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私は、小さな頃から心の声が聞こえる。
他人が考えていることが、頭の中に流れ込んでくるのだ。
それは、便利な力だと思われるかもしれない。だが、この力があって良かったと思うことの方が少ないくらいである。
誰かが何かを言っても、心の声が聞こえるのだ。
だから、その相手が裏で何を考えているか全てわかってしまう。それは、人を素直に信じられなくなることなのである。
とても優しい人でも、裏ではとても嫌なことを言っていたということは何度もあった。
損得なく仲良くなりたいと言ってきた子が、実は家同士のことを考えている打算的な人物だったということも少なくはない。
この力があることで、私は人を信頼することができなくなっていた。
それは、家族であっても変わらない。裏で色々と考えていることを知っていると、親も兄弟も普通の目では見られなくなるのだ。
この力があるということは、生きにくくなるということである。
人を心から信じられない。そんな人生を、私は送ってきたのだ。
「俺の名前は、ロウィード・ルガレン。ルガレン伯爵家の令息だ」
(俺の名前は、ロウィード・ルガレン。ルガレン伯爵家の令息だ)
「え?」
そんな私が出会ったのは、ロヴィードという男の子だった。
彼は、今まで会ってきた人物とまったく違った。その心の声が、とても特別なものだったのである。
「なんだか、浮かない顔をしているが、どうかしたのか?」
(なんだか、浮かない顔をしているが、どうかしたのか?)
「あ、えっと……」
その男の子は、喋っていることを同じことを考えていた。
私に聞こえてくる声というのは、色々ある。だが、そのように喋っていることと一致していることは初めてだったのだ。
私は、とても動揺していた。その心の声が、どういうことなのか考えて、とても混乱したのである。
(うん? 俺は何か変なことを言ってしまったのだろうか? こういう時には、自己紹介して話しかければいいと聞いていたんだが……)
動揺する私に対して、ロウィードも動揺していた。
どうやら、彼の中にあるセオリーが失敗したため、混乱しているようだ。
この時の心の声は、他の人と変わらないものである。ということは、彼は喋る時に喋ることと同じことを考えているということだ。
「ふふっ……」
「え? なんで笑うんだ?」
(え? なんで笑うんだ?)
つまり、彼はとても素直な子であるということである。
裏がまったくない真っ直ぐな子に、私は出会ったのだ。
私にとって、それは運命的な出会いだったのかもしれない。そんな数少ない存在を巡り会えたのは、奇跡とすらいえるだろう。
他人が考えていることが、頭の中に流れ込んでくるのだ。
それは、便利な力だと思われるかもしれない。だが、この力があって良かったと思うことの方が少ないくらいである。
誰かが何かを言っても、心の声が聞こえるのだ。
だから、その相手が裏で何を考えているか全てわかってしまう。それは、人を素直に信じられなくなることなのである。
とても優しい人でも、裏ではとても嫌なことを言っていたということは何度もあった。
損得なく仲良くなりたいと言ってきた子が、実は家同士のことを考えている打算的な人物だったということも少なくはない。
この力があることで、私は人を信頼することができなくなっていた。
それは、家族であっても変わらない。裏で色々と考えていることを知っていると、親も兄弟も普通の目では見られなくなるのだ。
この力があるということは、生きにくくなるということである。
人を心から信じられない。そんな人生を、私は送ってきたのだ。
「俺の名前は、ロウィード・ルガレン。ルガレン伯爵家の令息だ」
(俺の名前は、ロウィード・ルガレン。ルガレン伯爵家の令息だ)
「え?」
そんな私が出会ったのは、ロヴィードという男の子だった。
彼は、今まで会ってきた人物とまったく違った。その心の声が、とても特別なものだったのである。
「なんだか、浮かない顔をしているが、どうかしたのか?」
(なんだか、浮かない顔をしているが、どうかしたのか?)
「あ、えっと……」
その男の子は、喋っていることを同じことを考えていた。
私に聞こえてくる声というのは、色々ある。だが、そのように喋っていることと一致していることは初めてだったのだ。
私は、とても動揺していた。その心の声が、どういうことなのか考えて、とても混乱したのである。
(うん? 俺は何か変なことを言ってしまったのだろうか? こういう時には、自己紹介して話しかければいいと聞いていたんだが……)
動揺する私に対して、ロウィードも動揺していた。
どうやら、彼の中にあるセオリーが失敗したため、混乱しているようだ。
この時の心の声は、他の人と変わらないものである。ということは、彼は喋る時に喋ることと同じことを考えているということだ。
「ふふっ……」
「え? なんで笑うんだ?」
(え? なんで笑うんだ?)
つまり、彼はとても素直な子であるということである。
裏がまったくない真っ直ぐな子に、私は出会ったのだ。
私にとって、それは運命的な出会いだったのかもしれない。そんな数少ない存在を巡り会えたのは、奇跡とすらいえるだろう。
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