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4.理不尽な行い

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「な、なんてことをするんだ! お前、オルケンをっ……!」
「はあ……」

 町の人に詰められたラーンディスさんは、心底面倒くさそうにため息をついた。
 彼は、まだ剣を鞘に収めていない。だからだろうか、怒りながらもラーンディスさんに近寄ろうとするものはいなかった。

「一々うるさい奴らだな。覚悟もないなら、剣の前に立つなってのに」
「こんなことをして、どうなるかわかっているのか!」
「なんだ。俺のことを心配してくれているのかよ。意外に優しいのか?」
「なっ……!」

 ラーンディスさんは、周囲に対して煽るような笑みを浮かべていた。
 恐らく助けてもらっている立場である私からしても、その笑みはどうなのかと思った。少なくとも、あれだけのことをしておいてするべき笑みではないように思える。
 ただそれは、価値観の違いということなのかもしれない。なんというか、彼らと私達は生きている世界が違うような気がする。

「だけど、心配なんてしなくてもいい。お前達をいくら切った所で、罪になんかなりゃあしない。俺達はそういう身分だからな」
「み、身分だって?」
「身なりで気付いてもいいものだと思うがな。俺達は貴族だ。俺は侯爵家の令息、あっちは伯爵家の令息だ」

 身分を明かしたことによって、周囲は静まり返っていた。
 貴族というものに、平民が逆らうことはできない。それは流石に、私でも知っていることだ。だからこそ、誰も何も言えなくなっているのだろう。

 ただ貴族だからといって、ここまでしていいものだろうか。私の頭には、そのような考えが過っていた。
 なぜならこれは、いくらなんでも横暴だからだ。身分が上だからといって、切り捨てるなんて、それがまかり通っていいなんて、私は思えない。

「ラーンディスさん……」
「うん?」
「いくらなんでも、ひど過ぎます。貴族だからといって、平民を手にかけていいなんて、そんなのは間違っていると思います」
「おっと……」

 私はそれを口に出した。
 彼らに助けてもらったことには感謝している。だけど、私はこんなことを望んでいる訳ではない。

 これがまかり通ってしまったら、それこそ終わりだ。少なくとも私は、それがまかり通る世界で生きていきたいとは思えない。
 理不尽の辛さは、私が一番よく知っている。だからこれを言って、私がラーンディスさんに切り捨てられるとしても、口に出さずにはいられなかった。

「……お嬢さん、あんたは立派だな。あんたの言う通りだぜ。そんなのおかしいよなぁ」
「……え?」

 そこでラーンディスさんは、初めて笑顔を見せた。
 そして私は、彼の目の前にいる男性がゆっくりと立ち上がっていることを確認した。
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