」

「さぁな」

 そしてまた立ち上がろうとするので、私は慌ててその身を抑えた。

「触るな」

「待って、まず治療をしてから」

「無理だ」

「治すに決まっているでしょう」

 当然のことを言うと、青年は言葉を詰まらせた。

 相変わらず不調を見せないけれど、つぶやく低い声はかすれている。

「……お前には悪いことをした」

「え?」

「俺はもう、死んで毒を巻き散らすことしかできない。お前は自分の危険を顧みず、俺を人里から遠ざけてくれた。これ以上、迷惑をかけるつもりは……」

 ああ、そっか。

 彼が触られるのを嫌がったり、この場から立ち去ろうとしている理由は……。

 毒が回って体がつらいはずなのに、自分より私のことを心配しているらしい。

「迷惑なことなんて、ひとつもないのに。あなたはただ、すごく……」

 私の胸の底がうずうずしてくる。

 自分のことより相手のことを守ろうとするなんて、やっぱりカイだ。

「すごく、かわいい……」

「聞き間違いだと思うが」

「すごくかわいい」

「……それはともかく俺に触るな。お前に毒がうつる」

 青年は前世の黒猫だったときと同じように、触られたくない意思表示として身体をひねって拒否した。

 でも手で振り払ったり、私に乱暴な振る舞いもしない。

 そんなところもカイらしくて、ちょっとした仕草まで懐かしかった。

「ありがとう。私のことを心配してくれて」

 本当は好きなだけ撫でたり抱きしめたりしたいけど、かろうじて思い留まる。

 もう彼は黒猫のカイではなくて、私を全く知らない人として生まれ変わっている。

 さびしさもあるけれど、会えたのはやっぱり嬉しかった。

「あなた、名前は?」

「覚えていない」

「それって……もしかして、記憶がないの?」

「気づいたときは奴隷として商会にいた。その前のことは……」

 まさか記憶喪失だったなんて。




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