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祖母の別荘は、王都からすぐの温泉地にある。

小ぢんまりとした別荘には、小さいながらもよく手入れされた庭があった。

できるだけ使用人の数を減らし、亡くなった家族の冥福を祈りながらひっそりと生活したいというのが祖母の願いだそうだ。

到着早々、祖母はサラを自分の寝室に案内した。

寝室の脇に小さな部屋があり、そこを開くと祖父の肖像画と若い女性の肖像画がかかっていた。

若い女性は、亡くなったアンジェラだ。

明るい金髪と薄青の瞳はサラに似ているかもしれない。
はにかんだ笑顔でこちらを見ている。

サラの住む屋敷にもアンジェラの描かれた肖像画がいくつかあるが、それらよりもこの肖像画の方が、自分に似ているとサラは思った。

祖母はアンジェラの肖像画を外すと、裏から手紙を取り出しサラに差し出した。

「これはアンジェラが亡くなった時に見つかったものなの。お茶を用意させますから、ゆっくり読んでちょうだい」

サラは祖母と共に応接室に向かい、祖母の対面に座って手紙を読み始めた。



『お父様 お母様

今まで私を育ててくれてありがとうございます。

私はすでに満足に起き上がることもできません。

キャロラインが見つからない今、このままではすべてが闇に葬られてしまうと思い、ここに手紙を残します。

私がキャロラインと最後に会ったのはマンフォード公爵夫妻の葬儀の時でした。

最後に会ったキャロラインはひどく興奮していました。

キャロラインは、アンヌがパールとマーサに話しているところを偶然聞いてしまったそうなのです。

マンフォード公爵夫妻の事故はアンヌの父・フレーザー侯爵が命じてやらせたことだと。

3人は声を立てて笑っていたそうです。

キャロラインは両親の事故が人為的に起こされた証拠を見つけ、告発してやるのだと言っていました。

私は見たこともない親戚に気を付けるようにキャロラインに忠告しました。

マンフォード公爵位が狙われると思ったからです。

あの日を最後に、キャロラインは消えてしまいました。

私は公爵位を狙う親戚筋に連れ去られたのだろうと思い、マンフォード公爵家の親戚筋を訪ねて回りましたが、私の力では見つけることができず体を壊してしまいました。

動くことができず、今考えるのは、キャロラインは親戚に連れ去られたのではなく、アンヌの父・フレーザー侯爵に連れ去られ、もしかしたら殺されてしまったのではないかということです。

フレーザー侯爵がマンフォード公爵夫妻を殺したのなら、キャロラインも狙われていると考えるべきでした。

それなのに私は見当違いな親戚筋を訪ね歩いて時間を浪費してしまった。

もしマンフォード公爵夫妻の事故が人為的に起こされたという証拠が出てきたら、この手紙を公表してください。

私は残された時間、キャロラインの無事と、キャロラインをこんな目に合わせた者たちに天罰が下るよう祈りを捧げて過ごします。

お父様、お母様。くれぐれもお体を大切に、危ないことはせず長生きしてください。

アンジェラ』
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