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経緯
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「待て、勝手に落着させるな。こっちは何も解決していないんだからな、リュシー。お前はこの1か月間、一体なにをしていた?本当に領地に帰っていたのか?どうして地下にいた?おかしな噂を流した目的は何だ?全部説明しろ」
すっきり爽快気分の私と違い、イザックは眉間にしわを寄せ怖い顔で説明を求めてきた。
「説明すると長くなるのだけど、要するにね、私はあなたが私との結婚を白紙に戻そうとしていると勘違いをしてしまったの」
「そうだと言っていたな」
「だけど、そんなの絶対に嫌だ、私がイザックと結婚するんだって思ったの。だからどうしてイザックが結婚を白紙に戻そうとしているのか調べたの。そしたら、お姉様と妹のどちらかに恋をしている可能性が高いと気づいたの」
「お前の姉と妹か?なぜそうなる!」
イザックはポカンとした表情で私を見ている。
眉間の皺が消えているので、良い兆候かもしれない。
「本に書いてあったのよ。姉妹というのは略奪者なの」
「大丈夫か?」
イザックは不憫な物を見るような目をしていた。
何に対して大丈夫かと聞いているのかは分からない。けれど“大丈夫か”と聞かれたら、“大丈夫”と答えておけばいいだろう。
「もちろん大丈夫よ。それでね、お姉様にイザックからの結婚申し入れを拒絶してもらおうと思って、領地に帰っていたの」
「お前の姉は結婚しているだろう?」
「えぇ。だけど王族ならば教会を買収したり圧力をかけたりして白い結婚だと嘘の証明をさせることもできるのかもしれないと考えたの」
「はぁ~~~~」
イザックは大きなため息をついた。
「もういい。それで、領地から帰って地下に潜入したのか?あそこは使用人の暮らすところのはずだ」
「えっと、話してもいいんだけど、絶対に怒ったり誰かを罰したりしない?」
「あぁ、しない」
「じゃあ話すわ。お姉様と妹のエマとは話をつけたのだけど、イザックの思い人が本当に私の姉妹なのか確証がなかった。だから私はさらに調査をしたの。そうしたら、侍女というのはかなり危険な存在だと知ったのよ。私は、もしかしたらイザックの思い人は侍女なのではないかと考えたの。でも侍女ってたくさんいるでしょう?だから相手の侍女が誰なのか特定するために王宮に潜入することを思いついたの。ちょうど王宮で働くことになったって人を見つけたから、その人と1週間だけ入れ替わらせてもらったって訳」
必死だったからできたことだけれど、私の行動力はなかなかすごいと思う。
よく頑張ったと自分を褒めてあげたい。
「突っ込みどころだらけだが、エマはまだ子供だな?」
「そうよ。でもリナに聞いたら、そういう人もいるって言っていたの」
「そうか…。少し疲れたから、横になって話を聞くことにする」
そう言うと、イザックは肘をついて横になった。
「使用人に紛れ込んだのは分かった。それで、どうして噂を広めた?」
「私は噂を広めてなんかないわ。集めてたのよ。毎晩大浴場で“イザック殿下の思い人の侍女が誰か知りませんか?”って聞いて情報を集めていたの。最初は誰も知らなかったのだけど、最終日に噂を知っているという人に出会って、ラーラとローザという名前を教えてもらったという訳」
「なるほどな。お前は噂を集めているつもりだっただろうが、やっていることは噂を広めているのと変わらなかったんだ。どうやって噂が広まるか知った気分だ。これからは噂を鵜呑みにするのをやめることにする」
「そうね。それがいいわ」
「お前が言うな」
ぴしゃりと言われ、私は肩をすぼめて小さくなった。
イザックの話を聞いて、私が悪かったのだと知った。
噂を集めようとして私が質問した人たちが、誰か別の人に話をして、それが数日かけて噂として流れるようになったのだろう。
すっきり爽快気分の私と違い、イザックは眉間にしわを寄せ怖い顔で説明を求めてきた。
「説明すると長くなるのだけど、要するにね、私はあなたが私との結婚を白紙に戻そうとしていると勘違いをしてしまったの」
「そうだと言っていたな」
「だけど、そんなの絶対に嫌だ、私がイザックと結婚するんだって思ったの。だからどうしてイザックが結婚を白紙に戻そうとしているのか調べたの。そしたら、お姉様と妹のどちらかに恋をしている可能性が高いと気づいたの」
「お前の姉と妹か?なぜそうなる!」
イザックはポカンとした表情で私を見ている。
眉間の皺が消えているので、良い兆候かもしれない。
「本に書いてあったのよ。姉妹というのは略奪者なの」
「大丈夫か?」
イザックは不憫な物を見るような目をしていた。
何に対して大丈夫かと聞いているのかは分からない。けれど“大丈夫か”と聞かれたら、“大丈夫”と答えておけばいいだろう。
「もちろん大丈夫よ。それでね、お姉様にイザックからの結婚申し入れを拒絶してもらおうと思って、領地に帰っていたの」
「お前の姉は結婚しているだろう?」
「えぇ。だけど王族ならば教会を買収したり圧力をかけたりして白い結婚だと嘘の証明をさせることもできるのかもしれないと考えたの」
「はぁ~~~~」
イザックは大きなため息をついた。
「もういい。それで、領地から帰って地下に潜入したのか?あそこは使用人の暮らすところのはずだ」
「えっと、話してもいいんだけど、絶対に怒ったり誰かを罰したりしない?」
「あぁ、しない」
「じゃあ話すわ。お姉様と妹のエマとは話をつけたのだけど、イザックの思い人が本当に私の姉妹なのか確証がなかった。だから私はさらに調査をしたの。そうしたら、侍女というのはかなり危険な存在だと知ったのよ。私は、もしかしたらイザックの思い人は侍女なのではないかと考えたの。でも侍女ってたくさんいるでしょう?だから相手の侍女が誰なのか特定するために王宮に潜入することを思いついたの。ちょうど王宮で働くことになったって人を見つけたから、その人と1週間だけ入れ替わらせてもらったって訳」
必死だったからできたことだけれど、私の行動力はなかなかすごいと思う。
よく頑張ったと自分を褒めてあげたい。
「突っ込みどころだらけだが、エマはまだ子供だな?」
「そうよ。でもリナに聞いたら、そういう人もいるって言っていたの」
「そうか…。少し疲れたから、横になって話を聞くことにする」
そう言うと、イザックは肘をついて横になった。
「使用人に紛れ込んだのは分かった。それで、どうして噂を広めた?」
「私は噂を広めてなんかないわ。集めてたのよ。毎晩大浴場で“イザック殿下の思い人の侍女が誰か知りませんか?”って聞いて情報を集めていたの。最初は誰も知らなかったのだけど、最終日に噂を知っているという人に出会って、ラーラとローザという名前を教えてもらったという訳」
「なるほどな。お前は噂を集めているつもりだっただろうが、やっていることは噂を広めているのと変わらなかったんだ。どうやって噂が広まるか知った気分だ。これからは噂を鵜呑みにするのをやめることにする」
「そうね。それがいいわ」
「お前が言うな」
ぴしゃりと言われ、私は肩をすぼめて小さくなった。
イザックの話を聞いて、私が悪かったのだと知った。
噂を集めようとして私が質問した人たちが、誰か別の人に話をして、それが数日かけて噂として流れるようになったのだろう。
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