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第5章 父の地元は温泉街
第15話 お尻の奥まで川遊び
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自転車は、ガタガタした芝生の上を走っていた。川に近い斜面であるここは、道路と違って滑りやすい。
もっとも、滑らない理由がきちんとある。それは雪が積もっている事だ。おかげでタイヤはザックリと深く沈み、雪によって固定されている。
……そのため、スピードも全く上がらない。ギアを一番軽くしているのに、それでも抵抗は大きいのだ。なんならタイヤが回らなくなるシーンも多々ある。
「んっ……んんんー」
そんな中を、みのりは全裸で走っていた。先ほどまで温泉で火照っていた身体も、すっかり冷めてしまっている。転んだ時に頭まで濡れてしまったが、その髪も外気に触れて凍りついていた。
下の芝生が不安定なのか、それとも雪の密度が一定ではないのか……おそらく両方の原因があるのだろう。自転車は大きく縦に揺れて、前輪を跳ね上げた後、後輪も同じくらい跳ね上げる。
上下に突き上げられて、前後に揺さぶられる中、みのりはなるべく体重をサドルとペダルに分散していた。
(この車体のホイールベースとジオメトリなら、サドルがもっとも重心の中央になっているはず……んっ。くはぁん!)
当然、そんなことをしたら性器に刺激があるものだ。中途半端にエッチな行為をしたため、より敏感になっている。
前輪が段差に乗ると、大きくサドルが傾いて、
「んっ……んんんん」
ぷっくりと膨らんだ種に、冷たい革製サドルが当たる。
そのまま前輪が段差を越えると、
「あんっ!」
今度は割れ目を守るひだが、ゴツンと強くぶつけられる。
続いて、後輪が段差に乗り上げる。
「――っ」
ぐんぐんとサドルが持ち上がり、みのりのお尻も上がって来た。この後どうなるのか、自転車が好きなみのりには分かっている。最大の衝撃が来るのだ。
段差を車輪が完全に乗り切った時、
ガタン!
「やっ!くひゃぁあん!」
お尻の肉にも腰の骨にも響くほど、大きな衝撃が彼女を襲う。軽くしなる鞭などのスパンキングや、体重の乗らない平手打ちとは全く異なる衝撃だ。本人の体重が、そのまま硬いサドルに打ち付けられる。
……立って乗ればいいのでは?と気づく人もいるかもしれないが、それをしないのは彼女がひとえに変態だからである。
(それにしても、シン兄ちゃん、いい自転車に乗ってるなぁ)
と、みのりは感心する。安っぽく、また古臭い自転車ではあるが、それは一昔前に流行ったタイプだった。
ノーパンクタイヤと呼ばれる、空気の代わりにウレタンを入れたタイヤ。そして42本のスポークで支えられた頑丈な24インチホイール。
タイヤがすり減ったときに交換部品が高くつくのと、交換できる技術と工具のある店を探すのが難しいというデメリットはあるが、それでも頑丈な車体だ。何をしてもほとんど壊れない。……もっとも、乗り心地は最悪だが。
「振動が凄い……んんんっ。ペダルが重いよぉー。ああんっ!」
まったくクッション性のないタイヤは、同じく乗り心地など考えられていないフレームと、頑丈なら何でもいいと言わんばかりのホイールのせいで非常に揺れる。それが常にみのりの股間を刺激し続けるのだ。
例えて言うなら、電気マッサージ器を押し当てられた上から、金属バットで叩かれるような痛みだ。それが彼女の股間をしっかりと捉える。
「やっ、あああっ……と、止まっちゃった」
ついに前輪が雪に深く突き刺さり、車体が動かなくなってしまった。こうなるたびに彼女は自転車を降りて、車体を持ち上げて雪を払う。
全裸の彼女は、素足で雪に降り立ち、素手で雪を払いのけるしかない。その指先は変色し、真っ赤な肌に青紫色の影を落としていた。
こうなると、もういっそ自転車ではなく歩いてきた方が早かったとさえ思えるが、それでもみのりはまだ、川の下流を自転車で目指す。
(シン兄ちゃんが待ってるんだ。早くお尻の穴を洗って、戻らないと)
ちらちらと降る雪は、彼女の身体の上に積もり始めていた。要するに、体温が肌の表面を温められていないのだ。白い肌に乗った雪の結晶は、時間をかけてゆっくりと溶けていく。それが溶け切る前に、次の雪の結晶が肌の上に乗る。
その冷たさも、頭のスイッチがエッチに切り替わっている時は、気持ちいい刺激に感じるから不思議だ。じんわりとした痛みと痺れが、まるで電気の流れる極細の針を刺したように彼女をなぶっていく。
特に何もしていないのに、突然ママチャリの前輪が止まった。ブレーキが今までにない勢いでロックする。
「きゃあっ!?」
車体から投げ出されたみのりは、そのまま横に転倒した。雪の積もった斜面を、ごろごろと転がっていく。
ざぶーん……
転がった勢いのまま、彼女は川に突っ込んでいった。岸の方は浅いが、水は冷たい。表面の氷が割れて、緩やかに彼女の身体にまとわりつく。
「あっ、冷たっ!?ってか、自転車。自転車は……あった」
すぐに水から上がって、最初にするのは自転車の心配だ。いったい何があってフロントブレーキがロックしたのか、それを調べる必要がある。
とはいえ、すぐに原因は分かった。
「なーんだ。雪が詰まっただけか」
ホイールに着雪したせいで、ブレーキパッドに固まった雪が付いていた。それが固くなって、最終的に詰まったのだろう。
ママチャリ自体はこういった場所での運用を想定されていないため、当然と言えば当然の結果である。
「んしょ。んっ、しょっ!」
詰まった雪を手で掻き出し、再びホイールを空転させてみる。今度は回った。ブレーキパッドもずれていないらしい。
「よかったぁ。……それにしても、凄いところまで来ちゃったなぁ」
みのりが辿り着いたのは、川の流れを遅くするためのコンクリートブロックが敷かれている場所だ。ブロック水制と言うらしい。
温泉街のある通りから少し離れて、この辺りは住宅地になっている。みのりが今いる川の少し下流には、広い歩道付きの橋が架かっていた。
(だ、ダメ、だよね。こんな格好で、道路まで行ったら……)
地元ではよくやる全裸散歩だが、ここは土地勘のない場所だ。道の交通量も、周辺の状況も分からない。周囲の住民がどんな生活サイクルを送っているかさえ、みのりには予想できないのだ。
つまり、安全が確保できない。
誰に見つかるか、あるいは誰にも見つからないのか、それさえも分からないのだ。
(で、でも、ちょっと水遊びしすぎて、身体も冷えてきたし……ちょっとくらいなら、許されるよね。仕方ないよね?)
