27 / 40
27.話を終えて
しおりを挟む
話を終えた私とギーゼル様は、アンデルト伯爵家の裏口に向かっていた。
入って来たのもそこからだ。私達の存在というものは、外部に知られてはならないものなのである。
「まあ、なんとかなったと思って良いんだろうな……」
「ええ、流石のアンデルト伯爵夫人も、グライム辺境伯家を敵に回すことは避けたいはずですからね」
「ああ、そこまでの馬鹿ではないだろうな。色々と問題はあるようだが、伯爵夫人であるということは間違いないらしい」
ギーゼル様は、アンデルト伯爵夫人のことをそれなりに評価しているようだった。
それについては、私も同意だ。彼女は苛烈な部分はあるものの、愚か者という訳ではない。今回の取引というものを、きちんと認識しているだろう。
故に私とブレットンさんの安全は、確保できているといえる。もちろん、これから情勢が変わることがないとは言い切れないが、現状特に問題などはないだろう。
「メアリーというメイドも連れていくとしよう。彼女もどちらかというとこちら側であると、アンデルト伯爵夫人も判断するだろうからな……その辺りについて、問題はないだろうか?」
「彼女はラオート男爵家の三女ですから、ここから離れるということにそれ程大きな問題はないと思います。もちろん、ラオート男爵家に話を通しておく必要はあると思いますが」
「その点については、父上が嬉々として行うだろうから問題はないだろう。こちらに仕えられないというなら、別の雇い先を探すだろうさ」
グライム辺境伯は、ブレットンさんのことを無二の友だと思っている。今回の一件において、彼はなんでもしてくれるだろう。
メアリーのことも、きっと手厚く保護してくれるはずだ。ブレットンさんは、彼女のことも気に掛けていた。グライム辺境伯も、それを考慮してくれることだろう。
「さてと、そうとなったらさっさとこのアンデルト伯爵家の領地から去りたい所だな。安全ではあると思っているが、どうにも居心地が悪い」
「それはそうですね……メアリーを拾って、ブレットンさんを連れて行きましょう」
「そのメアリーがどこにいるかが問題なのだが……」
私とギーゼル様は、周囲を見渡していた。
メアリーとは、事前に話をしている。私達の話が終わったら、裏口の近くで待っていて欲しいと言っておいたのだ。
しかし、彼女の姿が見えない。それはおかしな話である。メアリーが、その言い付けを守らない訳がない。彼女は優秀なメイドなのだから。
「何か起こっていると考えるべきか」
「……そうかもしれません」
ギーゼル様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
彼女の身に何かが起こったのかもしれない。これは少し調べてみる必要がありそうだ。
入って来たのもそこからだ。私達の存在というものは、外部に知られてはならないものなのである。
「まあ、なんとかなったと思って良いんだろうな……」
「ええ、流石のアンデルト伯爵夫人も、グライム辺境伯家を敵に回すことは避けたいはずですからね」
「ああ、そこまでの馬鹿ではないだろうな。色々と問題はあるようだが、伯爵夫人であるということは間違いないらしい」
ギーゼル様は、アンデルト伯爵夫人のことをそれなりに評価しているようだった。
それについては、私も同意だ。彼女は苛烈な部分はあるものの、愚か者という訳ではない。今回の取引というものを、きちんと認識しているだろう。
故に私とブレットンさんの安全は、確保できているといえる。もちろん、これから情勢が変わることがないとは言い切れないが、現状特に問題などはないだろう。
「メアリーというメイドも連れていくとしよう。彼女もどちらかというとこちら側であると、アンデルト伯爵夫人も判断するだろうからな……その辺りについて、問題はないだろうか?」
「彼女はラオート男爵家の三女ですから、ここから離れるということにそれ程大きな問題はないと思います。もちろん、ラオート男爵家に話を通しておく必要はあると思いますが」
「その点については、父上が嬉々として行うだろうから問題はないだろう。こちらに仕えられないというなら、別の雇い先を探すだろうさ」
グライム辺境伯は、ブレットンさんのことを無二の友だと思っている。今回の一件において、彼はなんでもしてくれるだろう。
メアリーのことも、きっと手厚く保護してくれるはずだ。ブレットンさんは、彼女のことも気に掛けていた。グライム辺境伯も、それを考慮してくれることだろう。
「さてと、そうとなったらさっさとこのアンデルト伯爵家の領地から去りたい所だな。安全ではあると思っているが、どうにも居心地が悪い」
「それはそうですね……メアリーを拾って、ブレットンさんを連れて行きましょう」
「そのメアリーがどこにいるかが問題なのだが……」
私とギーゼル様は、周囲を見渡していた。
メアリーとは、事前に話をしている。私達の話が終わったら、裏口の近くで待っていて欲しいと言っておいたのだ。
しかし、彼女の姿が見えない。それはおかしな話である。メアリーが、その言い付けを守らない訳がない。彼女は優秀なメイドなのだから。
「何か起こっていると考えるべきか」
「……そうかもしれません」
ギーゼル様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
彼女の身に何かが起こったのかもしれない。これは少し調べてみる必要がありそうだ。
246
お気に入りに追加
1,145
あなたにおすすめの小説
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。
ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

王太子に婚約破棄され塔に幽閉されてしまい、守護神に祈れません。このままでは国が滅んでしまいます。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
リドス公爵家の長女ダイアナは、ラステ王国の守護神に選ばれた聖女だった。
守護神との契約で、穢れない乙女が毎日祈りを行うことになっていた。
だがダイアナの婚約者チャールズ王太子は守護神を蔑ろにして、ダイアナに婚前交渉を迫り平手打ちを喰らった。
それを逆恨みしたチャールズ王太子は、ダイアナの妹で愛人のカミラと謀り、ダイアナが守護神との契約を蔑ろにして、リドス公爵家で入りの庭師と不義密通したと罪を捏造し、何の罪もない庭師を殺害して反論を封じたうえで、ダイアナを塔に幽閉してしまった。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる