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11.尾行の結果(モブ視点)

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 サラティナとドライトは、ラフィティアのことを尾行していた。
 彼女は、とある宿屋の食堂で何者かと話している。その会話は聞こえないが、二人はそれを見ながら顔を見合わせていた。

「ドライトさん、あれって……」
「ああ、男……だよな?」
「親しそうですね……」
「まさか、本当に浮気なのか? だけど……」

 ラフィティアが話しているのは、男性に見えた。
 侯爵家の夫人が、男性と二人きりで会っている。それは端から見れば、浮気であるように思えた。
 ただ、二人は同時に疑念も覚えていた。浮気にしては、ラフィティアが堂々とし過ぎているのだ。

「仮に浮気であるとしたら、顔とか隠したりするはずだよな?」
「それは……そうかもしれませんね。それでは、ただのお友達なのでしょうか?」
「そうだとしたら、奥方様の警戒心が薄すぎるな……まあ、相手も下心があるようには見えないような気もするが」
「ええ、なんだか不思議な雰囲気の人ですよね」

 サラティナとドライトは、ラフィティアの隣にいる男性のことを改めて見ていた。
 その男性の纏う独特の雰囲気に、二人は首を傾げることしかできなかった。
 一体、二人がどういう関係なのか、二人は結論が出せないでいる。会話さえ聞ければ、核心を得られるのだが、ばれてしまう故それ以上は近づくことができない。

「旦那様にはどうお伝えすればいいのでしょうか?」
「……思ったままのことを伝えるしかないだろうな。俺達で勝手に判断する訳にもいかない。まあ、これから何か起こるかもしれないし、とにかくこのまま見ていよう」
「そうですね。あまり気は進みませんが……」

 二人は、ゆっくりとため息をついていた。
 ラフィティアのことをよく知っている二人にとって、この尾行は気が重いものだった。
 実際に彼女が男性と密会しているという事実を突きつけられたこともあって、二人はひどく気落ちしている。もちろん、それで主人から与えられた役目を放り出すなどということはないのだが。

「これからどうなるのでしょうか? 旦那様は……」
「それも微妙な所だな……あの方は、奥方様に対して割り切った関係を望んでいる。つまり、浮気をしたいならすればいいと判断するかもしれない」
「それはなんだか、少し複雑です。私は、お二人がお似合いだと思う派閥ですから」
「……まあ、俺もどちらかというとそちらだな。というか、屋敷の皆そう思っているんじゃないか?」

 当の夫妻はよく理解している訳ではないが、ランドール侯爵家の使用人達は、二人が本当の夫婦になることを望んでいた。
 あの二人なら、その方がいいと誰もが思っているのだ。故に今回の出来事に、サラティナとドライトはひどく動揺しているのだった。
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