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恋人
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今日もルーシーは馬車の小窓から外を眺めているけれど、景色を見ているわけではなかった。
ずっと昨夜の自分のおかしさに対して、何か言い訳ができないかと考えている。
一番考えられるのは、やはり何か怪しい食材を口にしてしまったということ。
ただ同じものを食べたはずなのに、こんなに慌てているのはルーシーだけに見える。
これはどういうことなのだろうか。
みんなが隠すのがうまいだけなのだろうか。
時折騎馬で外を守る騎士たちのマントが視界に入ってしまい、その都度ルーシーは頬を染めた。
朝、フランツから今日の旅程が説明されたが、ルーシーはフランツの目を見ることができなかった。
フランツに変わった様子はなく、夢だと思いたいおぼろげな記憶は、やはりその大部分が夢だったのではないかと希望が湧いた。
昼食は宿で作ってもらったサンドイッチで軽く済ませる。
しばらくの間休憩になり、騎士たちは火をおこしてお湯を沸かし始めた。
寒いので、こうして温まるのだ。
少しの間馬車から降りて体を延ばし、食事が用意されるのを待った。
ルーシーとホリーは馬車の中で食事をとる。
騎士の1人がお茶を携帯用カップに入れて持ってきてくれた。
旅の日程を確認しながら食事を終えゆっくりしていると、ホリーが噂話を始めた。
「そういえば、さっき隊員の方々が噂しているのを聞いてきたのですが、クールガー隊長にはどうやら恋人がいらっしゃるようですわ」
ホリーは恋の噂が好きなようで、瞳を輝かせている。
「そ、そうなのね」
なんとなく居づらい気分になる。
「今まで噂1つない方ですので、みなさん驚かれてました。騎士の方々の間ではもっぱらの噂になっているようですわ」
「そ、そう」
どう反応して良いのかわからない。
「なんでも女性もののパンツをマントの内ポケットから取り出して広げ、愛おしそうに見ていたのだとか。きっと離れている間、肌身離さず持っているように言われているのですわ」
ホリーはうっとりとした瞳で頬を染めている。
「グェホッ!ゲホゲホゲホッゴホッ」
お茶が変な方に入ったようで、むせてしまった。
恋人が旅に出るからと、餞別に自分のパンツを渡すものだろうか?
しかもそんな光景にうっとりするホリー。
どんな恋人?そしてホリーは一体どんな心情なのか?
突っ込みを入れたい気分になる。
「まぁ、大丈夫ですか」
ホリーに背中をさすられながら涙目で考えるのは、そのパンツは自分のものだろうということだ。
とっさに隠した場所が、マントの内ポケットだったのだろう。
きっとフランツは“なんだこれは?”と内ポケットに入っている謎の物体を見つけ、広げて確認していただけだろう。
女性もののパンツを眺めているところを部下に見られるなど、変態扱いされてもおかしくない。
それが恋人がいるという噂になるというのは、フランツの人徳だろうか?
とにかく変な噂になってしまったようで、迷惑をかけてしまったことが申し訳なくなった。
(クールガー隊長にとってはとんでもない災難ね。これ以上は迷惑をかけないようにして、きちんと謝らないと)
折を見て謝罪しようと心に決めた。
ずっと昨夜の自分のおかしさに対して、何か言い訳ができないかと考えている。
一番考えられるのは、やはり何か怪しい食材を口にしてしまったということ。
ただ同じものを食べたはずなのに、こんなに慌てているのはルーシーだけに見える。
これはどういうことなのだろうか。
みんなが隠すのがうまいだけなのだろうか。
時折騎馬で外を守る騎士たちのマントが視界に入ってしまい、その都度ルーシーは頬を染めた。
朝、フランツから今日の旅程が説明されたが、ルーシーはフランツの目を見ることができなかった。
フランツに変わった様子はなく、夢だと思いたいおぼろげな記憶は、やはりその大部分が夢だったのではないかと希望が湧いた。
昼食は宿で作ってもらったサンドイッチで軽く済ませる。
しばらくの間休憩になり、騎士たちは火をおこしてお湯を沸かし始めた。
寒いので、こうして温まるのだ。
少しの間馬車から降りて体を延ばし、食事が用意されるのを待った。
ルーシーとホリーは馬車の中で食事をとる。
騎士の1人がお茶を携帯用カップに入れて持ってきてくれた。
旅の日程を確認しながら食事を終えゆっくりしていると、ホリーが噂話を始めた。
「そういえば、さっき隊員の方々が噂しているのを聞いてきたのですが、クールガー隊長にはどうやら恋人がいらっしゃるようですわ」
ホリーは恋の噂が好きなようで、瞳を輝かせている。
「そ、そうなのね」
なんとなく居づらい気分になる。
「今まで噂1つない方ですので、みなさん驚かれてました。騎士の方々の間ではもっぱらの噂になっているようですわ」
「そ、そう」
どう反応して良いのかわからない。
「なんでも女性もののパンツをマントの内ポケットから取り出して広げ、愛おしそうに見ていたのだとか。きっと離れている間、肌身離さず持っているように言われているのですわ」
ホリーはうっとりとした瞳で頬を染めている。
「グェホッ!ゲホゲホゲホッゴホッ」
お茶が変な方に入ったようで、むせてしまった。
恋人が旅に出るからと、餞別に自分のパンツを渡すものだろうか?
しかもそんな光景にうっとりするホリー。
どんな恋人?そしてホリーは一体どんな心情なのか?
突っ込みを入れたい気分になる。
「まぁ、大丈夫ですか」
ホリーに背中をさすられながら涙目で考えるのは、そのパンツは自分のものだろうということだ。
とっさに隠した場所が、マントの内ポケットだったのだろう。
きっとフランツは“なんだこれは?”と内ポケットに入っている謎の物体を見つけ、広げて確認していただけだろう。
女性もののパンツを眺めているところを部下に見られるなど、変態扱いされてもおかしくない。
それが恋人がいるという噂になるというのは、フランツの人徳だろうか?
とにかく変な噂になってしまったようで、迷惑をかけてしまったことが申し訳なくなった。
(クールガー隊長にとってはとんでもない災難ね。これ以上は迷惑をかけないようにして、きちんと謝らないと)
折を見て謝罪しようと心に決めた。
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