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第五章:罪の在り処
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『報告書を読んで、やっと違和感の原因が
掴めたよ。あの××には心春の遺影はあった
が×××の遺影がなかったんだ』
「えっ、誰の遺影がなかったって?」
途中、マサの声が途切れ途切れに聞こえて
僕は聞き返す。ここは電波が悪いのだろうか?
『だから、あの部屋には当麻卓の遺影がな
かった。母親は心のどこかで息子が生きてい
ると信じていたんだろう。だがそれを必死に
隠した。どうしても隠さなきゃならなかった
んだ。あの手紙の文章に見覚えがあったから』
「えっ、いま何て言った?」
今度は声が聴こえなかった訳じゃなかった。
耳を疑うようなことをマサが言うので聴き
返したのだ。マサは電話の向こうで息を漏ら
すと、『いいか驚くなよ』と前置きして言った。
『実は当麻卓の認定死亡に辿り着いた瞬間、
携帯が鳴ったんだ。電話の主は当麻朝子だっ
た。話があるというから聞いてみれば、あの
手紙の文章と同じものを息子の部屋のゴミ箱
で見たというんだ。遭難事故のあと、部屋を
片付けていてゴミ箱に丸めて捨てられている
メモ用紙を見つけたらしい。そこにはこう書
かれていた。『犯罪には恐怖がつきまとう、
それが刑罰である』、とな』
「そんな、じゃあ」
次々と明らかになる真実に、視界が揺れる。
バラバラだった黒いピースがだんだん嵌ま
ってゆき、髑髏が浮かび上がるような感覚に
肩を震わせる。
あの手紙の送り主は当麻卓ということなの
だろうか。認定死亡とされた彼は生きていて、
加害者の妹である佐奈に、あのメッセージを
送った。
――なぜ、どうしてそんなことを?
理由を考えれば、急激に指先が冷えてゆく。
震える手で口元を覆う僕を、みちくさ爺さ
んが心配そうに見上げている。
そんな僕の様子が電話の向こうにも伝わっ
たのだろう。マサが窺うように聞いた。
『どうした吾都、大丈夫か?』
「……ああ」
『もうすぐ署の方に当麻朝子が来る。息子
が書いたというメモ用紙と、その他の文章を
何枚か持ってきてくれるんだ。それがあれば
筆跡を鑑定出来る。筆跡が一致すれば、当麻
卓が生きていることが確定する。悪いが吾都、
手元にある手紙を署に持ってきてくれないか。
おい、吾都?』
筆跡鑑定が一致すれば当麻卓の生存が確定
する。その言葉に一瞬、呆けてしまった僕は
マサの呼びかけに、はっ、と我に返る。
そして覇気のない声で言った。
「ごめん、いまはそっちに行けないんだ」
『忙しいのか?じゃあ、あとで俺が……』
そう言いかけたマサに、僕は被せるように
吐き出す。
掴めたよ。あの××には心春の遺影はあった
が×××の遺影がなかったんだ』
「えっ、誰の遺影がなかったって?」
途中、マサの声が途切れ途切れに聞こえて
僕は聞き返す。ここは電波が悪いのだろうか?
『だから、あの部屋には当麻卓の遺影がな
かった。母親は心のどこかで息子が生きてい
ると信じていたんだろう。だがそれを必死に
隠した。どうしても隠さなきゃならなかった
んだ。あの手紙の文章に見覚えがあったから』
「えっ、いま何て言った?」
今度は声が聴こえなかった訳じゃなかった。
耳を疑うようなことをマサが言うので聴き
返したのだ。マサは電話の向こうで息を漏ら
すと、『いいか驚くなよ』と前置きして言った。
『実は当麻卓の認定死亡に辿り着いた瞬間、
携帯が鳴ったんだ。電話の主は当麻朝子だっ
た。話があるというから聞いてみれば、あの
手紙の文章と同じものを息子の部屋のゴミ箱
で見たというんだ。遭難事故のあと、部屋を
片付けていてゴミ箱に丸めて捨てられている
メモ用紙を見つけたらしい。そこにはこう書
かれていた。『犯罪には恐怖がつきまとう、
それが刑罰である』、とな』
「そんな、じゃあ」
次々と明らかになる真実に、視界が揺れる。
バラバラだった黒いピースがだんだん嵌ま
ってゆき、髑髏が浮かび上がるような感覚に
肩を震わせる。
あの手紙の送り主は当麻卓ということなの
だろうか。認定死亡とされた彼は生きていて、
加害者の妹である佐奈に、あのメッセージを
送った。
――なぜ、どうしてそんなことを?
理由を考えれば、急激に指先が冷えてゆく。
震える手で口元を覆う僕を、みちくさ爺さ
んが心配そうに見上げている。
そんな僕の様子が電話の向こうにも伝わっ
たのだろう。マサが窺うように聞いた。
『どうした吾都、大丈夫か?』
「……ああ」
『もうすぐ署の方に当麻朝子が来る。息子
が書いたというメモ用紙と、その他の文章を
何枚か持ってきてくれるんだ。それがあれば
筆跡を鑑定出来る。筆跡が一致すれば、当麻
卓が生きていることが確定する。悪いが吾都、
手元にある手紙を署に持ってきてくれないか。
おい、吾都?』
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する。その言葉に一瞬、呆けてしまった僕は
マサの呼びかけに、はっ、と我に返る。
そして覇気のない声で言った。
「ごめん、いまはそっちに行けないんだ」
『忙しいのか?じゃあ、あとで俺が……』
そう言いかけたマサに、僕は被せるように
吐き出す。
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