新米公爵令嬢の日常

国湖奈津

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「本当に、あの時はどうなることかと思いましたわ。ねぇ、あなた」
おばあ様はおじい様に同意を求めている。

「本当にのぉ。エレノアが陛下の妃になりたいと言い出した時には寿命が縮まる思いだったわい。我が家の一大事だと家族会議を開いたな」

「その報告の手紙を受け取った私も、ティモシーへの殺意を押さえるのに大変でした」

ハハハと、おじい様とおばあ様、そしてハロルドは笑いあっている。

今日は国王陛下とドリスの結婚式。
王の結婚ならば、通常は婚約を発表してから1年以上準備期間を要するそうだけれど、陛下は早くドリスと結婚したいと言い、半年で準備をした。

相思相愛でお似合いのお2人だと、国中が結婚を祝福している。

私たちは式が始まるのを、談笑しながら待っていた。

「元はと言えば、みんなが私に事情を隠していたのが悪いのじゃない?きちんと話してくれていたら、私も我武者羅に試験勉強をする必要はなかったわけだし」

辛かった、修行に明け暮れた日々を思い出す。

「悪かったと思っています。でもあの頃はいつ結婚できるか分からず、そんな状態に付き合わせるのは可哀想だと思っていたんです。あなたが誰かを好きになったら、解放しようと思っていました」

「私がハロルド以外を好きになるわけがないじゃない!」
私はハロルドに抱きついた。

「皇太子殿下の妃となるには、エレノアはお勉強をさぼりすぎでしたよ。だから私は良い機会だと思って、あなたが心変わりしたのではないと知ってからも、勉強を続けさせることにしたの」

おばあ様の言葉を聞いて、なるほどと思った。
あの修行の日々のおかげで、良い成長を遂げることができたことは確かだ。

「私はあのままのエレノアでよかったんですよ?」

「殿下、あまりこの子を甘やかさないでください。この子がボロを出して殿下の悪評が立つなんてことがあったら、生きた心地がしませんもの」

おほほ とおばあ様は笑った。
私の失敗がハロルドの悪評につながる!?
身を引き締めないと。

「大丈夫ですよ。ティモシーに子が生まれれば、私は以前と同じ隠居生活を送ります。そうすればエレノアも、のびのびとした暮らしができるでしょう」

その時、鐘がなり、オーケストラが音楽を奏で始めた。
花嫁姿のドリスが、扉のところに姿を見せた。

「素敵ね」
私はハロルドを見上げた。

「私たちも来月には、ここで式だ」
そう言って、ハロルドは私の頬にキスをした。
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