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13.第三王子の判断(モブ視点)

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「どういうことだ?」

 ズウェール王国の第三王子のグーゼスは、頭を抱えていた。
 彼は、今日もいつも通り過ごしていた。だが、いつもと違うことが起こっていたのである。

「これは……一体……」

 彼の前には、たくさんの辞表が置かれていた。それは、彼の部下達が置いていったものである。
 それは、最早数える気すら起きない程の数だ。それゆえ、グーゼスは焦っているのである。

「流石にまずいか……」

 彼は、今まで労働者達に代わりはいると言ってきた。現にそう思っているし、その認識は未だに改めていない。
 だが、流石の第三王子もこれだけの辞表はまずいと思っていた。ここまで一気にやめられたら、業務に支障が出る。ここまできて、彼はやっとそれを認識したのだ。

「どうすればいい……」

 グーゼスは悩んでいた。この状況を、どのようにすれば打開できるのかを。

「待てよ……」

 そこで、彼は思いつく。手っ取り早い方法があると、彼はそう思ったのである。
 それにより、彼は口の端を歪めた。やはり、自分は賢い。そう思いながら、下種な笑みを浮かべたのである。

「おい、お前、今から王城から誰も逃がすな」
「……どういうことですか?」
「この王城から、人を出すなと言っているんだ。門を閉じておき、決して開くな」

 グーゼスは、自分の傍についていた執事にそう指示を出した。
 ここまで王城から人が去られるのはまずい。それなら、逃がさなければいい。それが、彼の考えた最も単純な方法である。
 それは、非人道的な方法だった。無理やり王城に留めて、働かせる。そんな方法なのだ。
 だが、彼は一切躊躇しない。部下を道具としか思っていない彼にとって、それはまったく気にならないことだったのだ。



◇◇◇



 エルーシャとレイオスは、驚いていた。王城の門が、突如として閉ざされたからである。
 王都の喫茶店で落ち着いていた彼女らはその騒ぎを聞きつけて、王城の前まで来ていた。その顔には、動揺しかない。

「どういうことなの? これは、一体……」
「王城の門が閉ざされるなど、ただことではない……まさか、第三王子が何かをしたのか?」

 二人は、すぐに感づいた。グーゼスが何かをしたのだと。
 部下達の様子を見ていた彼らは、きっと彼ら彼女らが正しい選択を取ると思っていた。
 その結果を受けて、グーゼスが門を閉じた。それはあり得ない話ではないと思ったのである。

「あれだけ代わりはいると言っていたのに、いざとなったら閉じ込めるってこと?」
「そういうことだろうな……人がいなくなって困るのは、間違いなく奴だ」
「なんてことなの……」

 レイオスもエルーシャも、ここまでは予想していなかった。
 だが、実際に起こってみると理解できる。あのグーゼスなら、ここまでやりかねないと。
 それがわかって、二人は後悔する。こんなことなら、もっと手を回しておけばよかったと。
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