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40.良き夫婦として
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「……本当に良かったのか? なんて、今更聞いても仕方ないのかもしれないが」
「ええ、私にとってはこの形が一番良いと思っています」
ギーゼル様は、執務室の机の前でため息をついていた。
色々と気になっていることがあるということだろう。彼は中々に心配性だ。
「私には、貴族の家のことがそれ程わかることではありませんからね。グライム辺境伯やギーゼル様のような方々が実権を握ってくれる方が都合が良いのです」
「そうは言っても……」
「私は、ギーゼル様のことを信頼しています。もちろん、グライム辺境伯のこともです。悪いようにはしないと思っています」
「いや、それは危険な考え方だと思うが……」
「私は別に、このアンデルト伯爵家を守っていきたいという気持ちが強くありませんから。最も重要なのは、領地の方々を守ることです」
私がアンデルト伯爵家を存続させて、ギーゼル様を婿として迎えたのは、領地の人々の暮らしを守りたいからという気持ちからだ。
アンデルト伯爵家そのものを守りたいという気持ちが、ないという訳ではない。お父様はともかく、先祖には多少の敬意というものがあるからだ。
しかしそれは、最優先事項ではない。あくまでも二番目に大切なことだ。一番目に優先するべきことを、私は重要視している。
「その辺りの割り切りに関して、アルティリア嬢は思い切りがいいな」
「まあ、それについてはアンデルト伯爵家に良い思い出がないからでしょうね」
ギーゼル様の言葉に、私は苦笑いを浮かべていた。
私は、普通の貴族ではない。特殊な出自で、特殊な扱いを受けてきた。そういう所で、普通の貴族とは異なる考え方をしてしまうのかもしれない。
それが良いことなのか悪いことなのかは、よくわからない。ただ、人を見る目はあるつもりだ。少なくともギーゼル様は、信頼できる人であると知っている。
「……それなら、これからは良い思い出を作っていかなければならないな」
「え?」
「……あ、いや」
ギーゼル様の言葉に、私は思わず変な声を出してしまった。
それにギーゼル様は、驚いているようだ。彼の方も、自分が言っていることに対して多少の動揺があったようだ。
私は、そんなギーゼル様に対して笑顔を浮かべている。彼の言葉は、私にとって嬉しいものだったからだ。
「ありがとうございます、ギーゼル様。期待していますね」
「……期待されたなら、仕方ないか。いや、それは流石に消極的だな」
「まあ、そんなに気負うことでもないですけれど」
「幸せにしてみせるさ」
「……よろしくお願いします」
そう言って私とギーゼル様は、笑い合った。
彼となら、これからも良い関係を築いていけそうだ。夫婦として、二人でしっかりと歩んでいくとしよう。彼の笑顔を見ながら、私はそんなことを思うのだった。
END
「ええ、私にとってはこの形が一番良いと思っています」
ギーゼル様は、執務室の机の前でため息をついていた。
色々と気になっていることがあるということだろう。彼は中々に心配性だ。
「私には、貴族の家のことがそれ程わかることではありませんからね。グライム辺境伯やギーゼル様のような方々が実権を握ってくれる方が都合が良いのです」
「そうは言っても……」
「私は、ギーゼル様のことを信頼しています。もちろん、グライム辺境伯のこともです。悪いようにはしないと思っています」
「いや、それは危険な考え方だと思うが……」
「私は別に、このアンデルト伯爵家を守っていきたいという気持ちが強くありませんから。最も重要なのは、領地の方々を守ることです」
私がアンデルト伯爵家を存続させて、ギーゼル様を婿として迎えたのは、領地の人々の暮らしを守りたいからという気持ちからだ。
アンデルト伯爵家そのものを守りたいという気持ちが、ないという訳ではない。お父様はともかく、先祖には多少の敬意というものがあるからだ。
しかしそれは、最優先事項ではない。あくまでも二番目に大切なことだ。一番目に優先するべきことを、私は重要視している。
「その辺りの割り切りに関して、アルティリア嬢は思い切りがいいな」
「まあ、それについてはアンデルト伯爵家に良い思い出がないからでしょうね」
ギーゼル様の言葉に、私は苦笑いを浮かべていた。
私は、普通の貴族ではない。特殊な出自で、特殊な扱いを受けてきた。そういう所で、普通の貴族とは異なる考え方をしてしまうのかもしれない。
それが良いことなのか悪いことなのかは、よくわからない。ただ、人を見る目はあるつもりだ。少なくともギーゼル様は、信頼できる人であると知っている。
「……それなら、これからは良い思い出を作っていかなければならないな」
「え?」
「……あ、いや」
ギーゼル様の言葉に、私は思わず変な声を出してしまった。
それにギーゼル様は、驚いているようだ。彼の方も、自分が言っていることに対して多少の動揺があったようだ。
私は、そんなギーゼル様に対して笑顔を浮かべている。彼の言葉は、私にとって嬉しいものだったからだ。
「ありがとうございます、ギーゼル様。期待していますね」
「……期待されたなら、仕方ないか。いや、それは流石に消極的だな」
「まあ、そんなに気負うことでもないですけれど」
「幸せにしてみせるさ」
「……よろしくお願いします」
そう言って私とギーゼル様は、笑い合った。
彼となら、これからも良い関係を築いていけそうだ。夫婦として、二人でしっかりと歩んでいくとしよう。彼の笑顔を見ながら、私はそんなことを思うのだった。
END
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楽しく読まさせていただいています
ありがとうございます
確認なのですが、18の途中から出てくるギルーゼはギーゼルのことでしょうか?それとも別人?
今19まで読んで、これから続きを読まさせていただくんですが、私の思い違いでしたら申し訳ありません
これからも楽しみにしています p(^^)q
感想とご指摘ありがとうございます。
この作品で楽しんでいただけているなら嬉しいです。
名前については、ギーゼルを途中から間違えていました。
混乱させてしまい、申し訳ありません。
修正させていただきます。