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未来

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「それが…。そのことなんだけど…。実は私の結婚が決まったの。だけど嫁いだら殺されるかもしれなくて…」

ルーシーは涙のたまった瞳でフランツを見上げた。
フランツは驚愕の表情でルーシーを見ていた。

「結婚が決まった?一体誰と?」

「相手は、カンデスの王子よ」

「オリヴィエ王子ですか?彼には婚約者がいたはずでは?」

「その婚約をお父様が破棄させたらしいわ」

「一体何のために?」
フランツは困惑しているようだった。

「さぁ。私にはわからないわ。急きょそうしなければならない何かがあったのじゃないかしら?政治的な軋轢とか?」

政治の機密を教えてもらえないルーシーには分からない。

「殺されるとは一体どういうことですか?」
「私には双子の兄がいるんだけど、一応王子だから、あなたも知ってるわね、ポールとサイモンっていう」

「ええ、よく存じております」

「その双子が言うにはね、カンデスの3代前の国王は、愛人と結婚するために王妃に無実の罪を着せて殺したらしいの。オリヴィエ王子と婚約者の方は相思相愛だったと聞いているわ。だから、オリヴィエ王子が私を殺して婚約者と結婚しようとするんじゃないかって」

「なるほど。姫は結婚の話を正式に聞いたのですか?書状は見ましたか?」

「見てないわ。でも双子に言われて、私はすぐに嘘だと思ってお父様に確認しに行ったの。そうしたら嘘ではないと分かって…」

「そうですか」
フランツは黙り込んでしまった。

眼球がしきりに動いているので、何か考え事をしているのかもしれない。

「それでね、私たちは相思相愛でしょ?だけど私はカンデスにお嫁に行かされる。私はそれは嫌だわ。だからその、その、私と駆け落ちしてくれない?もちろん私もちゃんと働くわ。私って何もできないと思われがちだけど、案外そんなことないと思うのよ。刺繍も得意だから作って売れると思うし、本だって読めるし字だって書けるから、代筆業もできるし読書係っていう手もあると思うの。お金持ちの商人のお嬢様にマナーを教えることもできるわ。どこに出しても恥ずかしくない王女のマナーを身につけたお嬢様を育てるのもいいと思うの」

ルーシーは早口で話した。
想定した中で一番良い答えをもらって舞い上がっている。

「それは楽しそうですね」
フランツの明るい声が聞こえた。

ルーシーが見上げると、フランツは笑っていた。

「本当?じゃあ、私と駆け落ちしてくれる?」

「それは最終手段にしましょう。駆け落ちしてしまえば、あなたは一生ご両親ともご兄弟とも会えなくなるんですよ?それは嫌でしょう。まずは我々の愛を訴えてみませんか?」

ルーシーは家族を愛している。
そのことを理解し、よりよい道を示してくれたフランツの答えに感動していた。

「そ、そうね。私たちの愛を訴えましょう。そうだわ、フランツ、そこに座って」

お湯はぬるめとは言え、かなり長い時間浸かっている。
フランツは言われた通り岩の上に腰かけると、手を股間の上に置いた。

ルーシーは湯船の中を移動し、フランツの正面に座った。
ちょうどルーシーの目の前に、フランツの腹筋が見える。

「私の頭に手を置いて足を開いて」
ルーシーはフランツに命じた。

「しかし…」
フランツは躊躇している。

「大丈夫だから」
ルーシーが言うと、フランツはルーシーの頭に両手を置き足を開いた。
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