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第二章:蒼穹のひばり

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「本気で言っているのですか、王太子殿下?
 同じ事を国王陛下を弑逆する時に言われて騙されますよ。
 国王陛下が病気で苦しんでいるから、楽にしてあげなければいけませんとか。
 国王陛下が乱心しているから、殺さなければいけませんでしたとか。
 国王陛下が王太子殿下を殺して、グランナ王子に王位を継がそうとしたので、仕方なく殺してしまいましたとか。
 国王陛下がアーダを襲ったので、仕方なく殺してしまいましたとか。
 そんなことを言って国王陛下の弑逆を正当化しますよ。
 その時も今みたいにごまかしますよ」

 いい所をつけたみたいですね。
 グランナ王子とアーダの事を口にした時、さすがのドゼル侯爵も一瞬表情が変わりましたから、どちらかを理由に国王陛下を弑逆するつもりだったのでしょう。
 国王陛下も私同様気がついたのか、真っ青な顔色になっています。

 問題は、王太子が国王の顔とドゼル侯爵の顔を見比べている事です。
 ここまで言っても、まだドゼル侯爵を信じようとしている所です。
 よほどアーダに魅了されているのか、それとも、バカを演じているのでしょうか?
 本当のバカだと思っていましたが、すべての責任をドゼル侯爵に押し付けて、国王陛下を殺させるつもりなのでしょうか?

「王太子殿下、このような淫売の言葉を耳にしては穢れてしまいます。
 アーダが殿下をお慰めしようと、部屋で待っています。
 さあ、後の始末は臣に任せてアーダの所に行って下さいませ」

「そうか、後は任せるからよきに計らえ」

 ああ、ああ、ああ。
 アーダに夢中なのですね。
 もう国王が殺されるかもしれない事を忘れています。
 この後に行われるのが、私の処刑だけだと思っています。
 いえ、もしかしたら、私が自殺に見せかけられて殺される事も、忘れているのかもしれません。
 あ、そうではありませんね。
 私が殺されることなど、何の興味もないのですね。

「まて、イルレク。
 余も一緒にここを出るぞ。
 後宮まで案内しろ。
 イルレクが本当に余を殺す気がないというのなら、後宮まで見送れ。
 よいな、イルレク」

「え?
 あ、はい。
 それは、構いませんが……」

 王太子は色情狂かもしれませんね。
 それとも、本当のバカだから、色欲が抑えられないのかもしれません。
 国王を後宮に送るよりも、少しでも早くアーダを抱きたいのが明らかです。
 
「では、直ぐだ、直ぐに見送れ。
 ドゼル侯爵、構わないな。
 余をこの場で殺す気がないというのなら、後宮に戻ってもいいな!?」

 国王陛下も必死ですね。
 ここに残ったら、自暴自棄になった私が国王を殺したという言い訳で、ドゼル侯爵に殺されるかもしれないと思っているのでしょう。
 さて、ドゼル侯爵はどうするつもりでしょうか?
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