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7.お父様の乱心
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「非常に単純な話ではあるが、年齢が考慮されたのだ。お前の婚約者は第三王子であるクレイド……彼は、お前と同い年だ」
「なるほど……」
お父様は、私にゆっくりとそう言ってきた。
私とウェリーナお姉様とは、四歳の差がある。その年齢差によって、私の方が婚約することになったようだ。
それは、些細な年齢差であるように思える。だが、王家としてはそうはいかなかったのだろう。
「まあ、その辺りは仕方ないことだ。先方がそれを望むなら、こちらは従う。それで何か不利益があるという訳でもない……」
「その割には、落ち込んでいますね?」
「いや、それは別問題だ……」
お父様は、先程からずっと暗い。
それは、私も気になっていたことだ。
何故、お父様がこんな感じなのか。それは理解できない訳ではない。
恐らく、彼は娘を嫁にやりたくないとか、そういう状態なのだろう。
貴族であるため、婚約は必至といえることだ。しかし、そこをお父様はまだ割り切れていないのだろう。
「私は、ウェリーナもエルミナもできることなら婚約させたくない」
「また、そんなことを言って……」
「……よく考えてみれば、婚約させる必要はないのではないか?この家に留まっても、私には一向に構わないのだから……」
「あなた、いい加減にしてください」
「うっ……」
乱心したお父様は、お母様に睨みつけられた。
流石にそれは怖かったのか、お父様は勢いを失う。
お父様は、時々このように暴走することがある。
そういう時には、お母様が諫めてくれるのだ。
そんな二人は、いい関係性を築けているということだろうか。いや、お母様の負担がただ大きいだけなのだろうか。
「な、何はともあれ、お前の婚約は決まったということだ……これから、色々と話は進んでいく。近い内に、クレイド王子殿下との顔合わせもあるだろう。ぬうっ……」
「あなた……」
「わかっている……色々と大変かもしれないが、頑張ってもらいたい。私からいえるのは、そんな所だ」
「はい……」
お父様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
正直な話、少し心配ではある。私の前世の記憶が確かなら、エルミナと婚約者の関係は最悪だったからだ。
クレイド王子殿下は、ゲームの攻略対象の一人である。
エルミナの婚約者だった彼は、彼女のことを軽蔑していた。
その理由は、単純だ。エルミナの性格が悪かったからである。
そのため、こちらの世界では大丈夫なはずだ。ただ、それでも少しだけ不安なのである。
「なるほど……」
お父様は、私にゆっくりとそう言ってきた。
私とウェリーナお姉様とは、四歳の差がある。その年齢差によって、私の方が婚約することになったようだ。
それは、些細な年齢差であるように思える。だが、王家としてはそうはいかなかったのだろう。
「まあ、その辺りは仕方ないことだ。先方がそれを望むなら、こちらは従う。それで何か不利益があるという訳でもない……」
「その割には、落ち込んでいますね?」
「いや、それは別問題だ……」
お父様は、先程からずっと暗い。
それは、私も気になっていたことだ。
何故、お父様がこんな感じなのか。それは理解できない訳ではない。
恐らく、彼は娘を嫁にやりたくないとか、そういう状態なのだろう。
貴族であるため、婚約は必至といえることだ。しかし、そこをお父様はまだ割り切れていないのだろう。
「私は、ウェリーナもエルミナもできることなら婚約させたくない」
「また、そんなことを言って……」
「……よく考えてみれば、婚約させる必要はないのではないか?この家に留まっても、私には一向に構わないのだから……」
「あなた、いい加減にしてください」
「うっ……」
乱心したお父様は、お母様に睨みつけられた。
流石にそれは怖かったのか、お父様は勢いを失う。
お父様は、時々このように暴走することがある。
そういう時には、お母様が諫めてくれるのだ。
そんな二人は、いい関係性を築けているということだろうか。いや、お母様の負担がただ大きいだけなのだろうか。
「な、何はともあれ、お前の婚約は決まったということだ……これから、色々と話は進んでいく。近い内に、クレイド王子殿下との顔合わせもあるだろう。ぬうっ……」
「あなた……」
「わかっている……色々と大変かもしれないが、頑張ってもらいたい。私からいえるのは、そんな所だ」
「はい……」
お父様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
正直な話、少し心配ではある。私の前世の記憶が確かなら、エルミナと婚約者の関係は最悪だったからだ。
クレイド王子殿下は、ゲームの攻略対象の一人である。
エルミナの婚約者だった彼は、彼女のことを軽蔑していた。
その理由は、単純だ。エルミナの性格が悪かったからである。
そのため、こちらの世界では大丈夫なはずだ。ただ、それでも少しだけ不安なのである。
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