誰に言い訳しているかも分からないまま、みのりはそっと川を出た。そのまま土手を歩き、頭上に見えていた橋を目指す。
自分の中の好奇心に逆らえない。
「わぁ……」
温泉街とは違う、どこにでもありそうな街並み。民家の窓を見れば、ちらほらと明かりが点いている。橋のそばにはコンビニもあった。どこにでもある有名チェーン店だ。
「すごい……これはちょっと怖いかも」
除雪で固められた真っ黒な雪を、裸足でそっと踏みしめる。土手の斜面に降り積もった雪と違って、こちらは硬くて滑りやすい。
しかし、あまり雪の降らない地域に住んでいたみのりに、そんな知識は無い。
「きゃああっ!?」
いとも簡単に滑り、そのまま地面にしりもちをついてしまった。
「いたたたた……ん?」
ザッザッザッザッ……
どこからか、足音が聞こえてくる。
「だ、大丈夫ですか……わぁ!?」
男性の声だった。コンビニ帰りなのだろう。そのコンビニの袋を持った男性だ。
しっかりとダウンジャケットを着こんで、ちょっとコンビニ程度の用事でもニット帽まで被った男性。年齢は30代くらいだろう。少し細身の人だ。
「え、えっと……」
対するみのりは、全裸で水遊びしていた直後という意味の分からない恰好のまま、降ってきた雪を頭の上に積もらせている。それを見た男性がどう反応したらいいのか分からなくなるのも必然だろう。
(ど、どうしよう。見られた……ううん。見てもらっちゃった。でも、このままじゃ逃げられないし、知らない人と話すの、苦手だし)
と、みのりも困った状態になる。
全身に施した卑猥な落書き。その中でも問題になるのが背中だ。個人情報をガッツリ書いてしまったこの背中を、逃げる時に見せるわけにはいかない。
つまり、背を向けることが出来ないのだが、その状況でこうなったら、
「あ、えっと、いい天気ですね」
向かい合って会話をするしかない。転んだままの、脚をおっぴろげて地べたに座った間抜けな格好で。
「い、いい天気ですか? 雪、降ってますけど」
「あ。えっとえっと……私、雪が降らない町に住んでるので、こういう雪景色って、いい天気だなぁって思って」
「そ、そうなんですか。あの、寒くないんですか?」
「さ、寒いですけど、あのっ、雪が好きなので、大丈夫です。全身で浴びたくなっちゃって――つい、全裸で……」
どんな言い訳だよ。と、みのり本人でさえ心の中でツッコミを入れる。相手もさぞ困惑していることだろう。それでも脳死トークに付き合ってくれているのは、きっとお互いにどうしたらいいか分からないからだ。
(えっと、私、いま自分で何言ったっけ?……えっと、雪が大好きだから、全裸でお散歩する女の子、って設定になってるんだっけ?ああ、でも体中に落書きしたままなのは、どう説明しよう?)
混乱しながらも、開きっぱなしの股を両手で押さえ、もじもじと指を擦り合わせる。一応、股間は隠したい。
それに、
くちゅ、くちゅ……ぴくん!
知らない人に見られながら、ちゃっかり股間を弄るのが気持ちいい。
(ど、どうしよう?こんな近くで見られてるんだもん。オナニーしてるのも気づかれちゃってるよね)
目の前の男性も、その様子をじっと見ていた。どこかへ行ってくれる気配もないし、みのりから視線を外しもしない。
つまり、その男性も嫌な気持ちじゃないのだろう。
そう判断したみのりは、またしても大胆な行動に出てしまう。
「え、えっと。お願いがあるんですけど、私のここに、おちんぽ入れてくれませんか?」
Y字バランスのような姿勢を取って、指でしっかり広げて見せる。もう身体がうずいて仕方がないのだ。この際だから誰でもいい。
「い、いいんですか?」
「はい。この場で良ければ」
「いいですよ。この時間、ここって滅多に人が来ないから」
その言葉と、そっと差し出された男の恥部を見ながら、
(ああ、よかった。本当にもうこれ以上、人は来ないみたい)
みのりはそんな安心感と、これから知らない人と交わるスリルを、両方とも感じた。
「あ、あんっ……」
片足を大きく上げたみのりを、斜め下から突き上げる肉棒。その勢いに押されて、みのりは後ろに倒れ込んだ。
彼女の背中を、除雪車に固められた雪と、その奥に隠されたガードレールが支える。
(これなら、背中の個人情報も見られないね。……ふわっ!)
急斜面になった雪に押し付けられて、一度は浮き上がりかけた身体。それが重力に引かれて、斜め前へと滑り降りる。
そこに待ち受けているのは、もちろん男性の身体だ。
「あ、入った。うわーっ。気持ちいい!」
男性が喜ぶ。まだ奥までしっかり入ったわけじゃないけど、そのまま飛び上がってしまいそうなほど嬉しそうだ。
しかし、また抜けてしまった。
「あ……」
哀しそうな顔をする男性を見て、みのりはふと思う。なぜそんなことを考えてしまったのか、みのりにも分からないのだが、
「もしかして、童貞さん……ですか?」
違ってたら失礼だと思いつつも――あるいは正解だったらそれはそれで失礼だと思いつつも、どっちに転んでも相手を怒らせそうな質問を、つい口にしてしまう。
しかし、相手の男性は優しかった。
「あ、はい。バキバキ童貞です。初めてがこんな可愛い痴女さんで、とても緊張しています」
そう笑顔で答えてくれる。機嫌を悪くしたような雰囲気は無い。
むしろ……
(か、可愛い、痴女……)
褒めてもらえた。ちなみに、『痴女』の部分も含めて褒め言葉である。
抜けてしまった刀を、再び鞘へと挿入する。男性の刀は反り返りが強く、入れるまでの角度に苦戦した。
お互い立ったままの姿勢で、向かい合った状態だ。みのりは片足だけ上げても仕方ないと、思い切って両足を上げて抱き着く。
「んんっ」
「おお、だいしゅきホールドきたぁ!」
「え、えへへへ。つい、しちゃいました」
男性のぷよぷよしたお腹と、硬く締まった雪の間に挟まれる。みのりのお腹は彼のごわごわしたコートに支えられて、背中はスルスルと滑る氷のような雪塊に押される。
男性が腰を突き上げると、みのりの身体は跳ね上がり、雪の上を滑って元の位置に戻る。これなら、思う存分腰を振ってもらえる。
「き、キスしても、いいですか?」
男性から、そんなことを訊かれる。こんな町中で本番までしておいて、今更だとは思わない。
みのりにとっても、キスはちょっと特別だ。セックスとどっちが大事とか、どっちが軽いとかじゃない。比べられないものだ。
だけど、
「いいですよ。ちゅー、してください」
みのりの唇が、相手の唇と重なる。
