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14.聖女の苦労

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 聖女の仕事の中で、魔法に関するものについては、私にとって難しいものではなかった。
 優れた魔法使いであると自負していたので、それは元々心配していなかった。補佐であるキルスタインさんの助けもあるし、何も問題はないといえる。

 問題なのは、魔法に関わらない業務などだろうか。
 聖女というものは、国の象徴的な存在である。故に、様々な人とやり取りを交わさなければならないのだ。

「なんというか、人と話すというのは大変ですね。今までそんなことを思ったことはなかったのですけれど、最近はそう思います」
「人と話すのが大変という訳ではないのだろう。どちらかというと、人の顔色を見て話すのが大変だ。もちろん普段から気を遣うことはあっただろうが、立場を背負って話すということには、やはり特別な意味がある」

 民の人達と話したりするのは、特に問題があるという訳ではない。
 私も同じ立場だ。どういうことを話せばいいのか、それはある程度わかる。
 ただ、貴族の方々の相手は大変だ。滅茶苦茶気を遣うし、喋る度に神経をすり減らしていくことになる。

「……キルスタインさんは、流石ですよね。やっぱり貴族だから、そういう場数は踏んでいるんですか?」
「まあ、君よりは踏んでいるといえるだろうな。ただ、別に私もそういった場が得意という訳ではない。しかし、人は慣れていくものだ。君もまだ、経験が乏しいというだけだろう」

 キルスタインさんが補佐で、本当に良かったと思う。気心が知れた彼でなければ、私はもっと大変なことになっていたかもしれない。
 私が聖女を志した理由が、そもそも彼がここで働いているからだったのだが、それでも彼がこの地位にいてくれるのは幸運としか言いようがない。その辺りは、人事の人に感謝を述べたいくらいだ。

「それに貴族の方にも緊張している者がいることは認識してもらいたい。前にも言ったとは思うが、聖女というのは下手な貴族よりも力があるからな」
「ああなるほど、あちらとしても無礼があってはいけないということですか……でも、そんなに実感はないんですよね。私が下手な貴族よりも力があるなんて、あまり思えません」
「それも、その内実感できるようになるさ……まあ、権力を振るう時が来ればいいとは、あまり思わないが」
「……それもそうですね」

 聖女というものは、とてもすごい地位である。私はそれを、まだいまいち実感することができていなかった。
 その権力というものは、どれ程のものなのだろうか。私はそれについて少し考えながら、キルスタインさんと話すのだった。
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