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「父と母は、レフーナのことを玉のように可愛がっていました。彼女の望みはなんでも叶えて、欲しいものは与え、嫌がるものは排除したのです」
「かなり極端な愛を向けていたのですね」
「極端……確かに、そうですね。二人の愛は極端でした。レフーナの望みをなんでも叶える。それが二人の信念だったのでしょう」

 レフーナは、とても可愛がられていた。
 それは、オーガルン辺境伯が言っているように極端な程に。
 考えてみれば、父と母はレフーナのことを一度も叱っていないような気がする。彼女に対して真っ当な愛を向けていれば、それはあり得ないことだろう。

「その結果、レフーナはわがままで高慢で、自己中心的な人間になってしまいました。自分の望みが叶うことが当たり前である。世界の中心に自分がいる。そんな考えを、彼女は持っているのだと思います」
「……結果として、化け物が生まれてしまった訳ですか」
「化け物……」

 オーガルン辺境伯の表現に、私は言葉を詰まらせた。
 それは、とても辛辣な評価である。だが、今のレフーナは化け物としか言いようがない。
 彼女はこれからの人生で、いやこれまでの人生でもそうではあったが、たくさんの人を傷つけるだろう。
 他者を傷つける化け物。それが今の彼女なのだ。それを私達は、作り上げてしまったのである。

「成長するに連れて、レフーナは私のことも見下すようになりました。父も母も、私に対しては冷たい態度でしたから、それを見て私が自分よりも下にあると判断したのでしょう。私を姉とは思っていないと思います」
「親の態度というものは、やはり子供に影響するものなのですね……しかし、そう考えるとあなたは随分とまともな人間に育った、おっとそういう言い方は失礼ですね」
「いえ、問題ありません。まあ、私の場合は両親や妹を反面教師にした……とでもいえるでしょうか」

 私は、父と今の母を親とは思っていないのかもしれない。オーガルン辺境伯の指摘に、私はそんなことを考えていた。
 親子の関係というものを私はそこまで知っている訳ではないが、私はまともにそういったやり取りを交わしたことないような気がする。

「さて、レフーナの話ですが、彼女はわがままでありながら、聡い部分、悪い言い方をするとずるがしこい部分もありました。彼女は理解していたのです。その振る舞いは、外でするべきものではないということを」
「ただわがままなだけという訳ではないということですか?」
「ええ、それを本人が理解できているかどうかはわかりませんが、冷静な部分もあると思います。もっとも、煽られるとそれも崩れるようですが」
「それで、今回の件に繋がったということですからね」
「ええ、そうですね……」

 オーガルン辺境伯の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 私の知っているレフーナという人間を簡単に説明するとこんな所になるだろうか。
 その説明を受けて、オーガルン辺境伯は再度考えるような仕草を見せた。私のこれからについて、考えてくれているのだろう。
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