その唇が離れるまで、体感では数秒ほどだった。実際には1秒だったかもしれない。
「あ……え?もう終わりですか?」
「え?」
不思議そうにする男。というのも、彼からしたら何がいけなかったのか分からない。
「えっと、じゃあ……私、もっとすごいキス、していいですか?」
「もっと、すごいキス……」
「うん。恋人でもあんまりしないような、気持ちいいキスです」
そっと抱き着いたみのりが、彼の耳元で囁く。誰にも見せられないような、悪い表情を浮かべながら、
「生でエッチしたまま、気持ちいいキス、です。私の身体がうずいて、赤ちゃん作りたくなっちゃう。そんなキス、教えていいですか?」
少女の可憐さと、大人の魅惑を持ち合わせる声。その声を耳元で、白い吐息と共に受けてしまった男は、その場で固まってしまった。
「うっ!」
「にゃふふ。いま、おちんちんで頷きましたね?じゃあ、いいって事で」
「いや、今のはゾクっとしたから、つい反応しちゃっただけで……んんっ!?」
自分の膣内で跳ねたそれを、相手の同意とみなす。上の口は違うことを言いたそうだったが、それもみのりは自分の口で封じた。
「んっ。んんん」
彼女の舌が入ってきて、男性の上あごを舐めるように動く。そのまま前歯の裏へと、何度か擦られていく。
口が閉じられないため、溜まった唾液を飲み込めない。それらは少しずつ、みのりの口の中に流れ込んでいく。じんわりと浸み込むように、お互いの唾液が混ざって流れ込んだ。
「ん――」
ごくん。
みのりの細い喉が、小さく動いた。彼の唾液を、自分の体の中に受け入れたのだ。
(か、かわいい。それに、気持ちいい……)
男性も気分が乗って来た。腰を小さく揺らしながら、不器用に舌を突き出す。彼女の口を、どうやってかき回したらいいのか。それは分からない。ただ見よう見まねで、彼女と同じように、相手の口の中を舌で探検する。
じゅぷ、じゅぷ、じゅるるる……
深夜の田舎町に、似つかわしくない口吸いの音が響く。コンビニも近い道端だから、誰かが気になって見に来ても不思議じゃない。
そんな中でも、もう二人のキスは止まらない。
「んっ。ぷあっ……あ、あのっ」
みのりがようやく、唇を離した。お互いの舌が糸を引いているが、すすりもしないで言う。
「お願いします。そのっ。せ、セックスの方も、頑張ってください」
「あ」
そうだった。と男性は気づく。キスだけじゃなく、腰も動かしたほうが気持ちいい。
「ごめんなさい。それじゃ俺、動きますね」
「あ、はぅん……」
ぱちゅっ。ぱちゅっ。ぱちゅっ。ぱちゅっ。
みのりの身体が上下に揺らされて、背中が雪の上を滑る。腰に押し付けられる冷たさと、中に入っている熱さ。その両方が彼女を高ぶらせる。
「んっ。んむっ!?」
キスも忘れていない。口の中をくまなく舐め回すような、情熱的なキス。いよいよ中だけでは飽き足らず、その舌はみのりの鼻や頬まで湿らせる。
(この人、童貞さんだって言ってたけど、覚えるのが早いかも……)
あるいは、童貞だからこそ躊躇が無いのだろう。自分の思い続けた『気持ちいいこと』全部、今しかないチャンスにぶつけてきている。
(んっ!?いたたたたたたっ)
乳首をつねられるのは、少し痛い。冷たくて凍り付きそうな先端が、指で押しつぶされる。頭まで痺れてしまいそうだ。
「あ……」
「はうん」
もう少しでイける。みのりがそう思った時に、タイミング悪くピストンが止まった。キスも離れてしまい、彼の両手も乳房に食い込み始める。
雪に背中を預けているみのりに、覆いかぶさるような男性。その身体から力が抜けて、荒い息がみのりの冷たい耳にかかる。
「あ、あの……もしかして、イっちゃいました?」
「はいい。出しちゃいました。気持ちいいー」
言われてみれば、じんわりと熱くて重い感覚が、みのりの股間に溜まってくる。少しずつ滲むような射精だ。
(びゅーって感じじゃないけど、普通よりねっとりしてて、べとべとする。接着剤みたいで……んっ。私の穴、内側からくっつけられちゃいそう)
こういう水分量の少ない精子も、みのりは初めてではない。
「ああ、ごめんなさい。中で出しちゃった」
「いいんですよ。いっぱい出して、妊娠させてくださいね」
「きみは天使みたいな女の子だなぁ。いや、こんな雪の中で全裸のうえ、隠語の落書きまみれなんて、きっと天使だな。そうじゃなきゃ、俺の妄想が見せてる幻覚、ですかね?」
「にゃははは」
どんな天使だよとツッコミを入れようか迷ったが、幻覚か何かだと思われているなら都合がいい。みのりだって、旅先で出会っただけの男とこれ以上の関係になったり、私生活に支障を出すような結果になったりすることは避けたい。
「それじゃあ、もうちょっと待っててくださいね。今、おちんちん抜きますから」
「はい。ああ、気持ちよかった……んおおっ」
糸を引くほど粘り気がある精子が、路面にビチャっと音を立てて落ちる。発射の勢いこそ弱かったが、充分な量だ。
「あ……」
男性は、そこにきてようやく頭が冷えてきた。
相手に求められたとはいえ、道端での童貞喪失。そして見ず知らずの少女への、妊娠覚悟の中出し。いろいろと危険なことをしたと、賢者モードになってから思い知る。
「そ、それじゃあ、俺はこれで」
「え?あのっ」
「気持ちよかったです。ありがとうございました」
ぴゅーん。という効果音さえ付きそうな勢いで、男性が帰っていく。
「あの、私……まだイけてないけど」
絶頂を逃したまま、ただ中出しされたみのりだけが、道端に取り残されてしまった。
ちゃぷ、ちゃぷ……
橋を降りたみのりは、凍りそうなほど冷たい川で、身体を洗っていた。
「そりゃ、まあ……私の名前とか、連絡先とか、ぜんぜん聞いて来なかったのは嬉しいけど、さ」
肌を刺すほどの冷たさの中、指の感覚がなくなった足で、不安定な川底を歩く。ときどき転びながらも、全身に水を浴びながら、
「でも、ちゃんとイクまでやってほしかったよ。せっかくネバネバの精子いっぱい出したんだから、これをローションみたいにして、指でくにくにしてほしかったのに……」
腹いせのように、当てつけのように、みのりは自分の身体を虐める。独自のストレス発散方法だ。
「ばか。私のばか。もう死んじゃえ。冷たくなって死んじゃえ。首とか脇とか、体温下がるようなところ、お水で冷やしちゃえ」
せめて自分でオナニーしようかと思ったが、指が震えて狙いが定まらない。穴に入らず、入ったとしてもすぐ抜けてしまう。
