上 下
61 / 120

61.重要な役割

しおりを挟む
 私はドルギアさんとともに、騎士の詰め所に来ていた。今日は、ここで一晩を明かすのである。

「ド、ドルギアさん、急にどうされたんですか?」
「ま、まさか、あなたが来られるなんて……」

 ドルギアさんの急な来訪に、詰め所の騎士達はかなり焦っていた。
 もしかして、彼はそれなりに地位がある人物なのだろうか。私なんかの尾行をしていた所を見ると、そこまで高い役職のようには思えなかったのだが。

「ドルギアさん、あなたは一体何者なんですか?」
「お嬢ちゃん、それはどういう質問なんだ?」
「その……皆さん、とても緊張しているみたいですし」
「……ああ、俺の騎士団での立ち位置ということか」

 私の質問に対して、ドルギアさんは少し気まずそうに笑っていた。いつも楽しそうに笑う彼としては、珍しい種類の笑みである。

「まあ、それなりの地位はあるといえるか。一応、これでも結構重要な役割に就いているんだ」
「重要な役割ですか……あ、そういえば、あの同僚さんはどうなんですか?」
「え?」

 そこで私は、ドルギアさんの同僚さんのことを思い出していた。
 彼は、ドルギアさんよりも地位が高そうに見えた。私と話す時、明らかに主導権は彼にあったからだ。
 ドルギアさんが高い地位なら、彼はもっとすごい地位ということになる。もしかして、騎士団の重役だったのだろうか。もしそうだとしたら、私と年齢は、そう変わらないのに立派なものである。

「……お嬢ちゃん、面倒なんでもう打ち明けておくが、実の所あの方は騎士ではない」
「え?」

 質問に対するドルギアさんの答えに、私はかなり驚いた。
 その彼の言い方が、今までとはまったく異なるものだったからだ。
 あの方、そうやって呼ぶということは、その人物はかなり高い身分の人物であると予想できる。
 そういえば、ドルギアさんは王都の騎士だ。ということは、もしかして彼はそこに住まう高い地位を持つ人物なのだろうか。

「ヒントとして、俺はロイヤルガードだと言っておこう」
「ロイヤルガードって……それじゃあ、やっぱり……」
「まあ、そういうことだ。秘密にしておいてくれよ?」
「……わかりました」

 ドルギアさんの言葉で、私は大体のことを理解した。
 彼がロイヤルガードであるということは、あの人物は王族だったということなのだろう。
 王族が、どうしてこの町にいるのか。それは、わからない。
 だが、私は随分ととんでもない人と話していたものである。結構、強気に発言していた気がするが、大丈夫なのだろうか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...