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6.もたらされた婚約
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「婚約、ですか?」
リヴェルト伯爵家に戻って来た私は、お父様から驚くべきことを告げられた。
私の婚約が決まった。それは信じられないことである。妹のプレリアのことを常に優先するお父様が、彼女よりも先に私の婚約を決めるなんて思っていなかったからだ。
「先方がそう言っているのだから、仕方のないことだ。本来であるならば、プレリアの方を決めるつもりだった……ああ、もっとも、お前は嫁ぐことになるのだぞ? このリヴェルト伯爵家をお前になどやるつもりはない。伯爵家はプレリアのものになるのだからな」
お父様は、極めて不愉快そうに言葉を発していた。
それはいつも通りの態度だが、今は少しだけ安心できる。これがお父様にとって不本意なことでなければ、疑ってかからなければならなかったからだ。
要するに婚約の話をしていた家が、婿を出すつもりがなかったということなのだろう。嫁が欲しいという話には、私を出すしかなかったのだ。
「……プレリアは、そのことに納得しているのですか?」
「うん? ああ、そのことなら心配はないさ。お前よりも先に話は通してある。やっと鬱陶しい姉がいなくなるのだと、喜んでいた」
プレリアの話を振ると、お父様は気色の悪い笑顔を見せた。
それもいつも通りのことだ。お父様は、妹のことを溺愛している。彼女のことを甘やかし、何でも買ってあげていた。
そういった甘やかしもあったからこそ、プレリアはひどく冗長しているといえる。彼女はとても、わがままな妹なのだ。
「私の婚約者がどなたかを教えていただいてもよろしいでしょうか?」
「……ふん、先方に無礼があってはならないからな。特別に教えてやるとしよう。お前が嫁ぐのはベレイン伯爵家だ。嫡子の名前はバルーガ、中々に見所のある男だ」
「バルーガ様、ですか……」
ベレイン伯爵家のバルーガ様とは、何度か話す機会があった。
彼は、良い人であるとは言えない。中々に苛烈な人だったと記憶している。
とはいえ、少なくとも私に対しては紳士だった。そこから考えると、結婚しても特に問題はないといえるだろうか。
もっとも、私に婚約をどうこうする権利があるという訳ではない。
それは別に、このリヴェルト伯爵家に限った話ではないだろう。どの家の令嬢も、結婚については親に従うはずだ。
「近々、バルーガがこの家を訪ねて来る。その時にはきちんと挨拶することだな。余計なことは言うんじゃないぞ?」
「そんなつもりはありませんよ。きちんと挨拶するつもりです」
私はお父様の言葉に、ゆっくりと首を振った。
自分達がやっていることが、ひどいことだとわかっていながら続ける。そんなお父様達は、最低な人達だ。
だがだからといって、助けを求めようとは思わない。このまま婚約して家を出て行けるなら、私にとってはそれで良いからだ。下手にことを荒立てる必要はない。そもそも話してバルーガ様が助けてくれるかも、わからない訳だし。
リヴェルト伯爵家に戻って来た私は、お父様から驚くべきことを告げられた。
私の婚約が決まった。それは信じられないことである。妹のプレリアのことを常に優先するお父様が、彼女よりも先に私の婚約を決めるなんて思っていなかったからだ。
「先方がそう言っているのだから、仕方のないことだ。本来であるならば、プレリアの方を決めるつもりだった……ああ、もっとも、お前は嫁ぐことになるのだぞ? このリヴェルト伯爵家をお前になどやるつもりはない。伯爵家はプレリアのものになるのだからな」
お父様は、極めて不愉快そうに言葉を発していた。
それはいつも通りの態度だが、今は少しだけ安心できる。これがお父様にとって不本意なことでなければ、疑ってかからなければならなかったからだ。
要するに婚約の話をしていた家が、婿を出すつもりがなかったということなのだろう。嫁が欲しいという話には、私を出すしかなかったのだ。
「……プレリアは、そのことに納得しているのですか?」
「うん? ああ、そのことなら心配はないさ。お前よりも先に話は通してある。やっと鬱陶しい姉がいなくなるのだと、喜んでいた」
プレリアの話を振ると、お父様は気色の悪い笑顔を見せた。
それもいつも通りのことだ。お父様は、妹のことを溺愛している。彼女のことを甘やかし、何でも買ってあげていた。
そういった甘やかしもあったからこそ、プレリアはひどく冗長しているといえる。彼女はとても、わがままな妹なのだ。
「私の婚約者がどなたかを教えていただいてもよろしいでしょうか?」
「……ふん、先方に無礼があってはならないからな。特別に教えてやるとしよう。お前が嫁ぐのはベレイン伯爵家だ。嫡子の名前はバルーガ、中々に見所のある男だ」
「バルーガ様、ですか……」
ベレイン伯爵家のバルーガ様とは、何度か話す機会があった。
彼は、良い人であるとは言えない。中々に苛烈な人だったと記憶している。
とはいえ、少なくとも私に対しては紳士だった。そこから考えると、結婚しても特に問題はないといえるだろうか。
もっとも、私に婚約をどうこうする権利があるという訳ではない。
それは別に、このリヴェルト伯爵家に限った話ではないだろう。どの家の令嬢も、結婚については親に従うはずだ。
「近々、バルーガがこの家を訪ねて来る。その時にはきちんと挨拶することだな。余計なことは言うんじゃないぞ?」
「そんなつもりはありませんよ。きちんと挨拶するつもりです」
私はお父様の言葉に、ゆっくりと首を振った。
自分達がやっていることが、ひどいことだとわかっていながら続ける。そんなお父様達は、最低な人達だ。
だがだからといって、助けを求めようとは思わない。このまま婚約して家を出て行けるなら、私にとってはそれで良いからだ。下手にことを荒立てる必要はない。そもそも話してバルーガ様が助けてくれるかも、わからない訳だし。
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