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2.整理してみると
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私は、自分が生まれ変わったということを理解した。
私は、とある乙女ゲームの悪役令嬢であるエルミナ・サディードに生まれ変わったのだ。
前世でしていたゲームの登場人物に生まれ変わっている。それは、なんというかとても奇妙な話だ。
だが、私があのゲームのエルミナであることは間違いないだろう。多少年齢の差はあるが、今の私の見た目は、ゲームの彼女とそっくりだ。
「エルミナ・サディード公爵令嬢。主人公メリーナと敵対する悪役令嬢……彼女は、些細なことで主人公を敵視して、そこから虐め抜く」
私は、改めてエルミナのことを整理してみることにした。
頭の中を整理するために、これは必要な工程だ。
「エルミナは、主人公が誰と結ばれるか……ルートによって、様々な結末を迎える。例えば、犯罪をして逮捕される。例えば、あまり関わることなく終わる」
エルミナという令嬢は、物語でいう所の悪役である。
主人公と攻略対象の恋愛を邪魔したり、主人公を攻撃したりする。そんな立場の人物なのだ。
そんな彼女の末路は、明るいものではない。
大抵の場合、罰を受けるのだ。
「その中で、一番厳しい罰は、死……彼女は、禁断の魔法に手を染めて、その肉体を消滅させる」
エルミナは、セリオルという攻略対象のルートで死んでしまう。
闇の魔法に手を染めた彼女は、灰となってこの世界から消えてしまったのだ。
簡単に言ってしまえば、それは自業自得である。
彼女は、主人公を亡き者にするために闇の魔法に手を染めた。その結果として報いを受けた。ただ、それだけである。
「ただ、そのルートでは彼女の過去が明かされる。彼女は、家族からも婚約者からも愛されていなかった」
エルミナは悪人だ。それは、間違いない。
だが、そう至るまでには色々なことがあったのだ。
彼女の家庭環境は、決していいものではなかった。
両親や兄弟から、ほとんど虐待のような扱いを受けていた彼女は、だんだんと歪んでいったのだ。
ゲームの中で、主人公のメリーナはそれを追体験することになる。
ひょんなことからエルミナの部屋を訪ねた彼女は、その場所に残された怨念の魔力によって、彼女の過去を知るのだ。
その結果、メリーナはエルミナに同情する。
彼女にも事情があったのだと涙を流す。自身が、とてもひどい扱いを受けたというのに。
「優しい主人公なんだよね……まあ、ちょっと理解できない所がない訳でもないけど」
メリーナの感情は、わからない訳ではない。
だが、ゲームの中でのエルミナからの扱いを考えると、それでも同情できるだろうかと思ったりする。
その辺りは、納得できるかどうかは微妙な所だろう。しかし、それは今重要なことではない。
「問題は、エルミナのこと……彼女の家庭環境は荒れていた」
今問題だったのは、エルミナの家庭環境のことである。
彼女は、家族からひどい扱いを受けていた。それによって、歪んでしまったのだ。
「……でも、そんなことないんだよね。いや、それどころか……」
ただ、今の私は家族からひどい扱いなんて受けていない。
それどころか、私は溺愛されているのだ。
その差というものが、よくわからなかった。
私が今生きているこの世界は、ゲームの中とは少し違う世界なのかもしれない。
私は、とある乙女ゲームの悪役令嬢であるエルミナ・サディードに生まれ変わったのだ。
前世でしていたゲームの登場人物に生まれ変わっている。それは、なんというかとても奇妙な話だ。
だが、私があのゲームのエルミナであることは間違いないだろう。多少年齢の差はあるが、今の私の見た目は、ゲームの彼女とそっくりだ。
「エルミナ・サディード公爵令嬢。主人公メリーナと敵対する悪役令嬢……彼女は、些細なことで主人公を敵視して、そこから虐め抜く」
私は、改めてエルミナのことを整理してみることにした。
頭の中を整理するために、これは必要な工程だ。
「エルミナは、主人公が誰と結ばれるか……ルートによって、様々な結末を迎える。例えば、犯罪をして逮捕される。例えば、あまり関わることなく終わる」
エルミナという令嬢は、物語でいう所の悪役である。
主人公と攻略対象の恋愛を邪魔したり、主人公を攻撃したりする。そんな立場の人物なのだ。
そんな彼女の末路は、明るいものではない。
大抵の場合、罰を受けるのだ。
「その中で、一番厳しい罰は、死……彼女は、禁断の魔法に手を染めて、その肉体を消滅させる」
エルミナは、セリオルという攻略対象のルートで死んでしまう。
闇の魔法に手を染めた彼女は、灰となってこの世界から消えてしまったのだ。
簡単に言ってしまえば、それは自業自得である。
彼女は、主人公を亡き者にするために闇の魔法に手を染めた。その結果として報いを受けた。ただ、それだけである。
「ただ、そのルートでは彼女の過去が明かされる。彼女は、家族からも婚約者からも愛されていなかった」
エルミナは悪人だ。それは、間違いない。
だが、そう至るまでには色々なことがあったのだ。
彼女の家庭環境は、決していいものではなかった。
両親や兄弟から、ほとんど虐待のような扱いを受けていた彼女は、だんだんと歪んでいったのだ。
ゲームの中で、主人公のメリーナはそれを追体験することになる。
ひょんなことからエルミナの部屋を訪ねた彼女は、その場所に残された怨念の魔力によって、彼女の過去を知るのだ。
その結果、メリーナはエルミナに同情する。
彼女にも事情があったのだと涙を流す。自身が、とてもひどい扱いを受けたというのに。
「優しい主人公なんだよね……まあ、ちょっと理解できない所がない訳でもないけど」
メリーナの感情は、わからない訳ではない。
だが、ゲームの中でのエルミナからの扱いを考えると、それでも同情できるだろうかと思ったりする。
その辺りは、納得できるかどうかは微妙な所だろう。しかし、それは今重要なことではない。
「問題は、エルミナのこと……彼女の家庭環境は荒れていた」
今問題だったのは、エルミナの家庭環境のことである。
彼女は、家族からひどい扱いを受けていた。それによって、歪んでしまったのだ。
「……でも、そんなことないんだよね。いや、それどころか……」
ただ、今の私は家族からひどい扱いなんて受けていない。
それどころか、私は溺愛されているのだ。
その差というものが、よくわからなかった。
私が今生きているこの世界は、ゲームの中とは少し違う世界なのかもしれない。
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