身体全体が、イク時よりもずっと震えている。寒いのだ。
「そ、そそそそそんなに震えて、どどどどどどうしちゃったのかしら?私」
あくまで『私』が『私』を虐めるという形で、独り言を続けるみのり。虐められる側のみのりに発言権は無い。虐める側のみのりだけが、一方的にみのりに話しかける。
「あ、あははははっ。そんなに歯をガチガチ鳴らしたら、音に気付いた通りすがりの人が、私を見つけちゃうかもよ?見つけられたいの?」
ついにみのりは、浅い川に寝そべった。足を上流に向けて、大股開きで仰向けに寝る。そうすれば、水流が股間を刺激してくれる。
首の後ろや、脇の下にも水の流れを感じる。びりびりと電気を流されたみたいに、どんどん体温が奪われていくのが分かる。手足はもう、流れの強ささえ感じない。
膣がきゅっと締まる。先ほど出された精子を守ろうとして、無意識のうちに閉じるのだ。その一本筋を逆撫でするように、冷たい水が登って来ては、お腹を撫でて流れ落ちる。
「ああっ。こ、今度こそ、イク。冷たい水でイっちゃう。川にクンニされてアクメきめちゃうううう」
本日、ようやく2度目の絶頂だ。一度目はシンタに胸を揉まれた時だったので、ちゃんと下の方でイクのは1回目である。
「ふああああああ、気持ちよかったぁ。もう、死んでもいいかも」
と、満足そうにつぶやいたみのりは、
「あ――でも」
最後に、そっと手を星空に伸ばす。すぐそこにあるように見えていた星が、意外と遠い。
「シン兄ちゃん……ごめんね」
パシャン――
伸ばした手が、水面に打ち付けられた。
身体に力が入らないまま、少しずつ、水に流されていく。
安らかな寝顔を浮かべるみのり。その顔が、川の波紋にゆっくり包まれていく。
もう、星は見えなくなってしまった。
「ぷはぁっ!?」
飛び起きるように立ち上がったみのりは、自分の身体の異変に気付く。とりあえず、生きてはいるのだが、
「あ、熱い。暑いよぉ」
まるで真夏のように、身体が火照る。セックスのし過ぎでこうなったことが何度かあるが、それとはレベルの違う熱さだ。
「……これ、もしかして」
冬でも全裸で露出散歩をたしなむ彼女には、心当たりがあった。というより、何度かこうなりかけたことがある。
「低体温症……それも、重度の」
エッチな話とは関係ないが、『矛盾脱衣』という現象がある。
雪山で発見された遺体が、全裸の状態で凍死しているというものだ。
本来なら寒いはずなのに、彼らはなぜ服を脱いだのか?――それは単に、暑いと感じるからである。体温が極端に落ちたせいで、相対的に気温が高く感じてしまう。すると錯覚を起こして『今は真夏のような暑さだ』と思い込むのだとか……
つまり今のみのりがそれに当たる。もっとも、彼女は矛盾脱衣も何も、最初から脱衣しているのでこれ以上脱ぐものがないのだが。
「これ、判断を間違ったら死ぬやつだ。マジで」
と、頭では分かっているが、どこか意識が朦朧としている。この状況で判断を正常にできた人の方が少ない。
ただ、身体は十全に動くようになってしまった。一時的にだが、麻痺している事さえ忘れている。
「えっと、そもそも、何でこんなことになったんだっけ?」
決定的なのは、セックスで物足りなかった分を補うため、水流オナニーに夢中になったから。
でも、そもそも川に全裸で入ったのは、
「お尻の穴、洗わなきゃ」
シンタにお尻の穴を弄り回してほしい。そのための準備として、直腸を洗いに来たのが、そもそもの始まりだ。
「お尻の穴を、広げて……お水を入れるっ」
みのりのアナルは、簡単に広げられるほどまでセルフ調教されていた。ときどき自分で指などを突っ込んだり、自作のディルドを挿入したりして遊んでいるせいだ。
ぶばばばばっ。ぷすー。
女の子としては、好きな男子に聞かせたくない音が出てしまった。この音を聴かれたくなかったのも、シンタのいる温泉から離れた理由のひとつだ。
お尻の穴から、茶色く濁った水と、わずかな固形物が出てくる。それらが勢いよく発射される光景は、とても屋外で見せるものではない。
「も、もう一回」
それを、少なくとも水が透明になるまで、何度も繰り返す。多少の臭いが残ってしまうのは仕方ない。それはいくら洗っても、腸壁に張り付いてなかなか落ちないものだ。腸液も常に分泌されるので、落とし切ることはできない。
「気持ちいいー。冷たくて、幸せ」
と、本人は感じているが、実際にはそれどころじゃない。暑いと感じているのはあくまで『錯覚』である。実際にはこれ以上の体温低下をさせるのは――
「うるさいなあ。私が気持ちいいって言ってるんだから、いいでしょ?」
――あれ?
みのりさん、もしかしてナレーション(地の文)であるワタクシと喋っていらっしゃる?
「何を意味の分からないこと言ってんのよ。それより、姿を見せて。私なんてお尻の中まで見せてるんだから、顔くらい見せてよ。どこにいるの?」
やっべぇ。これ生死の狭間をさまよってるせいで、この世の物じゃないはずのナレーションが聞こえちゃってる。三人称視点小説の定義が崩れる。つーか創作物のタブーに触れてるって。
「創作?」
まあ、何と言いますか、その……夢の中、みたいな。
「あ、ここ、夢の中なの?それじゃあ私、大通りを全裸で散歩していい?」
ダメです。つーか夢ならやりたいことが真っ先にそれかい!
「えー、ダメかぁ。せっかくお尻の穴まで洗ったから、みんなに見てほしかったのに……あ、貴方だけでも見てって。ほら」
みのりはそう言うと、お尻を天に向けて突き出した。腰を180度曲げた姿勢から、思い切りよく排泄される川の水。それは肛門から出て来たとは思えないほど綺麗で、キラキラと輝いている。
もちろん、天に向かって出しているわけだから、重力に引かれて自分に返ってくる。自分で排泄して自分で被っている彼女は、
「えへへ。綺麗でしょ?私、可愛い?」
などと、あまり一般的ではない感性からの質問をしてくる。つーか、答えるのはワタクシなのか?
ええっと、可愛いよ。
「ふふっ。よかったぁ」
喜んでもらえたら何よりだよ。こういう時、どう返せばいいのか分からんって。読者のみんな、もしよかったら教えてくれ。今の死にかけたみのりなら聞いてくれるかもしれない。
「うん。みんなも『こんなプレイしてほしい』とかあったら、どしどし送って来てね。……はっくしょん!」
おお、ずいぶんと大きなくしゃみだな。
「あ、あれ?私いま誰と……」
おや、みのりちゃん?
「だ、誰もいないよね」
もしかして、正気を取り戻したのか?
