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8.孤児院での暮らし

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 孤児院で暮らしている皆は、なんというか温かい子達ばかりだった。
 年上のエルシーとロストンとルーゼル、同い年のイルフィに年下のバリードとクラフィア、皆それぞれ事情があって、この孤児院にいるらしい。

「シスターエルティリナは寛大な人だから、気にしてはいないけれど、お世話になるのだからやっぱり教えはちゃんと守らないといけないと思うの」

 同い年ということもあって、私はイルフィから色々と教わることになった。
 彼女が持って来たのは、教本らしきものだ。教会であるのだから当然といえば当然だが、ここでは毎朝神に祈るのが通例であるらしい。

「基本的に、家事は分担して行うことになっているんだけど、料理だけはエルシー姉さんが基本的には担当してる」
「えっと、それはどうして?」
「姉さんが料理が好きで、一番味がおいしいからかな。特にバリードとクラフィアとかは、正直だからさ。他の人が作った時に、結構露骨に態度が違うから……」
「なるほど……」

 イルフィは、とても楽しそうに孤児院のことを話してくれた。
 その態度からは、ここにいる皆に対する愛情のようなものが伝わってくる。
 そこに今から入るのは、中々に難しいことかもしれない。まあその辺りは、上手くやっていくしかないのだろうが。

「……こういうことを聞いていいのかはわからないけど」
「うん?」
「イルフィは、いつからここにいるの?」
「ああ、そういうこと? 全然、聞いてくれていいよ。というか、他の皆も気にしないから、積極的に聞いてみて。皆自分のことは、知って欲しいと思っているだろうから」

 言いづらいことを聞いたかと思ったが、イルフィは笑顔を浮かべていた。
 ただその笑顔は、今までの快活な笑顔という訳ではない。聞かれても問題ないのは本当なのだろうが、やはり思う所がないという訳ではないのだろう。

「私がここに来たのは、今から五年前、お母さんが病で亡くなってからお世話になることになったの。そう考えると、なんだか不思議かもしれない。もう両親と過ごしたのと同じだけの時間を、ここで過ごしてることになる」
「えっと、お父さんは?」
「私が一歳になる頃に、魔物に襲われて亡くなったらしい。今は、二人とも同じ所で眠ってる」
「そっか……」

 イルフィの言葉からは、深い悲しみが伝わってくる。
 その気持ちが、わからないという訳ではない。私も、お父さんを亡くしているからだ。
 思えば、色々とあって悲しむ暇なんてなかった。だからだろうか、今更になってなんだか急に悲しくなってきた。
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