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 私は、アロード様とイルファー様の話し合いに立ち会うことになった。
 最初は緊張していたイルファー様だったが、アロード様の言葉により、少しだけ警戒は解けたようである。

「さて、何から話そうか……いや、よそうか。単刀直入に言わせてもらう。僕は、君が思っているような人間ではない」
「どういう意味ですか?」
「完璧な人間ではないということさ」
「む……」

 アロード様は、最初に結論を言った。
 紆余曲折するよりも、直球で言った方がいいと思ったのだろう。
 その言葉に、イルファー様の表情は歪む。あまり、信じられていないようだ。

「謙遜する必要はありません。あなたが完璧な人間であるということは、もうわかっています。この国暮らすほとんどの人が、それは理解しているでしょう」
「違う。それは勘違いだ。僕はそんなに優秀な人間ではない。もっと、弱々しい人間なのさ」
「弱々しい人間? あなたが……?」

 イルファー様は、アロード様の言葉をまったく信用していなかった。
 本当に、彼の中では完璧なのだろう。その完璧な人間が、弱々しいなどとは、そう簡単に受け入れられないのである。

「例えば、僕は君との関係に悩んでいる。君が何を思っているのか、それは想像できるけど、どうすればいいのかわからないのさ」
「どういうことです?」
「君とのこの奇妙な関係に、僕は終止符を打ちたい。だけど、その方法がわからなかった。いや、わからなかった訳ではないかな? でも、そこから目を逸らしていたのは確かさ」
「それは……」

 アロード様の言葉に、イルファー様は驚いていた。
 簡単なことだが、そこには気づいていなかったのだろう。
 だが、言われてみれば納得できるはずだ。完璧なはずの彼が、自分との関係で悩んでいる。そこに違和感を覚えるはずだ。

「僕が完璧な人間なら、君との関係も簡単に解決できるはずだろう? 僕には、それができなかったのさ。つまり、僕は完璧な人間ではない。そういう理解ができないかい?」
「……確かに、そうかもしれません。ですが、それ以外のあなたは完璧な人間です。私より優秀であることは間違いありません」
「……なるほど、君はそういう結論を出すのだね」

 イルファー様は、アロード様の理論を完全に受け入れなかった。
 聡明な彼にしては、かなり強情な反応だ。それ程に、自身の中にある思いが強いのだろうか。

「それなら、もう少しだけ話をさせてもらおうか。僕にとって、苦い思い出だけど、君には話しておくべきだろう」
「何を……」

 しかし、それでもアロード様は折れなかった。
 まだ、イルファー様に話せることがあるらしい。
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