きょろきょろとあたりを見回す彼女は、どうやらもう幻聴に惑わされてはいないらしい。
好都合なので、こちらもナレーションに戻る。時として現状の実況。また時としてキャラクターの心情に寄り添った解説。それらを読者にだけ、一方的に伝える。それがこの文章の役割だ。
では、彼女が正気を取り戻したところで、次回に続く。
もっとも、滑らない理由がきちんとある。それは雪が積もっている事だ。おかげでタイヤはザックリと深く沈み、雪によって固定されている。
……そのため、スピードも全く上がらない。ギアを一番軽くしているのに、それでも抵抗は大きいのだ。なんならタイヤが回らなくなるシーンも多々ある。
「んっ……んんんー」
そんな中を、みのりは全裸で走っていた。先ほどまで温泉で火照っていた身体も、すっかり冷めてしまっている。転んだ時に頭まで濡れてしまったが、その髪も外気に触れて凍りついていた。
下の芝生が不安定なのか、それとも雪の密度が一定ではないのか……おそらく両方の原因があるのだろう。自転車は大きく縦に揺れて、前輪を跳ね上げた後、後輪も同じくらい跳ね上げる。
上下に突き上げられて、前後に揺さぶられる中、みのりはなるべく体重をサドルとペダルに分散していた。
(この車体のホイールベースとジオメトリなら、サドルがもっとも重心の中央になっているはず……んっ。くはぁん!)
当然、そんなことをしたら性器に刺激があるものだ。中途半端にエッチな行為をしたため、より敏感になっている。
前輪が段差に乗ると、大きくサドルが傾いて、
「んっ……んんんん」
ぷっくりと膨らんだ種に、冷たい革製サドルが当たる。
そのまま前輪が段差を越えると、
「あんっ!」
今度は割れ目を守るひだが、ゴツンと強くぶつけられる。
続いて、後輪が段差に乗り上げる。
「――っ」
ぐんぐんとサドルが持ち上がり、みのりのお尻も上がって来た。この後どうなるのか、自転車が好きなみのりには分かっている。最大の衝撃が来るのだ。
段差を車輪が完全に乗り切った時、
ガタン!
「やっ!くひゃぁあん!」
お尻の肉にも腰の骨にも響くほど、大きな衝撃が彼女を襲う。軽くしなる鞭などのスパンキングや、体重の乗らない平手打ちとは全く異なる衝撃だ。本人の体重が、そのまま硬いサドルに打ち付けられる。
……立って乗ればいいのでは?と気づく人もいるかもしれないが、それをしないのは彼女がひとえに変態だからである。
(それにしても、シン兄ちゃん、いい自転車に乗ってるなぁ)
と、みのりは感心する。安っぽく、また古臭い自転車ではあるが、それは一昔前に流行ったタイプだった。
ノーパンクタイヤと呼ばれる、空気の代わりにウレタンを入れたタイヤ。そして42本のスポークで支えられた頑丈な24インチホイール。
タイヤがすり減ったときに交換部品が高くつくのと、交換できる技術と工具のある店を探すのが難しいというデメリットはあるが、それでも頑丈な車体だ。何をしてもほとんど壊れない。……もっとも、乗り心地は最悪だが。
「振動が凄い……んんんっ。ペダルが重いよぉー。ああんっ!」
まったくクッション性のないタイヤは、同じく乗り心地など考えられていないフレームと、頑丈なら何でもいいと言わんばかりのホイールのせいで非常に揺れる。それが常にみのりの股間を刺激し続けるのだ。
例えて言うなら、電気マッサージ器を押し当てられた上から、金属バットで叩かれるような痛みだ。それが彼女の股間をしっかりと捉える。
「やっ、あああっ……と、止まっちゃった」
ついに前輪が雪に深く突き刺さり、車体が動かなくなってしまった。こうなるたびに彼女は自転車を降りて、車体を持ち上げて雪を払う。
全裸の彼女は、素足で雪に降り立ち、素手で雪を払いのけるしかない。その指先は変色し、真っ赤な肌に青紫色の影を落としていた。
こうなると、もういっそ自転車ではなく歩いてきた方が早かったとさえ思えるが、それでもみのりはまだ、川の下流を自転車で目指す。
(シン兄ちゃんが待ってるんだ。早くお尻の穴を洗って、戻らないと)
ちらちらと降る雪は、彼女の身体の上に積もり始めていた。要するに、体温が肌の表面を温められていないのだ。白い肌に乗った雪の結晶は、時間をかけてゆっくりと溶けていく。それが溶け切る前に、次の雪の結晶が肌の上に乗る。
その冷たさも、頭のスイッチがエッチに切り替わっている時は、気持ちいい刺激に感じるから不思議だ。じんわりとした痛みと痺れが、まるで電気の流れる極細の針を刺したように彼女をなぶっていく。
特に何もしていないのに、突然ママチャリの前輪が止まった。ブレーキが今までにない勢いでロックする。
「きゃあっ!?」
車体から投げ出されたみのりは、そのまま横に転倒した。雪の積もった斜面を、ごろごろと転がっていく。
ざぶーん……
転がった勢いのまま、彼女は川に突っ込んでいった。岸の方は浅いが、水は冷たい。表面の氷が割れて、緩やかに彼女の身体にまとわりつく。
「あっ、冷たっ!?ってか、自転車。自転車は……あった」
すぐに水から上がって、最初にするのは自転車の心配だ。いったい何があってフロントブレーキがロックしたのか、それを調べる必要がある。
とはいえ、すぐに原因は分かった。
「なーんだ。雪が詰まっただけか」
ホイールに着雪したせいで、ブレーキパッドに固まった雪が付いていた。それが固くなって、最終的に詰まったのだろう。
ママチャリ自体はこういった場所での運用を想定されていないため、当然と言えば当然の結果である。
「んしょ。んっ、しょっ!」
詰まった雪を手で掻き出し、再びホイールを空転させてみる。今度は回った。ブレーキパッドもずれていないらしい。
「よかったぁ。……それにしても、凄いところまで来ちゃったなぁ」
みのりが辿り着いたのは、川の流れを遅くするためのコンクリートブロックが敷かれている場所だ。ブロック水制と言うらしい。
温泉街のある通りから少し離れて、この辺りは住宅地になっている。みのりが今いる川の少し下流には、広い歩道付きの橋が架かっていた。
(だ、ダメ、だよね。こんな格好で、道路まで行ったら……)
地元ではよくやる全裸散歩だが、ここは土地勘のない場所だ。道の交通量も、周辺の状況も分からない。周囲の住民がどんな生活サイクルを送っているかさえ、みのりには予想できないのだ。
つまり、安全が確保できない。
誰に見つかるか、あるいは誰にも見つからないのか、それさえも分からないのだ。
(で、でも、ちょっと水遊びしすぎて、身体も冷えてきたし……ちょっとくらいなら、許されるよね。仕方ないよね?)
