家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗

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19.ぼんやりとした答え

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 私は、お姉様とともにお兄様の正面に座っていた。
 お兄様が婚約者と会って帰って来てから、一日後、私達は彼から話を聞くことにした。昨日からずっと気になっていたのである。

「それで、リフェルナ様はどんな人だったんですか?」
「聞かせてください、お兄様」
「あ、ああ……」

 私達の質問に、イルフェンお兄様は少し怯んでいた。
 私もウェリーナお姉様も、結構興味津々である。その勢いに、少し引いているのかもしれない。

「リフェルナ嬢は、非常に聡明な女性だった」
「聡明な女性……」
「ああ、自分の考えを持っている芯の通った女性だった。彼女となら、良き夫婦になれる。そう感じさせてくれる女性だ。父上もそういう所がわかっているから、俺の妻に彼女を選んだのだろう。その人を見る目は流石だといえる」

 お兄様は、非常にしっかりとした回答を返してくれた。
 リフェルナ様は、かなりいい人であるようだ。それは、一先ずは安心である。

 ただ、お兄様のこの回答は面白味がまったくない。
 なんというか、表面上をなぞっただけというか、そのような感想を抱いてしまう。

 そう思ったのは、お姉様も同じであるようだ。
 彼女も、少し訝しそうな顔をしている。

「お兄様、もう少し踏み入った感想などは、ありませんか?」
「踏み入った感想? それは、どういうことだ?」
「そうですね……例えば、どのような話から、そう思ったのですか?」
「色々と話を聞いて、その結果としてそのような感想を抱いたのだ」
「……そうですか」

 お姉様の質問によって、お兄様の様子が少しおかしいことがわかった。
 恐らく、彼は何かを隠している。リフェルナ様との間で、何か話したくないようなことがあったのだろう。

「もしかして……リフェルナ様に、妹の話とかしたのですか?」
「ぬっ……」
「ああ、図星みたいですね……」

 お姉様のさらなる質問に、お兄様はひどく動揺していた。
 私達のことをリフェルナ様に話した。その結果、お兄様がこのような反応をすることが起こったのだろう。

 基本的に、お兄様は優しく凛々しい方だ。
 ただ、私のことになると、お父様に似て結構気持ち悪い所もある。それを婚約者に見られるというのは、少々まずいことかもしれない。

「何があったんですか? この際ですから、もう話してください」
「……リフェルナ嬢と俺は、身の上話に花を咲かせていたのだ。それでお前達の話をしたら、彼女は随分と妹が好きなのですね、と言ってきたのだ」
「ああ……」

 お兄様は、露骨に落ち込んでいた。
 それは、そうだろう。リフェルナ様の言葉は、明らかにいいものではないからだ。
 どうやら、お兄様は婚約者との対面で失敗してしまったらしい。それは、なんというか、とても悲惨である。
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