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第二章『生き写しの少女とゴーストの未練』

プロローグ

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第二章『生き写しの少女とゴーストの未練』


 プロローグ


 ギリムマギという土地に、堅牢な石造りの屋敷があった。塀や柵はなく、ただ屋敷だけが、ぽつりと建てられていた。
 周囲は荒れ地になっていて、他の家もない。街からは徒歩で半日という距離だが、そこを訪れる者は、ほとんどいなかった。
 真四角をした三階建ての屋敷の壁には、窓ガラスが填められていた。それだけで屋敷の主が、かなりの権力者であることがわかる。
 窓からはカーテンなどの装飾品は見えず、また人影もまったく映らない。だからといって無人というわけではない。
 ただ、その証拠となるのが、屋敷の周囲に散らばった真新しい生ゴミというのが、どこか物悲しくもあった。

 ――ある夜。
 その屋敷の三階で、激しい光が何度も明滅した。
 光の明滅が終わったあと、その部屋の中ではムッとした血臭が漂っていた。
 部屋にあるのは、太陽と月、それに蛇を象徴とするオブジェクトが置かれた、白い布で覆われた台が一つだけである。
 その台の前で、白いローブに身を包んだ青年が絶命していた。胸元を、なにかに突き刺されたような跡があるが、その凶器はどこにも見当たらない。
 血だまりの中に横たわった青年の亡骸の前には、漆黒のローブに身を包んだ、大柄な男が立っていた。
 致命傷を負ったのか、染みが広がっていく腹部を右手で押さえ、左腕全体で、しがみつくように杖へと寄りかかっていた。
 杖の先端には、双眸に水晶が填め込まれた、小さな髑髏の飾りがある。その杖を介して、漆黒のローブの男は、周囲の光景を視ていた。


「……拙いな」


 男は擦れた声で呟くと、転移のための呪文を唱え始めた。
 それから数分後、自分の住まいへと転移を終えた男は、儀式の為だろうか、床に描かれた魔方陣に、棚から取り出した紫水晶の欠片を置いた。
 血まみれの紫水晶に手を添えながら、男は呪文を唱え始めた。途切れ途切れの詠唱が終わったとき、男は事切れていた。
 魔方陣に、男の腹部から流れる血が広がってく。
 その様子を眺めていた薄ボンヤリとした影が、音も立てずに男の住まいから去って行った。

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本作を読んで頂き、誠にありがとうございます!

わたなべ ゆたか です。

第二章始めましたが……今回のプロローグは、短めです。しかも主人公が出ない奴。

七ー八月の更新は、ゆっくりめになると思います。

書き溜めが……まだちょっと(汗

少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

次回もよろしくお願いします!
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