誰に言い訳しているかも分からないまま、みのりはそっと川を出た。そのまま土手を歩き、頭上に見えていた橋を目指す。
自分の中の好奇心に逆らえない。
「わぁ……」
温泉街とは違う、どこにでもありそうな街並み。民家の窓を見れば、ちらほらと明かりが点いている。橋のそばにはコンビニもあった。どこにでもある有名チェーン店だ。
「すごい……これはちょっと怖いかも」
除雪で固められた真っ黒な雪を、裸足でそっと踏みしめる。土手の斜面に降り積もった雪と違って、こちらは硬くて滑りやすい。
しかし、あまり雪の降らない地域に住んでいたみのりに、そんな知識は無い。
「きゃああっ!?」
いとも簡単に滑り、そのまま地面にしりもちをついてしまった。
「いたたたた……ん?」
ザッザッザッザッ……
どこからか、足音が聞こえてくる。
「だ、大丈夫ですか……わぁ!?」
男性の声だった。コンビニ帰りなのだろう。そのコンビニの袋を持った男性だ。
しっかりとダウンジャケットを着こんで、ちょっとコンビニ程度の用事でもニット帽まで被った男性。年齢は30代くらいだろう。少し細身の人だ。
「え、えっと……」
対するみのりは、全裸で水遊びしていた直後という意味の分からない恰好のまま、降ってきた雪を頭の上に積もらせている。それを見た男性がどう反応したらいいのか分からなくなるのも必然だろう。
(ど、どうしよう。見られた……ううん。見てもらっちゃった。でも、このままじゃ逃げられないし、知らない人と話すの、苦手だし)
と、みのりも困った状態になる。
全身に施した卑猥な落書き。その中でも問題になるのが背中だ。個人情報をガッツリ書いてしまったこの背中を、逃げる時に見せるわけにはいかない。
つまり、背を向けることが出来ないのだが、その状況でこうなったら、
「あ、えっと、いい天気ですね」
向かい合って会話をするしかない。転んだままの、脚をおっぴろげて地べたに座った間抜けな格好で。
「い、いい天気ですか? 雪、降ってますけど」
「あ。えっとえっと……私、雪が降らない町に住んでるので、こういう雪景色って、いい天気だなぁって思って」
「そ、そうなんですか。あの、寒くないんですか?」
「さ、寒いですけど、あのっ、雪が好きなので、大丈夫です。全身で浴びたくなっちゃって――つい、全裸で……」
どんな言い訳だよ。と、みのり本人でさえ心の中でツッコミを入れる。相手もさぞ困惑していることだろう。それでも脳死トークに付き合ってくれているのは、きっとお互いにどうしたらいいか分からないからだ。
(えっと、私、いま自分で何言ったっけ?……えっと、雪が大好きだから、全裸でお散歩する女の子、って設定になってるんだっけ?ああ、でも体中に落書きしたままなのは、どう説明しよう?)
混乱しながらも、開きっぱなしの股を両手で押さえ、もじもじと指を擦り合わせる。一応、股間は隠したい。
それに、
くちゅ、くちゅ……ぴくん!
知らない人に見られながら、ちゃっかり股間を弄るのが気持ちいい。
(ど、どうしよう?こんな近くで見られてるんだもん。オナニーしてるのも気づかれちゃってるよね)
目の前の男性も、その様子をじっと見ていた。どこかへ行ってくれる気配もないし、みのりから視線を外しもしない。
つまり、その男性も嫌な気持ちじゃないのだろう。
そう判断したみのりは、またしても大胆な行動に出てしまう。
「え、えっと。お願いがあるんですけど、私のここに、おちんぽ入れてくれませんか?」
Y字バランスのような姿勢を取って、指でしっかり広げて見せる。もう身体がうずいて仕方がないのだ。この際だから誰でもいい。
「い、いいんですか?」
「はい。この場で良ければ」
「いいですよ。この時間、ここって滅多に人が来ないから」
その言葉と、そっと差し出された男の恥部を見ながら、
(ああ、よかった。本当にもうこれ以上、人は来ないみたい)
みのりはそんな安心感と、これから知らない人と交わるスリルを、両方とも感じた。
「あ、あんっ……」
片足を大きく上げたみのりを、斜め下から突き上げる肉棒。その勢いに押されて、みのりは後ろに倒れ込んだ。
彼女の背中を、除雪車に固められた雪と、その奥に隠されたガードレールが支える。
(これなら、背中の個人情報も見られないね。……ふわっ!)
急斜面になった雪に押し付けられて、一度は浮き上がりかけた身体。それが重力に引かれて、斜め前へと滑り降りる。
そこに待ち受けているのは、もちろん男性の身体だ。
「あ、入った。うわーっ。気持ちいい!」
男性が喜ぶ。まだ奥までしっかり入ったわけじゃないけど、そのまま飛び上がってしまいそうなほど嬉しそうだ。
しかし、また抜けてしまった。
「あ……」
哀しそうな顔をする男性を見て、みのりはふと思う。なぜそんなことを考えてしまったのか、みのりにも分からないのだが、
「もしかして、童貞さん……ですか?」
違ってたら失礼だと思いつつも――あるいは正解だったらそれはそれで失礼だと思いつつも、どっちに転んでも相手を怒らせそうな質問を、つい口にしてしまう。
しかし、相手の男性は優しかった。
「あ、はい。バキバキ童貞です。初めてがこんな可愛い痴女さんで、とても緊張しています」
そう笑顔で答えてくれる。機嫌を悪くしたような雰囲気は無い。
むしろ……
(か、可愛い、痴女……)
褒めてもらえた。ちなみに、『痴女』の部分も含めて褒め言葉である。
抜けてしまった刀を、再び鞘へと挿入する。男性の刀は反り返りが強く、入れるまでの角度に苦戦した。
お互い立ったままの姿勢で、向かい合った状態だ。みのりは片足だけ上げても仕方ないと、思い切って両足を上げて抱き着く。
「んんっ」
「おお、だいしゅきホールドきたぁ!」
「え、えへへへ。つい、しちゃいました」
男性のぷよぷよしたお腹と、硬く締まった雪の間に挟まれる。みのりのお腹は彼のごわごわしたコートに支えられて、背中はスルスルと滑る氷のような雪塊に押される。
男性が腰を突き上げると、みのりの身体は跳ね上がり、雪の上を滑って元の位置に戻る。これなら、思う存分腰を振ってもらえる。
「き、キスしても、いいですか?」
男性から、そんなことを訊かれる。こんな町中で本番までしておいて、今更だとは思わない。
みのりにとっても、キスはちょっと特別だ。セックスとどっちが大事とか、どっちが軽いとかじゃない。比べられないものだ。
だけど、
「いいですよ。ちゅー、してください」
みのりの唇が、相手の唇と重なる。
その唇が離れるまで、体感では数秒ほどだった。実際には1秒だったかもしれない。
「あ……え?もう終わりですか?」
「え?」
