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32・これは不思議な夢の中?

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 これは不思議な夢の中?

 私の周りには怖い顔をしたいかつい騎士と、細身の文官が数人いる。

 彼らはクッションに寝ていた白猫の私をぐるりと囲んで、小声で言い合いをしていた。

 そういえば騎士と文官の仲がいまいちだって、さっき聞いたような……。

 なんか揉めてます?

 寝ぼけた目をしばたいていると、みんなは目覚めた私に気づいて覗き込んできた。

 そのうちのひとり、いかにも百戦錬磨の強面のお兄さん騎士が、険しい表情で喉をごくりと鳴らした。

「ヴァレリーちゃん、お元気ですかにゃん?」

「に、にゃーん……?」

「「「おおおーっ!!」」」

 寝ぼけて返事をすると、ものすごい盛り上がって目が覚めた。

 何事かわからないまま見回す。

 大きいお兄さんも小さいおじさんも、私と目が合えばにっこり笑顔を返してくれた。

「噂には聞いていたが、不器用な鳴き方がかわいすぎる!!」

「小さくて、ふわっふわで、目の保養感がたまらんっ!」

「でも触ったらダメらしい……ヴァレリーちゃん、せめてこっちを見てくれーっ!!」

 白猫の私を前に、みんなはしゃいでいる。

 もちろんカイと過ごしたことがある私も、そういう気持ちはよくわかるので、つい……。

 名前を呼ばれると目を向けたり、しっぽを振ったり、寝そべったり。

 なぜか好評な猫の鳴き声を披露すれば、歓声まで巻き起こった。

 私が目覚めたときは不穏な気配だった騎士と文官だけど、いつの間にか猫について熱く語りだしている。

「確か……ここは俺の専用個室のはずだったな?」

 戻ってきた魔帝が戸惑うくらい、いつの間にか執務室はたくさんの人で溢れかえっていた。





 *

 就寝前、私は白猫の姿で特等席の窓の縁に飛び乗り、帝都の街を眺める。

 ディルは湯あみを終えてから戻ってくると、愛でられ係の一件について謝ってきた。

「執務室を占拠してしていたのは、私の方だったと思うけれど」

「いや、占拠していたのはレナではなく、白猫を見にきた俺の配下たちだろう。お前に不愉快な思いをさせてすまなかった」

「そんなことはないよ。みんな猫好きで驚いたけど、なんだかんだで楽しかったから。ディルが室内に入ることすらできないほど盛況だったのは、予想外だったけど」

「ああ。ハーロルトも驚いていたが、あんな短い間で業種間の垣根が取り払われたかのようだ。居合わせた者たちが、あの後も親しげに話しているらしい」

 そういえばはじめは冷めた視線を送り合っていた騎士と文官たちが、猫で和んでからは別の話題に移るくらい、話も弾んでいた。

「他者の感情的な問題は、理屈ではなかなか改善するのも難しい。白猫のヴァレリーの功績に、ハーロルトも俺も感謝している」

 




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