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11.複雑な心境

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「それで、ランベルト侯爵家まで行ったのですか?」
「ああ、そうなのだが……」
「ルバイト様……」

 ルバイトの言葉に、アリシアは頭を抱えていた。
 突如、置手紙を残して消えたルバイトに、アリシアはとても驚いていた。

 彼の行き先がランベルト侯爵家だと知った時は、不安でいっぱいになった。
 ルバイトがランベルト侯爵家の人々に、何かされていないか気が気でなかったのである。

 そんな彼は、涼しい顔をしてアルバーン侯爵家まで帰って来た。
 そして話を聞いたアリシアは、ため息をつきながら、呆れているのである。

「私があれ程言ったのに、どうして行ってしまわれるんですか?」
「先程言った通りだ。これは、俺の事情も含んでいる。何も君のためだけという訳ではない」
「それでも、何も言わずに行くなんて、少しひどいのではありませんか?」
「……まあ、それに関してはそうかもしれないが」

 アリシアの悲痛な言葉に、ルバイトはゆっくりと目をそらした。
 彼も一応悪いとは思っているのだろう。それはアリシアにも伝わってきた。

 しかしながら、アリシアとしてはまだまだ心に引っかかりが残っていた。
 ルバイトの大胆過ぎる行動には、やはり思う所があるのだ。

 ただ、アリシアはそのもやもやを留めることにした。
 貴族の世界を知らない自分が、ルバイトの行動にあれこれという権利はないと思い直したからだ。

「……すみません。ルバイト様にはルバイト様の考えがあるのでしょうし、私のような立場の者が何かを言うのは間違っているのかもしれませんね」
「なっ……」

 そんなアリシアの言葉に対して、ルバイトは目を丸めて驚いていた。
 それには、アリシアの方が面食らってしまう。ただ、彼女はすぐに思い出した。ルバイトが真面目な人であるということを。

「君が謝るようなことではない。今回の件は、俺の短絡的な行動が全ての原因だ。すまなかった。君にも一声かけるべきだった。今度からは、必ずそうしよう」
「あ、えっと……」

 ルバイトは、少し怖いくらいの勢いでアリシアに詰め寄ってきた。
 その言葉に、アリシアはすぐに返答することができないでいた。
 するとルバイトは、不安そうな顔をする。どうやら彼は、今回の件で犯した自分の間違いを深く悔やんでいるようだ。

「本当にすまなかった。俺は君に反対することを恐れる余り、非常に愚かな行いをしてしまったようだ」
「い、いえ、そこまで気にしなくても大丈夫なのですが……」
「ただ、今回の件で成果が得られたというのもまた事実なのだ。そのことについて、君には伝えておかなければならないだろうな」
「あ、はい。それは是非とも聞かせてください」

 色々と思う所があるものの、アリシアはルバイトが得た成果というものが気になっていた。
 アリシアにとって最も気になっているのは、母の所在だ。彼女がどこに埋葬されたのかという情報に関しては、喉から手が出る程に欲しいものだ。

 さらに言えば、単純にルバイトが言っていたことも心配だった。
 ランベルト侯爵家がルバイトを狙っている。それはアリシアにとっても、不安なことなのだ。
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