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23.優先すべきもの

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 アンデルト伯爵夫人に対抗するにはどうすれば良いのか、私達はそれを話し合った。
 結果として出た結論は、手打ちにしてもらうしかないということである。今回の件を秘密裏に処理することによって、ブレットンさんの身の安全を確保する以外には方法がないのだ。

「私としては、法の元で裁きを受けたいと思っています」
「ヴォルバルト、お前の気持ちは理解できるが、今の状況はそれが許されるものという訳でもないらしい」
「アンデルト伯爵の行いを闇に葬られるということも、私にとっては望ましいことではありません」

 ブレットンさんは、当然のことながらその案に反対した。
 私としても、乗り切れる案という訳ではない。ただ、何よりも優先したいのはブレットンさんの命だ。それが助かる選択を、私はするつもりである。

「ブレットンさん、私もその選択が望ましいと思っていますが、残念ながらアンデルト伯爵家の権力が健在である限り、それが叶うとは言い難いでしょう。お父様は命によってその罪を償った、それで納得していただけないでしょうか?」
「……納得することはできません。しかし、理解することはできます。アルティリアお嬢様の傍にいることが、今の私にとっては最優先事項ということにしましょう。償いについては、レオールに任せます。騎士であるレオールならば、罪に対する罰のことを良く知っています」
「社会への奉仕活動をすることを償いとするしかあるまい。今の状況では、それくらいしか考えられないな」

 ブレットンさんは、私の気持ちを尊重してくれたようだった。
 それについては、とてもありがたいことである。となると、後はアンデルト伯爵夫人をどうやって止めるかが問題だ。

「ギーゼル様、お願いしてもよろしいのでしょうか?」
「もちろんだ。父上ならそうしているだろうからな。二人の身柄は、グライム辺境伯の名の元に保護する。そうすれば、アンデルト伯爵夫人も手を出すことはできない。当然、条件は必要だ。事件のことを、彼女が納得する形にしておかなければならない」
「わかっています。もちろん、私が犯人の協力者ということになっても構いません」
「まあ、その辺りは交渉次第ということになるな……なるべく悪いようにはしないさ。しかしそうとなったら、さっさと行動しないとな」

 ギーゼル様は、自らの両の頬を叩いた。恐らく、気合を入れているのだろう。
 彼がいてくれて、本当に良かった。グライム辺境伯一家の力があれば、今回の件もなんとかなりそうだ。
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