60 / 111
第四章:やさしい時間
59
しおりを挟む
「広いなぁ~!!」
真っ青な空の下に広がる、広大な敷地を
見回しながら、僕は思わず感嘆の声を上げた。
海に面したこの県立海浜公園は、緑豊かで
とても開放的な空間だった。
入り口には大きな船のモニュメントがあり、
そこを抜けると、芝生広場が広がっている。
その他にも、水族館やオートキャンプ場、
野外ステージ、バラ園、レストランや売店、
海洋科学館なんてものまである。
潮の干満差を利用して河口から
取水した人工湖もあって、サイクルボートや
ローボートを漕ぐことも出来るようだった。
そして、園の入り口から海の通路を抜けた
先は、海水浴場へと繋がっている。
「今度来るときは泊りがけで来るといい
かもな。ここ、キャンプ場の隣に、コテージ
もあるからさ」
総合案内版の前で、僕と肩を並べた町田さん
がにぃ、と笑う。
「いいですね、それ。僕、バーベキューって
やったことがないんです。海水浴シーズンじゃ
なくても、ここなら色々楽しめそうだし」
僕はいつか実現するかも知れない、楽しい
未来を想像しながら、両手を腰にあて、
にんまりと笑った。
「お待たせ!」
そんなことを話していると、お手洗いに
行っていた二人が戻って来た。
さて、どうしようか?と、さっそく四人で
話し合いが始まる。
(みんなお腹空いているだろうし、町田さん
レジャーシート持って来てくれてるし、売店で
ご飯買って浜辺で食べませんか?)
そう、手話で言った弥凪の言葉を、すかさず
咲さんが通訳してくれる。
「やっぱそうだよな。せっかく海に来たん
だもんな」
弥凪の提案に町田さんが即答したので、
僕たちは売店に向かい、各々、食べたいものを
沢山買い込んで、砂浜へと向かった。
海の通路を抜け、砂浜に下りると、シーズン
オフとあって人影は疎らだった。けれど、
日差しは適度に暖かいし、風もやわらかだし、
海水浴客がいないぶん砂浜はとてもキレイだ。
胸を満たす潮香も心地よく、僕たちはしばら
く肩を並べ、四人で砂浜を歩いた。やがて、
サクサク、と砂を踏みしめながら歩いている
と、海の落とし物のように波打ち際に転がって
いる、細い流木が目に留まった。
「あの辺りにしようか?目印になり
そうだし」
くるくると丸められた大判のレジャーシート
を肩から提げていた町田さんが、
流木を指差しながら言う。
するとすぐに、「そうしましょう!」と、
咲さんの元気な声が返ってきて、彼女は弥凪
の手を取り、そこまで駆けていったのだった。
防水加工の施された大判のレジャーシートを
広げると、僕たちは輪になるようにそこへ
座り、買い込んだ食料を真ん中に並べた。
真っ青な空の下に広がる、広大な敷地を
見回しながら、僕は思わず感嘆の声を上げた。
海に面したこの県立海浜公園は、緑豊かで
とても開放的な空間だった。
入り口には大きな船のモニュメントがあり、
そこを抜けると、芝生広場が広がっている。
その他にも、水族館やオートキャンプ場、
野外ステージ、バラ園、レストランや売店、
海洋科学館なんてものまである。
潮の干満差を利用して河口から
取水した人工湖もあって、サイクルボートや
ローボートを漕ぐことも出来るようだった。
そして、園の入り口から海の通路を抜けた
先は、海水浴場へと繋がっている。
「今度来るときは泊りがけで来るといい
かもな。ここ、キャンプ場の隣に、コテージ
もあるからさ」
総合案内版の前で、僕と肩を並べた町田さん
がにぃ、と笑う。
「いいですね、それ。僕、バーベキューって
やったことがないんです。海水浴シーズンじゃ
なくても、ここなら色々楽しめそうだし」
僕はいつか実現するかも知れない、楽しい
未来を想像しながら、両手を腰にあて、
にんまりと笑った。
「お待たせ!」
そんなことを話していると、お手洗いに
行っていた二人が戻って来た。
さて、どうしようか?と、さっそく四人で
話し合いが始まる。
(みんなお腹空いているだろうし、町田さん
レジャーシート持って来てくれてるし、売店で
ご飯買って浜辺で食べませんか?)
そう、手話で言った弥凪の言葉を、すかさず
咲さんが通訳してくれる。
「やっぱそうだよな。せっかく海に来たん
だもんな」
弥凪の提案に町田さんが即答したので、
僕たちは売店に向かい、各々、食べたいものを
沢山買い込んで、砂浜へと向かった。
海の通路を抜け、砂浜に下りると、シーズン
オフとあって人影は疎らだった。けれど、
日差しは適度に暖かいし、風もやわらかだし、
海水浴客がいないぶん砂浜はとてもキレイだ。
胸を満たす潮香も心地よく、僕たちはしばら
く肩を並べ、四人で砂浜を歩いた。やがて、
サクサク、と砂を踏みしめながら歩いている
と、海の落とし物のように波打ち際に転がって
いる、細い流木が目に留まった。
「あの辺りにしようか?目印になり
そうだし」
くるくると丸められた大判のレジャーシート
を肩から提げていた町田さんが、
流木を指差しながら言う。
するとすぐに、「そうしましょう!」と、
咲さんの元気な声が返ってきて、彼女は弥凪
の手を取り、そこまで駆けていったのだった。
防水加工の施された大判のレジャーシートを
広げると、僕たちは輪になるようにそこへ
座り、買い込んだ食料を真ん中に並べた。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
あかりの燈るハロー【完結】
虹乃ノラン
ライト文芸
――その観覧車が彩りゆたかにライトアップされるころ、あたしの心は眠ったまま。迷って迷って……、そしてあたしは茜色の空をみつけた。
六年生になる茜(あかね)は、五歳で母を亡くし吃音となった。思い出の早口言葉を歌い今日もひとり図書室へ向かう。特別な目で見られ、友達なんていない――吃音を母への愛の証と捉える茜は治療にも前向きになれないでいた。
ある日『ハローワールド』という件名のメールがパソコンに届く。差出人は朱里(あかり)。件名は謎のままだが二人はすぐに仲良くなった。話すことへの抵抗、思いを伝える怖さ――友だちとの付き合い方に悩みながらも、「もし、あたしが朱里だったら……」と少しずつ自分を見つめなおし、悩みながらも朱里に対する信頼を深めていく。
『ハローワールド』の謎、朱里にたずねるハローワールドはいつだって同じ。『そこはここよりもずっと離れた場所で、ものすごく近くにある場所。行きたくても行けない場所で、いつの間にかたどり着いてる場所』
そんななか、茜は父の部屋で一冊の絵本を見つける……。
誰の心にも燈る光と影――今日も頑張っているあなたへ贈る、心温まるやさしいストーリー。
―――――《目次》――――――
◆第一部
一章 バイバイ、お母さん。ハロー、ハンデ。
二章 ハローワールドの住人
三章 吃音という証明
◆第二部
四章 最高の友だち
五章 うるさい! うるさい! うるさい!
六章 レインボー薬局
◆第三部
七章 はーい! せんせー。
八章 イフ・アカリ
九章 ハウマッチ 木、木、木……。
◆第四部
十章 未来永劫チクワ
十一章 あたしがやりました。
十二章 お父さんの恋人
◆第五部
十三章 アカネ・ゴー・ラウンド
十四章 # to the world...
◆エピローグ
epilogue...
♭
◆献辞
《第7回ライト文芸大賞奨励賞》
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる