91 / 122
第五章:人と妖と
87
しおりを挟む 「もう!どうしてそんな意地悪なこと言う
んですかっ。どんなに別れが辛くても、自分
だけお婆ちゃんになっちゃっても、先生や皆
のことは絶対に絶対に忘れたくありません!」
キッ、と右京を睨め上げると右京は堪らな
いといった顔で、ふっははは、と声を上げる。
その横顔は心底ほっとしたようにも見えて、
古都里は冗談を本気に捉えてしまったことが
恥ずかしくなってしまった。やがて目に滲ん
だ涙を拭うと、右京は頬を緩めたままでポン、
と古都里の頭に手を載せる。
「ごめん、そう言ってくれるとわかってて
口にしたんだけど。やっぱり古都里さんは僕
が見込んだだけのことはあるね。そういう気
丈夫なところが魅力的で堪らない。でもね」
ポンポン、と、子どもにそうするように頭
に置かれていた手が離れて、すっ、と足元を
指差す。不思議に思ってその指先を辿った古
都里は、次の瞬間、ああっ、と声をひっくり
返した。
「どうやら僕たちは裸足でベランダに出て
しまったようだ。足の裏が汚れてしまってい
るだろうから、そろそろ靴下を脱いで部屋に
戻ろうか」
「は、はいぃ」
ベランダ口に置かれた一つしかないサンダ
ルを振り返って古都里が肩を竦めると、二人
はどちらともなく笑みを零したのだった。
んですかっ。どんなに別れが辛くても、自分
だけお婆ちゃんになっちゃっても、先生や皆
のことは絶対に絶対に忘れたくありません!」
キッ、と右京を睨め上げると右京は堪らな
いといった顔で、ふっははは、と声を上げる。
その横顔は心底ほっとしたようにも見えて、
古都里は冗談を本気に捉えてしまったことが
恥ずかしくなってしまった。やがて目に滲ん
だ涙を拭うと、右京は頬を緩めたままでポン、
と古都里の頭に手を載せる。
「ごめん、そう言ってくれるとわかってて
口にしたんだけど。やっぱり古都里さんは僕
が見込んだだけのことはあるね。そういう気
丈夫なところが魅力的で堪らない。でもね」
ポンポン、と、子どもにそうするように頭
に置かれていた手が離れて、すっ、と足元を
指差す。不思議に思ってその指先を辿った古
都里は、次の瞬間、ああっ、と声をひっくり
返した。
「どうやら僕たちは裸足でベランダに出て
しまったようだ。足の裏が汚れてしまってい
るだろうから、そろそろ靴下を脱いで部屋に
戻ろうか」
「は、はいぃ」
ベランダ口に置かれた一つしかないサンダ
ルを振り返って古都里が肩を竦めると、二人
はどちらともなく笑みを零したのだった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
穢れなき禽獣は魔都に憩う
クイン舎
キャラ文芸
1920年代の初め、慈惇(じじゅん)天皇のお膝元、帝都東京では謎の失踪事件・狂鴉(きょうあ)病事件が不穏な影を落としていた。
郷里の尋常小学校で代用教員をしていた小鳥遊柊萍(たかなししゅうへい)は、ひょんなことから大日本帝国大学の著名な鳥類学者、御子柴(みこしば)教授の誘いを受け上京することに。
そこで柊萍は『冬月帝国』とも称される冬月財閥の令息、冬月蘇芳(ふゆつきすおう)と出会う。
傲岸不遜な蘇芳に振り回されながら、やがて柊萍は蘇芳と共に謎の事件に巻き込まれていく──。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
あやかし神社へようお参りです。
三坂しほ
キャラ文芸
「もしかしたら、何か力になれるかも知れません」。
遠縁の松野三門からそう書かれた手紙が届き、とある理由でふさぎ込んでいた中学三年生の中堂麻は冬休みを彼の元で過ごすことに決める。
三門は「結守さん」と慕われている結守神社の神主で、麻は巫女として神社を手伝うことに。
しかしそこは、月が昇る時刻からは「裏のお社」と呼ばれ、妖たちが参拝に来る神社で……?
妖と人が繰り広げる、心温まる和風ファンタジー。
《他サイトにも掲載しております》
九十九物語
フドワーリ 野土香
キャラ文芸
佐々木百花は社会人2年目の24歳。恋人はなし。仕事に対する情熱もなし。お金もないのにハマってしまったのが、ホストクラブ。
すっかり気に入ってしまった担当――エイジといい気分で自分の誕生日を過ごした百花だったが、エイジがデートしている現場を目撃し撃沈。さらに勤め先の社長が逮捕。人生どん底に。
そんな時、夢で見た椿の木がある古民家にたどり着く。そこは誰でも気が済むまで語ることができる〈物語り屋〉。男女がややこしく絡んで縺れた恋愛話を物語ってきた。
〈物語り屋〉店主の美鈴は、美しくも妖しい掴みどころのない男。話して鬱憤を晴らすだけなら何時間でも何日でも話を聞き、報復を願う場合は相談者の大切な思い出の一日の記憶をもらい請け負っていた。
恋の縺れを解いてくれる?
むしろぐちゃぐちゃにしちゃう?
今、美鈴と百花ふたりの運命が大きく動き出す――。
カクテルBAR記憶堂~あなたの嫌な記憶、お引き取りします~
柚木ゆず
キャラ文芸
――心の中から消してしまいたい、理不尽な辛い記憶はありませんか?――
どこかにある『カクテルBAR記憶堂』という名前の、不思議なお店。そこではパワハラやいじめなどの『嫌な記憶』を消してくれるそうです。
今宵もまた心に傷を抱えた人々が、どこからともなく届いた招待状に導かれて記憶堂を訪ねるのでした――
鬼人の養子になりまして~吾妻ミツバと鬼人の婚約者~
石動なつめ
キャラ文芸
児童養護施設で育ったミツバは鬼人の『祓い屋』我妻家に養子として引き取られる。
吾妻家の家族はツンデレ気味ながら、ミツバの事を大事にしてくれていた。
そうしてその生活にも慣れた頃、義父が不機嫌そうな顔で
「お前と婚約したいという話が来ている」
といった。お相手は同じく鬼人で祓い屋を生業とする十和田家のソウジという少年。
そんな彼が婚約を望んだのは、ミツバが持つ『天秤体質』という特殊な体質がが理由のようで――。
これは恋に興味が無い少女と少年が、面倒で厄介な恋のアレコレに巻き込まれながら、お互いをゆっくりと好きになっていく物語。
※小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる