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しおりを挟むイルファー様を見送った後、私はルヴィドと話すことになった。何か話したいことがあるらしいのだ。
話す場所は、私の部屋になった。誰にも聞かれたくない話であるらしく、個室で話すことになったのだ。
「それで、ルヴィドは何を話したいの?」
「……これは、姉さん以外には話せないことだ。耳を貸し貰えるかい?」
「耳……わかったわ」
ルヴィドは、私の傍に寄ってきた。
どうやら、外に漏れないように小声で話すつもりらしい。
それだけ聞かれたくないと思っているという事実から、ある程度内容は予測である。
恐らく、彼はイルファー様の私兵だった時に関する話をしようとしているのだ。それは、他の人には絶対に聞かれてはいけないことである。この対応にも、頷けるものだ。
「実は、イルファー様のことで姉さんに頼みたいことがあるんだ」
「イルファー様のこと? 何かしら?」
私の予想通り、ルヴィドは私兵だった時に関することを話し始めた。
だが、その内容は少し意外である。彼に関する頼みごとは、一体どういうことなのだろうか。
「イルファー様は、とても聡明なお方だ。だけど、あの人にはある悩み……というか、コンプレックスというのだろうか。そういうものがあるんだ」
「……もしかして、お兄様とのこと?」
「ああ、知っていたんだね? それなら、話が早いかな?」
ルヴィドの話は、先程イルファー様から聞いたことだった。
兄との確執のようなもの。それを、ルヴィドは解決して欲しいのだろう。
「イルファー様は、自分を兄に劣る存在だと思っている。それ自体が、悪いことという訳ではないだろう。でも、本人とすれ違っていることは問題だと思うんだ」
「本人?」
「第一王子のアロード様さ。彼本人は、イルファー様との間にある壁に悩んでいるようなんだ」
「アロード様……」
どうやら、イルファー様は兄であるアロード様とすれ違っているようだ。
私は、アロード様が具体的にどのような人物かはあまり知らない。だが、弟の口振りからして、弟とわかり合いたいと思っているような人物であるようだ。
優しい人なのだろうか。いや、弟思いな人なのかもしれない。よくわからないが、悪い人ではないことは確かだろう。
「とにかく、姉さんには二人の間にある確執をなんとかして欲しいんだ」
「なんとか? 私が?」
「ああ、このまま決定的にすれ違っていると、いいことにはならない。その前に、姉さんに止めてもらいたいんだ」
ルヴィドの言葉に、私は少し悩む。
もちろん、イルファー様にはお世話になったし、できる限りのことはしてあげたい。だが、そのようなおせっかいをしていいのだろうか。
「とりあえず、一度王城に行ってみたくれないかな? 婚約者である姉さんなら、あそこに普通に行ける。そこで、アロード様と会えば、色々と理解できると思うよ」
「え、ええ……」
とりあえず、私は王城に行くことにした。
弟に押し切られたというのもあるが、一旦様子を見てみようと思ったのだ。
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