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7.母との対話

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「イルファリア、本当に行ってしまうの?」
「ええ、行きます。もう決めたことですから」
「そう、あなたはいつもそうやって、大胆な決断をするのね。私には何も相談しないで……」

 私の決断に対して、お母様はゆっくりとため息をついていた。
 事後承諾になってしまったことは、申し訳ないと思っている。ただ、今回は早さが肝心だ。エレシアの意表も突きたかったし、これも仕方ないことである。

「まあ、今生の別れという訳ではありませんから、あまり悲しまないでください」
「今生の別れであってたまるものですか。手紙でもなんでもいいから、どこで何をしているのかは、必ず報告しなさい」
「肝に銘じておきます」

 お母様は、私のことをとても心配してくれているようだった。
 それは、とてもありがたいことである。お父様も心配してくれていたし、私は両親に恵まれていると思う。
 その両親に対して、勝手なことをしている自覚はある。ただ、これに関しては私とエレシアの問題だ。今後のためにも、私はこの判断が間違っているとは思っていない。

「そう言って連絡を寄越してこないのが、イルファリアなのよね」
「いえ、お母様、流石に私でも連絡くらいはしますよ。これはあくまでも、ファルドラ伯爵家の体裁として私が出て行く方がいいのであって……」
「エメラリアさん、少し頼みたいことがあるのだけれど」

 そこでお母様は、私の言葉を聞き流しながら、近くにいたメイドに話しかけた。
 そのメイドは、エメラリアさんというメイドさんである。ファルドラ伯爵家でも古株で、お母様が嫁に来た頃からずっと仕えている人だ。

「はい、なんでしょうか?」
「この子に使用人をつけておきたいのよ。誰かいい人はいないかしら? 信頼できる人がいいのだけれど」
「お、お母様」

 エメラリアさんへの頼みごとに、私は少し面食らってしまう。
 そのような頼みをされるのはありがたいのだが、少し困る。なぜなら私は、これから使用人を雇う余裕がないような生活を始めるからだ。

「イルファリア、言っておくけど、これは私が雇うということよ。私からの選別とでも思ってちょうだい」
「一体いつまで雇うつもりなのですか?」
「さあ、それは私の判断次第ね……でも、そうしておけば、あなたの近況は確実に知れるでしょう?」
「それはそうかもしれませんが……」

 お母様は、強気に笑みを浮かべていた。
 その笑みに対して、私は何も言えなくなってくる。
 そういえば、お母様はそういう人だった。一度言い出したら聞いてくれないし、この提案は受け入れるしかないだろう。
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