不思議そうにする男。というのも、彼からしたら何がいけなかったのか分からない。
「えっと、じゃあ……私、もっとすごいキス、していいですか?」
「もっと、すごいキス……」
「うん。恋人でもあんまりしないような、気持ちいいキスです」
そっと抱き着いたみのりが、彼の耳元で囁く。誰にも見せられないような、悪い表情を浮かべながら、
「生でエッチしたまま、気持ちいいキス、です。私の身体がうずいて、赤ちゃん作りたくなっちゃう。そんなキス、教えていいですか?」
少女の可憐さと、大人の魅惑を持ち合わせる声。その声を耳元で、白い吐息と共に受けてしまった男は、その場で固まってしまった。
「うっ!」
「にゃふふ。いま、おちんちんで頷きましたね?じゃあ、いいって事で」
「いや、今のはゾクっとしたから、つい反応しちゃっただけで……んんっ!?」
自分の膣内で跳ねたそれを、相手の同意とみなす。上の口は違うことを言いたそうだったが、それもみのりは自分の口で封じた。
「んっ。んんん」
彼女の舌が入ってきて、男性の上あごを舐めるように動く。そのまま前歯の裏へと、何度か擦られていく。
口が閉じられないため、溜まった唾液を飲み込めない。それらは少しずつ、みのりの口の中に流れ込んでいく。じんわりと浸み込むように、お互いの唾液が混ざって流れ込んだ。
「ん――」
ごくん。
みのりの細い喉が、小さく動いた。彼の唾液を、自分の体の中に受け入れたのだ。
(か、かわいい。それに、気持ちいい……)
男性も気分が乗って来た。腰を小さく揺らしながら、不器用に舌を突き出す。彼女の口を、どうやってかき回したらいいのか。それは分からない。ただ見よう見まねで、彼女と同じように、相手の口の中を舌で探検する。
じゅぷ、じゅぷ、じゅるるる……
深夜の田舎町に、似つかわしくない口吸いの音が響く。コンビニも近い道端だから、誰かが気になって見に来ても不思議じゃない。
そんな中でも、もう二人のキスは止まらない。
「んっ。ぷあっ……あ、あのっ」
みのりがようやく、唇を離した。お互いの舌が糸を引いているが、すすりもしないで言う。
「お願いします。そのっ。せ、セックスの方も、頑張ってください」
「あ」
そうだった。と男性は気づく。キスだけじゃなく、腰も動かしたほうが気持ちいい。
「ごめんなさい。それじゃ俺、動きますね」
「あ、はぅん……」
ぱちゅっ。ぱちゅっ。ぱちゅっ。ぱちゅっ。
みのりの身体が上下に揺らされて、背中が雪の上を滑る。腰に押し付けられる冷たさと、中に入っている熱さ。その両方が彼女を高ぶらせる。
「んっ。んむっ!?」
キスも忘れていない。口の中をくまなく舐め回すような、情熱的なキス。いよいよ中だけでは飽き足らず、その舌はみのりの鼻や頬まで湿らせる。
(この人、童貞さんだって言ってたけど、覚えるのが早いかも……)
あるいは、童貞だからこそ躊躇が無いのだろう。自分の思い続けた『気持ちいいこと』全部、今しかないチャンスにぶつけてきている。
(んっ!?いたたたたたたっ)
乳首をつねられるのは、少し痛い。冷たくて凍り付きそうな先端が、指で押しつぶされる。頭まで痺れてしまいそうだ。
「あ……」
「はうん」
もう少しでイける。みのりがそう思った時に、タイミング悪くピストンが止まった。キスも離れてしまい、彼の両手も乳房に食い込み始める。
雪に背中を預けているみのりに、覆いかぶさるような男性。その身体から力が抜けて、荒い息がみのりの冷たい耳にかかる。
「あ、あの……もしかして、イっちゃいました?」
「はいい。出しちゃいました。気持ちいいー」
言われてみれば、じんわりと熱くて重い感覚が、みのりの股間に溜まってくる。少しずつ滲むような射精だ。
(びゅーって感じじゃないけど、普通よりねっとりしてて、べとべとする。接着剤みたいで……んっ。私の穴、内側からくっつけられちゃいそう)
こういう水分量の少ない精子も、みのりは初めてではない。
「ああ、ごめんなさい。中で出しちゃった」
「いいんですよ。いっぱい出して、妊娠させてくださいね」
「きみは天使みたいな女の子だなぁ。いや、こんな雪の中で全裸のうえ、隠語の落書きまみれなんて、きっと天使だな。そうじゃなきゃ、俺の妄想が見せてる幻覚、ですかね?」
「にゃははは」
どんな天使だよとツッコミを入れようか迷ったが、幻覚か何かだと思われているなら都合がいい。みのりだって、旅先で出会っただけの男とこれ以上の関係になったり、私生活に支障を出すような結果になったりすることは避けたい。
「それじゃあ、もうちょっと待っててくださいね。今、おちんちん抜きますから」
「はい。ああ、気持ちよかった……んおおっ」
糸を引くほど粘り気がある精子が、路面にビチャっと音を立てて落ちる。発射の勢いこそ弱かったが、充分な量だ。
「あ……」
男性は、そこにきてようやく頭が冷えてきた。
相手に求められたとはいえ、道端での童貞喪失。そして見ず知らずの少女への、妊娠覚悟の中出し。いろいろと危険なことをしたと、賢者モードになってから思い知る。
「そ、それじゃあ、俺はこれで」
「え?あのっ」
「気持ちよかったです。ありがとうございました」
ぴゅーん。という効果音さえ付きそうな勢いで、男性が帰っていく。
「あの、私……まだイけてないけど」
絶頂を逃したまま、ただ中出しされたみのりだけが、道端に取り残されてしまった。
ちゃぷ、ちゃぷ……
橋を降りたみのりは、凍りそうなほど冷たい川で、身体を洗っていた。
「そりゃ、まあ……私の名前とか、連絡先とか、ぜんぜん聞いて来なかったのは嬉しいけど、さ」
肌を刺すほどの冷たさの中、指の感覚がなくなった足で、不安定な川底を歩く。ときどき転びながらも、全身に水を浴びながら、
「でも、ちゃんとイクまでやってほしかったよ。せっかくネバネバの精子いっぱい出したんだから、これをローションみたいにして、指でくにくにしてほしかったのに……」
腹いせのように、当てつけのように、みのりは自分の身体を虐める。独自のストレス発散方法だ。
「ばか。私のばか。もう死んじゃえ。冷たくなって死んじゃえ。首とか脇とか、体温下がるようなところ、お水で冷やしちゃえ」
せめて自分でオナニーしようかと思ったが、指が震えて狙いが定まらない。穴に入らず、入ったとしてもすぐ抜けてしまう。
身体全体が、イク時よりもずっと震えている。寒いのだ。
「そ、そそそそそんなに震えて、どどどどどどうしちゃったのかしら?私」
あくまで『私』が『私』を虐めるという形で、独り言を続けるみのり。虐められる側のみのりに発言権は無い。虐める側のみのりだけが、一方的にみのりに話しかける。
