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8.新たな生活

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 私は、パステルト子爵家の領地のとある町に来ていた。
 これから私は、この町を拠点として生活をするつもりだ。

 パステルト子爵とお父様は旧知の仲であり、色々と便宜を図ってもらえるだろうということで、私はこの町で暮らす運びとなった。
 そういった後ろ盾があるというのは、やはりありがたいものだ。余程のことがなければ頼ったりするつもりはないが、いざという時に拠り所があるというだけで安心できる。

 私は、町の中心部からは少し離れた住宅街にある家を与えられた。お父様が、この家を買ってくれたのだ。
 そこまでしてもらえるとは思っていなかったため、初めは少し面食らった。ただ、地に足をつけて暮らすことができるというのは、やはりありがたいものだ。

「イルファリア様、お荷物はこちらでよろしいでしょうか?」
「ああ、ええ、その辺りに置いておいてもらえると助かります、ヴァルキードさん」
「お嬢様、私は家を掃除してきますね。結構埃っぽかったですから」
「お願いします、アルメリアさん」

 そして、お母様の厚意で、私は二人の使用人とともに暮らすことになった。
 一人は男性で、ヴァルキードさん。もう一人は女性で、アルメリアさん。二人は姉弟であり、ファルドラ伯爵家に仕えているメイドのエメラリアさんの孫だ。信頼できる人物として、彼女がお母様に紹介したそうである。

「でも、お嬢様はやめていただけませんか。繋がりがなくなった訳ではありませんが、私はもうファルドラ伯爵家の一員ではないのですし」
「私の雇用主は奥様ですから、イルファリア様のことはお嬢様と呼ぶのが適切であると認識していますが……」
「ああなるほど、確かに言われてみればそうですね」
「もちろん、イルファリア様が嫌だというならやめます」
「……いえ、なんというか、神経質になり過ぎていました。お嬢様で大丈夫ですよ」

 メイドのアルメリアさんは、とても陽気な方だった。
 顔つきはにているが、物静かなエメラリアさんの孫とは正反対の性格といえるだろう。

 一方で、ヴァルキードさんは祖母に似て物静かである。ただこれは、経験値の差というだけなのかもしれない。
 アルメリアさんは私よりも年上だが、ヴァルキードさんは年下だ。単純に使用人としての歴も違う訳だし、緊張して物静かというだけかもしれない。

 何はともあれ、私の新生活が始まった。
 これから色々と苦労はあると思うが、まあ恐らく大丈夫だろう。
 そんな風に少し楽観的に考えながら、私は荷物の封を切るのだった。
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