「あ、あははははっ。そんなに歯をガチガチ鳴らしたら、音に気付いた通りすがりの人が、私を見つけちゃうかもよ?見つけられたいの?」
ついにみのりは、浅い川に寝そべった。足を上流に向けて、大股開きで仰向けに寝る。そうすれば、水流が股間を刺激してくれる。
首の後ろや、脇の下にも水の流れを感じる。びりびりと電気を流されたみたいに、どんどん体温が奪われていくのが分かる。手足はもう、流れの強ささえ感じない。
膣がきゅっと締まる。先ほど出された精子を守ろうとして、無意識のうちに閉じるのだ。その一本筋を逆撫でするように、冷たい水が登って来ては、お腹を撫でて流れ落ちる。
「ああっ。こ、今度こそ、イク。冷たい水でイっちゃう。川にクンニされてアクメきめちゃうううう」
本日、ようやく2度目の絶頂だ。一度目はシンタに胸を揉まれた時だったので、ちゃんと下の方でイクのは1回目である。
「ふああああああ、気持ちよかったぁ。もう、死んでもいいかも」
と、満足そうにつぶやいたみのりは、
「あ――でも」
最後に、そっと手を星空に伸ばす。すぐそこにあるように見えていた星が、意外と遠い。
「シン兄ちゃん……ごめんね」
パシャン――
伸ばした手が、水面に打ち付けられた。
身体に力が入らないまま、少しずつ、水に流されていく。
安らかな寝顔を浮かべるみのり。その顔が、川の波紋にゆっくり包まれていく。
もう、星は見えなくなってしまった。
「ぷはぁっ!?」
飛び起きるように立ち上がったみのりは、自分の身体の異変に気付く。とりあえず、生きてはいるのだが、
「あ、熱い。暑いよぉ」
まるで真夏のように、身体が火照る。セックスのし過ぎでこうなったことが何度かあるが、それとはレベルの違う熱さだ。
「……これ、もしかして」
冬でも全裸で露出散歩をたしなむ彼女には、心当たりがあった。というより、何度かこうなりかけたことがある。
「低体温症……それも、重度の」
エッチな話とは関係ないが、『矛盾脱衣』という現象がある。
雪山で発見された遺体が、全裸の状態で凍死しているというものだ。
本来なら寒いはずなのに、彼らはなぜ服を脱いだのか?――それは単に、暑いと感じるからである。体温が極端に落ちたせいで、相対的に気温が高く感じてしまう。すると錯覚を起こして『今は真夏のような暑さだ』と思い込むのだとか……
つまり今のみのりがそれに当たる。もっとも、彼女は矛盾脱衣も何も、最初から脱衣しているのでこれ以上脱ぐものがないのだが。
「これ、判断を間違ったら死ぬやつだ。マジで」
と、頭では分かっているが、どこか意識が朦朧としている。この状況で判断を正常にできた人の方が少ない。
ただ、身体は十全に動くようになってしまった。一時的にだが、麻痺している事さえ忘れている。
「えっと、そもそも、何でこんなことになったんだっけ?」
決定的なのは、セックスで物足りなかった分を補うため、水流オナニーに夢中になったから。
でも、そもそも川に全裸で入ったのは、
「お尻の穴、洗わなきゃ」
シンタにお尻の穴を弄り回してほしい。そのための準備として、直腸を洗いに来たのが、そもそもの始まりだ。
「お尻の穴を、広げて……お水を入れるっ」
みのりのアナルは、簡単に広げられるほどまでセルフ調教されていた。ときどき自分で指などを突っ込んだり、自作のディルドを挿入したりして遊んでいるせいだ。
ぶばばばばっ。ぷすー。
女の子としては、好きな男子に聞かせたくない音が出てしまった。この音を聴かれたくなかったのも、シンタのいる温泉から離れた理由のひとつだ。
お尻の穴から、茶色く濁った水と、わずかな固形物が出てくる。それらが勢いよく発射される光景は、とても屋外で見せるものではない。
「も、もう一回」
それを、少なくとも水が透明になるまで、何度も繰り返す。多少の臭いが残ってしまうのは仕方ない。それはいくら洗っても、腸壁に張り付いてなかなか落ちないものだ。腸液も常に分泌されるので、落とし切ることはできない。
「気持ちいいー。冷たくて、幸せ」
と、本人は感じているが、実際にはそれどころじゃない。暑いと感じているのはあくまで『錯覚』である。実際にはこれ以上の体温低下をさせるのは――
「うるさいなあ。私が気持ちいいって言ってるんだから、いいでしょ?」
――あれ?
みのりさん、もしかしてナレーション(地の文)であるワタクシと喋っていらっしゃる?
「何を意味の分からないこと言ってんのよ。それより、姿を見せて。私なんてお尻の中まで見せてるんだから、顔くらい見せてよ。どこにいるの?」
やっべぇ。これ生死の狭間をさまよってるせいで、この世の物じゃないはずのナレーションが聞こえちゃってる。三人称視点小説の定義が崩れる。つーか創作物のタブーに触れてるって。
「創作?」
まあ、何と言いますか、その……夢の中、みたいな。
「あ、ここ、夢の中なの?それじゃあ私、大通りを全裸で散歩していい?」
ダメです。つーか夢ならやりたいことが真っ先にそれかい!
「えー、ダメかぁ。せっかくお尻の穴まで洗ったから、みんなに見てほしかったのに……あ、貴方だけでも見てって。ほら」
みのりはそう言うと、お尻を天に向けて突き出した。腰を180度曲げた姿勢から、思い切りよく排泄される川の水。それは肛門から出て来たとは思えないほど綺麗で、キラキラと輝いている。
もちろん、天に向かって出しているわけだから、重力に引かれて自分に返ってくる。自分で排泄して自分で被っている彼女は、
「えへへ。綺麗でしょ?私、可愛い?」
などと、あまり一般的ではない感性からの質問をしてくる。つーか、答えるのはワタクシなのか?
ええっと、可愛いよ。
「ふふっ。よかったぁ」
喜んでもらえたら何よりだよ。こういう時、どう返せばいいのか分からんって。読者のみんな、もしよかったら教えてくれ。今の死にかけたみのりなら聞いてくれるかもしれない。
「うん。みんなも『こんなプレイしてほしい』とかあったら、どしどし送って来てね。……はっくしょん!」
おお、ずいぶんと大きなくしゃみだな。
「あ、あれ?私いま誰と……」
おや、みのりちゃん?
「だ、誰もいないよね」
もしかして、正気を取り戻したのか?
きょろきょろとあたりを見回す彼女は、どうやらもう幻聴に惑わされてはいないらしい。
好都合なので、こちらもナレーションに戻る。時として現状の実況。また時としてキャラクターの心情に寄り添った解説。それらを読者にだけ、一方的に伝える。それがこの文章の役割だ。
では、彼女が正気を取り戻したところで、次回に続く。
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